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第104回 国内外の酪農乳業の持続可能性に向けた取り組みと課題について

牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

日本乳業協会から乳業の取組事例を紹介

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目標1と2:開発途上国への支援

目標1,2:開発途上国への支援

開発途上国への支援により貧困や飢餓に終止符を打つために、経済発展前の東アジア、東南アジア、東欧諸国に対するODA等を通じた技術の支援や乳業工場の設立により、途上国における酪農発展や経済の活性化に寄与する、4社の支援の事例を載せています。

目標6:水の持続可能な管理の確保/節水と排水処理高度化

目標6:水の持続可能な管理の確保/節水と排水処理高度化

水は環境問題というところでは一つ大きな課題として挙がりますが、日本の場合は水で困るということは多くはありません。夏場に水不足になったり、地下水を汲み上げ過ぎて地盤沈下になったりということは確かにありますが、諸外国に比べると水での苦労は少ないと思います。
そういう中でも、節水を意識しつつ排水を強化していくということで、節水ノズル付ホースとありますが、乳業工場は洗浄に大量の水を使います。乳業機械をきれいにすることが衛生を保つための第一歩ですので、そこに水をたくさん使っています。洗い方等を工夫して使用する水の量を減らすということを継続してやっています。
もう一つは出口側の排水です。排水は、水質汚濁防止法という公害防止のための法律があり、1971年くらいから施行されています。規制された汚濁度以上の水を流して、水質汚濁防止法に違反すると工場ストップということになるので、それは細心の注意を払って排水の水質管理に努めているわけですが、工場独自の規格を設けて、さらにきれいな水にして、川に供給、戻そうということで、さまざまな高度な処理を行っています。

目標7:エネルギー対策/エネルギー消費量の削減

目標7:エネルギー対策/エネルギー消費量の削減

これは温室効果ガスの削減につながります。温室効果ガスについて、ライフサイクルで言う縦軸となる酪農乳業一体となった取組みは、最近始めたところですが、横軸の産業界という括りでいうと、20年ぐらい前から経団連が主導して各業界に目標を立て、自主的に取り組む人たちが集まって、取り組みを進めています。乳業界もその中に入って、温室効果ガス、省エネの取り組みを進めています。
温室効果ガス削減の取組みとしては、1つ目の省エネの取組み、2つ目が太陽光とかの再生可能エネルギーの導入、あと一つが燃料転換です。できるだけ温室効果ガスを出さない燃料に替えていこうということで取り組んでいます。
省エネについては、乳の加工プロセスがある程度決まっているのでなかなか難しいところはありますが、最新の省エネ機器を導入したり、工場の統廃合だったり、そういうことで少しずつエネルギーの効率を上げるということをやってきています。ただ、やはりエネルギーを使う機器とか乳業のプロセスが改善されるというイノベーションが生まれるとそこで順調に下がりますが、またしばらく落ちついて、また下がってというような流れで来ています。

目標7:エネルギー対策/太陽光発電の導入

目標7:エネルギー対策/太陽光発電の導入

再生可能エネルギーは太陽光発電を入れるのが一番手っ取り早い方法で、最近少しずつ進んでいます。これも、ここでできた電気をそのまま自社で使う場合と、一旦電力会社に販売するパターンがあり、そういうものを使いつつ、再生可能エネルギーの導入に協力しています。

目標7:エネルギー対策/CO2排出削減

目標7:エネルギー対策/CO2排出削減

燃料転換について、石炭よりも重油、石油のほうが同じ熱量を発生するのであれば少ないCO2です。重油よりもさらに天然ガスのほうが同じ熱量を得るためには少ないCO2しか出しません。さらに、水素社会と言われていますが、水素の中には炭素が入っていないので、それを燃やしてもCO2にはならないということで、重油を天然ガスに替えていくことで、燃料に含まれる炭素量が減るので、同じ熱量を使いつつCO2は減らしていくという取り組みをここ20年くらい進めています。2050年目標というのは既に政府からゼロにしようと出ていますが、そこまでにはまたイノベーションが必要だろうと考えています。乳業としては、今の2030年目標は2013年比38%と、国の産業界目標に合わせて設定しています。

目標7:エネルギー対策/調達物流の最適化による環境負荷低減

目標7:エネルギー対策/調達物流の最適化による環境負荷低減

物流関係のエネルギーを減らすという取り組みも幾つかありますが、ここに書いてあるのは一つの例です。受入側では各原料メーカーからそれぞれの工場に配送してもらったものを一旦集約して、集約したものをそれぞれの工場に配送すると、配送経路が全体として短くなるのでエネルギーが減るというようなことだったり、出荷側でいうとモーダルシフトといって、トラック輸送していたものを鉄道だとか船に替えていくというようなこともやって、輸送に係るエネルギーを減らしていくということをやっています。

