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第109回 世界で拡大を続けるプラントベースとプラントベースミルクについて

牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

- 講演後の質疑応答 -
Q1.プラントベースミルク、アーモンドミルクとか、なんとかバターとかチーズとか有るというご紹介をいただいたんですけど、そもそもチーズ、バター、ミルクという言葉や表示における定義というのはどうなっているのでしょうか。「ミルク」というのは動物の乳からの物がミルクとずっと思っていて、今、商品が出回ってしまっているのですが、定義が曖昧なまま広まっていって、それで若い人が何かファッションのように広がっていってしまうということにはちょっと危機感を抱いています。
A1.
  • (日本乳業協会より)
    コーデックスの酪農用語の使用に関する一般規格というのがあって、その中では一応、乳を使ったもの以外には「ミルク」という用語は使わないというのが一般的な解釈となっています。ただし、少しまだいろいろと議論があるところで、EUでは乳由来でない製品に「ミルク」や「チーズ」を使用することを禁止している例もありますが、国際的に厳格に定まっていないという現状です注)。
    日本における表示上は、牛乳にしか「牛乳」という言葉は使えないということにはなっています。「ミルク」は使用可で、バターとかその他乳製品に関しては、まだ明確な定義はありません(消費者が表示全体で乳製品と違うと判断出来るよう誤認を避ける注記を設ければ、景表法上問題にならないなど)。
  • 注)コーデックスの酪農用語の使用に関する一般規格(CODEX STAN 206:1999:Codex General Standard for the Use of Dairy Terms(GSUDT))において、「乳(Milk)とは、一回以上の搾乳で得られた泌乳動物の正常な乳分泌物で、他物が加えられたり抽出を受けたりしておらず、液状乳として消費されるかさらに加工を受けるものである」と定義されている。コーデックス規格には罰則規定はないものの国際規格の位置づけであり、「milk」の用語を使用する場合はこの定義に準ずる必要がある。ただし、同規格の4.6項に「その他の食品への酪農用語の使用」において、非乳食品へのmilkの使用について規定されている。国際酪農連盟(IDF)の専門家が執筆した本規格の解説書(IDFブリテン 507/2020)には「模倣品および誤認を招く表記」や「伝統的名称」について具体例が提示されており(8.4項,8.5項)、定義に準じた乳を使ったもの以外には「milk」という用語は使わない(伝統的名称は除く)というのが一般的な解釈となっている。
Q2.こんなにナッツから大麦からオーツ麦からというように、植物由来のミルクがいっぱいもう売られているんだというのを知らなかったのですが、ミルクと書いていると、同じような栄養がとれるのかなと、つい考えてしまうのですが、摂れる栄養はかなり違うという理解でよろしいんでしょうか。
A2.
  • まったく違います。プラントベースフードでは摂取がむずかしい栄養素は有りますし、牛乳もそうですが、偏るとバランスを崩します。
Q3.プラントベースフードは動物性食品の代替食品ではないという認識をちゃんと持ってなければいけないということですよね。それは別の飲み物であり、食べ物だというふうに理解しなきゃいけないということですね。
A3.
  • そうですね。今まで最初に日本にソイミートが入ってきたときは、やっぱり代替肉という名前だったりとか、代替という捉え方だったんですけれども、最近では結局同じ成分、今おっしゃったように成分を捉えても全然栄養素としても違うものですし、味とか味わいとか特徴も全然違うものなので、もう代替というような捉え方というよりは、別物で一つの選択肢なんだと理解することが必要です。もう今、植物性のミルクが牛乳とかと並んだ一つの選択肢に若い方たちの間では認識としてあるように、代替するというよりは新しい選択肢というような、そういった捉え方に今後どんどんなっていくのではないかなと思います。
  • 質疑応答
Q4.「プラントベースな生活一例」というところでお話しいただいた中に、食べた方々は「胃腸、翌日の体が軽い(体調に合わせて)」と書いてあって、消化にエネルギーを使いたくないというようなことをお話しされましたが、動物性食品だと消化にエネルギーを植物性のものより使うということがどういうことなのかちょっと科学的に教えてください。
A4.
  • 植物性のプラントベースの食事をした後、体が軽いなとか胃腸が軽いなと感じる方が多いというところなのですが、動物性の素材、特に脂、脂肪分をとる量が減ることにより消化の負担が減るというのは、結構体感としてあらわれる方が多いので、そういう感想が出るというのがあります。動物性のたんぱく質や脂質の分解よりも植物性のたんぱく質や脂質のほうが消化が早い、楽というような背景です。
Q5.プラントベースミルクの市場規模がぐんぐん伸びているというグラフをご紹介いただいたのですが、もともと少ないと伸び率は大きいように見えると思いますけれども、乳全体の中で占めるプランドベースミルクの市場規模というのはどんな推移になっているのか、もしデータがありましたらお示しいただけますと助かります。
A5.
  • 細かいデータは本日持ち合わせておりません。
Q6.Plant Based Foods Associationというのは、どこの国でどういう人がいつから始めたのか、参考までに教えていただければと思います。といいますのは、どういう人がどういう目的でいつから始めたのかというのを知ると、その名称を使った理由とか、消費者に対してどういうアピールがしたいかというのがわかりやすいからです。
A6.