目標10:誰一人取り残さず、不平等を是正/成果の不平等の是正

目標10:誰一人取り残さず、不平等を是正/成果の不平等の是正

あまねく集送乳する指定団体から生乳を調達することにより、地域の酪農家を誰一人残さずに、プール乳価による成果の不平等の是正に貢献しています。

目標10:誰一人取り残さず、不平等を是正/災害発生時の対応

目標10:誰一人取り残さず、不平等を是正/災害発生時の対応

災害発生時の対応ということで、平成28年の4月に発生した熊本地震の際の対応です。このときに熊本県内の4工場が被害に遭ったということで、福岡にある他社の工場が、熊本の生乳を相当な量受け入れて対応しました。九州域内だけでは生乳の受け入れが難しいということで、九州以外の指定団体と協力しながら、中国地域、四国地域、近畿地域に生乳を運んで対応しました。

目標11:持続可能な都市及び人間居住を実現/自家発電設備の導入

目標11:持続可能な都市及び人間居住を実現/自家発電設備の導入

酪農・乳業分野における災害リスク管理対策の策定と実施に貢献した事例として、北海道での自家発電設備の導入状況について示しています。

目標12:持続可能な生産消費の確保/廃棄物削減及び廃棄物の再資源化

目標12:持続可能な生産消費の確保/廃棄物削減及び廃棄物の再資源化

廃棄物に関しては、工場から出る廃棄物そのものを減らしていくということは継続して行っていますが、その中でも再資源化率といって、97や96とありますが、100からその数字を引いた数、97.3だと2.7%が埋め立てに行っている数字になり、産業廃棄物の埋め立て処分場の逼迫ということもあり、埋め立てを減らそうということで進めてきています。
この数字だけ見ると悪化していると思うかもしれませんが、例えば2000年のデータを見ると54.9%で、2005年が86.9%です。2000年当時は6万トンの廃棄物が埋め立てに行っていましたが、最近は900トンということで、大きく減らしているといます。900トンが1500トンになったりするのですが、それは例えば工場を統廃合する際に閉鎖された工場から大量(大量といっても1000トンぐらいですが)に出たり、一部規格外品を作ってしまった場合の処分が一時的に求められるので、そこをリサイクルの能力が追いつかないので埋め立てに行ってしまったとか、そういうところがあって多少でこぼこしています。

目標12:持続可能な生産消費の確保/食品ロス削減

目標12:持続可能な生産消費の確保/食品ロス削減

食品ロスの削減も何十年も取り組んでいるテーマで、賞味期限の延長があります。賞味期限が短ければお店で廃棄される確率が上がるということで、これは小売業者や流通業者からの要請もあります。そこについては、衛生的な状況だとか、密閉をうまくやるだとか、そういうことで賞味期限をずっと延ばしてきたという経緯があります。賞味期限を延ばすことで、そこにも技術を投入するわけですが、そういうことで期限切れになる確率を少しでも減らすというようなことを行っています。
右側に「おからのリサイクル」と書いてありますが、これは、ある会社で紙パックに入れた豆腐を作っていて、そのときに出てきたおからを飼料として牛に食べてもらい、その牛から出た乳を牛乳として自社で使うということをやっています。昔はせいぜい肥料とかで、大量に出るものですからなかなか使い切れなかったのですが、飼料に使うということで有効に活用できるようになったと聞いています。

目標12:持続可能な生産消費の確保/容器包装プラスチック使用量減

目標12:持続可能な生産消費の確保/容器包装プラスチック使用量減

環境に配慮した容器包装の設計で、プラスチック資源循環促進法がこの4月から施行されるということで、プラスチックに注目が集まっていますが、この環境に配慮した容器包装の設計というのは、前回の容器包装リサイクル法の改正のときに話題となり、既にみんな行っているという話が出てきていたものです。それ以前から、無駄に厚い容器包装だとかは資材コストにかかわってくるので、できるだけ薄めにということは当然行っていたのですが、さらにそれ以降、環境に配慮した容器を設計しようという意識が高まり、取り組みが進んでいます。
ただし、ここで考慮しなければならないのは、容器包装は無くなればいいというものではなくて、容器包装の役割があって、食品を守るというのが一次的な役割です。先ほど賞味期限を延長したという話がありましたが、それは容器包装の技術があって初めて賞味期限の延長というのができているわけで、そこを見誤らないような広報、容器包装は無ければ良いというものではないというところもあわせて伝えていかなければならないと思います。
容器包装の使用量を減らすとか、減らせないにしてもできるだけリサイクルしやすい、紙の部分とプラスチックの部分が分けやすいという方向性もあわせて、環境配慮設計として以前より進めています。

目標12:持続可能な生産消費の確保/バイオプラスチックの使用

目標12:持続可能な生産消費の確保/バイオプラスチックの使用

バイオプラスチックの使用についてで、この4月からのプラスチック資源循環促進法の中の目玉の一つですが、バイオマスプラスチック、バイオプラスチック、生分解性プラスチック、そういう新たなプラスチックを使っていこうということで、プラ(スチック)資源循環戦略の中に、2030年までにバイオマスプラスチックを200万トン入れるということで明記されています。しかし、それ以前に、自主的にプラスチック容器にバイオプラスチックを入れて、プラスチックの使用削減というところ、もしくはそういうことをやっていく素地をつくっていくということを行ってきました。

目標12:持続可能な生産消費の確保/生産能力の向上と廃棄の回避

目標12:持続可能な生産消費の確保/生産能力の向上と廃棄の回避
目標12:持続可能な生産消費の確保/生産能力の向上と廃棄の回避

持続可能な生産消費の確保で、生産過剰時の生乳廃棄を避けるため、チーズ等乳製品の生産能力の向上により、持続可能な生産消費を確保しています。2006年の3月に生乳廃棄が北海道で起こったのですが、その後2007年、2008年に、乳製品工場を持っている4社で実施した乳製品工場の新設、増設による生産能力向上について事例を示しています。

目標13:気候変動の影響の軽減/液状化対策の推進

目標13:気候変動の影響の軽減/液状化対策の推進

気候変動及びその影響の軽減で、諸外国に類例のない乳製品の液状化対策の推進を通じて、生乳を加熱乾燥させて脱脂粉乳等を製造するときに、簡単に言うと大きなドライヤーで乾燥させていて、そのときに加熱する、乾燥させるために相当な温室効果ガスが出るということで、液体の形で流通させることによって、温室効果ガスの発生を抑制することを行っています。グラフは、ホクレンの「(生乳)用途別販売数量の推移」ですが、灰色の「生クリーム等」と書かれている部分が液状乳製品に当たります。ここ数年ずっと液状乳製品を拡大させて、逆に「脱脂粉乳・バター等」の部分が減っている状況がわかります。

目標15:持続可能な森林経営支援/森林管理による生物多様性保全

目標15:持続可能な森林経営支援/森林管理による生物多様性保全

持続可能な森林経営支援ということで、これは乳業の工場運営自体に直接的影響があるというわけではありませんが、食品工場でこういう森を持って管理している会社は幾つかあります。乳業会社のほかにも、清涼飲料の会社などもこういうことを行っている会社は多いですが、やはり水を使う産業として水場を守るとか、自然の恵みのもととなる生物多様性を守るというところで、まずは身近なところから自分たちでやってみようかと取り組んでいる会社が幾つかあります。

目標15:持続可能な森林経営支援/紙パックのリデュース

目標15:持続可能な森林経営支援/紙パックのリデュース

紙パックのリデュースです。リデュースについては、今ある紙パックをさらに減らすというのはなかなか難しいのですが、500ミリリットルの牛乳用紙パックは、2010年時点でまだ強度に余裕があるので、もう少し薄い紙を使えるのではないかということで、少しずつ減らしてきています。
この右肩上がりの水色の線がリデュース率で、3%を目標で減らそうということで取り組んでいます。実際には、1平米あたり314グラムの紙を305グラムに減らすという取り組みですが、少しずつ増えてきて、2017年頃にほぼ全部新しい紙に切りかわりました。

目標15:持続可能な森林経営支援/森林認証紙の使用

目標15:持続可能な森林経営支援/森林認証紙の使用

森林認証紙の使用で、紙容器の原料である森の木の管理がきちんとできているか、特に熱帯雨林だとかは乱伐されているのではとか、そこの生物多様性が失われているのではと批判される時がありますが、牛乳パックに使っている紙は主に北欧・北米でつくっている紙で、そこでは、切ったところはしっかり植林をして、何十年かごとに、もとに戻るというように回しながら使っていって、森を減らさない、かつそこでの生物多様性も失わないという管理をしているということが確認できる認証マークを取得した紙を使っている例が増えてきています。