  • Plant Based Foods Associationはアメリカの組織になります。たしか設立が2009年ぐらいだったかなと記憶はしているのですが、設立の背景とかはウエブサイトを見ないとわかりません。
Q7.どういうところからプラントベースフードというのに入られたんですか。この名前、ほかにもいろいろなクリーンミートと言っている人たちとか、いろんな人たちがいますよね。細胞培養肉とか細胞肉とか。どうしてこれ、プラントベースフードというのに入られたのか教えてください。
それと完全菜食歴が4年あって、その後ゆるベジになりましたとおっしゃったんですけど、その理由を、個人的なことで困るということがない範囲で結構ですので、教えてください。
A7.
  • 私自身、完全菜食歴、マクロビオティックという玄米菜食を4年間して、そこからゆるベジになったということで、そのゆるベジにした理由というのが、まだ日本では10年ぐらい前ですとなかなか今ほどそういった菜食の食べ物を、例えば外食だったり何か買って食べるみたいなことがすごく難しいような環境で、やっぱり仕事をしていると、なかなか家で完全につくってそれをお弁当として持っていってみたいな生活が結構ハードだったりということもありました。
    それから会食のような場ですと、まだ例えば自分が完全菜食ですとかヴィーガンですとお伝えしても「それって何?」というような、それはただの好き嫌いじゃないのかというような、怒られることもしばしばあったりしまして、なかなか社会でやっていこうとするとすごく難しいみたいな壁に当たって、そこで少し動物性のものを解禁じゃないけれども、また再び食べてみようかなという、そんな背景があってゆるベジというのに移行はしていきました。
    移行した結果、そんなに自分自身の中では特に大きな抵抗はなかったですし、実際に久しぶりに食べてみると、それぞれの特徴とか味わいがあったり楽しみがあったりして、すごくおいしいなと感じているので、今はそういった、いろいろと食べるというような生活をしております。
    そのプラントベースフードという言葉を私自身が知ったのも、完全菜食をしているときはまだヴィーガンという言葉しか私自身知りませんでした。日本でもまだそのころプラントベースフードという言葉は聞いたことがなくて、アメリカ、特にハワイとかそういった海外に好きで旅行に行っていることもあって、そこでプラントベースというようなパッケージを見かけるようになって。当時、ヴィーガンのものとかも、ゆるベジになっても引き続き好きだったということもあって、そこでそういった言葉を知ったというような経緯があります。
    こちらの植物性料理研究家協会で講師の仕事をさせていただくに当たって、そこから自分のもともとそういったプライベートの背景で、ぽつぽつと知っていたことを少し整理をして、知識をさらにつけてといったような形で、そのときに初めてPlant Based Foods Associationというアメリカの組織がそういった言葉を使っていると知ったわけです。今までの厳格な菜食ということだと広まらないから、そういったことではなくて多くの方々に受け入れてもらえるというようなマーケティング発想でこの言葉ができたということをそこで知りました。
Q8.最初、花粉症とか片頭痛とかがひどくてマクロビオティックを始めたら体調がよくなったと。で、完全菜食になった。完全菜食からゆるベジになったときにも体調は変わらなかったということですよね。
A8.
  • こういった辛い症状がなくなって、ゆるベジに移行したときにもそういった症状が復活することはなく、当時まだゆるベジにしたときには割合でいうと1週間のうちに1~2回動物性のもの、お肉とかお魚を食べるかなぐらいだったんですけども、徐々に頻度がふえていって週3回とかそのようになっていきました。
    ただ体重とかも特に大きく変化することはなく、体調はそのまま大きな変化はないという状況です。
Q9.そうだとしたら、特にマクロビにしたから体調がよくなったっていうのが、何となく、結局またお肉を食べても体調はいいままなのだから、別に肉も悪いわけではなかったのではと思うのですが、そこはどうなのですか。
A9.
  • そうですね。複合的にいろいろな影響があったと思うので、植物性を食べたから健康になるとか、必ずそうなるとかそういったことでもないと私も自身も思っています。逆に動物性のものを食べたからそれは健康に悪いのかと言われると、そうだとも私自身も思ってはいません。
Q10.添加物の問題はどうなのでしょうか。全部こういうレトルトパウチみたいになっていて、やはり普通の生のもの、生乳もそうですけれども、みんなつくられたもののイメージがかなりある。必ずこれ、添加物入っていますよね。そのあたりはどんなふうにお考えですか。
A10.
  • ご指摘いただいたように、プラントベースフードの中でも超加工品と言われるこういった肉のパテみたいなものというのは、アメリカなんかではすごく商品が豊富で進んでいるんですけれども、やはり欧米では結構今そこもすごく議論に実際になっていて、加工度が高くなったりすればするほど、やっぱり添加するものも多く必要だったりというのが事実であったりするので、そうすると結局、結果的にこれは体に本当にいいのか、むしろ体に悪いんじゃないかみたいに思っていらっしゃる方々も海外でも実際に増えていて、そこがすごく今、議論にはなっています。
    やっぱり儲かったり伸びている市場だから、そこに乗っかっていろんなものを、何か便利なものを開発しようという、そういった企業さんもたくさんいらっしゃいますし、そういったものが好きな方も、便利だったら、簡単だったらいいやみたいな方ももちろんいらっしゃいます。ただ添加物が多くなればなるほど、もしかしたら健康にはよくないのではないかという議論は実際に海外では、特に今もう問題になっていて。
    なので割と世の中のサーキュラーエコノミーとかSDGsの大きな流れとしても、原材料ができる限りシンプルであるほうがいいのではないかというような、そんな流れにも今、進んできています。