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第90回 食物アレルギーの基礎知識

牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

食物アレルギーの症状(1)
食物アレルギーの症状(2)

食物アレルギーの症状では、蕁麻疹は皮膚に赤みが出てきたり、盛り上がったりする。あとは皮膚が全体的に赤くなったりとかする。専門家の立場からすると、皮膚の症状はそれ程心配はいらない。通常、食物アレルギーによる反応の場合、2時間位で消える。一般の人は目が腫れたりするとさらに驚く。すぐには引かず翌日まで残ったりする。これはじんましんが深いところで起きるためである。唇にも起きる。まぶたが腫れたり唇が腫れたりするのは、粘膜の症状の一つである。あとは目の白目が赤くなったり、かゆくなったり、涙が止まらないとか、鼻の症状とか、のどがむくんだり腫れたり、粘膜の症状として出てくることがある。

食物アレルギーの症状(3)

食物アレルギーでは食べ物が消化管において反応し、おなかが痛くなったり気持ちが悪くなって吐いたり下したり、消化器の症状が出てくることもある。注意したいのは呼吸器の症状である。呼吸器の症状は2か所で出る。1か所目は声を出しているところである。人は声帯を動かしてしゃべっているが、声帯がある喉頭という場所で、そこがむくんだりすると声がかすれたり、犬が吠えるような咳をしたり、締め付けられる感じがする。あとは息が吸いにくい感じが出てくると、そのまま放置し、凄くむくむと窒息する。非常に怖い症状である。
もう一つは、喘息に似た症状が肺の方で起こることがある。肺の方で喘息様の症状が起きると、今度は息が吐きにくい現象になる。息が吸えないのに吐きにくいものが合わさると、呼吸困難となる。喉頭の症状が出てきたり、あとは喘息みたいな症状が出てきたりというのは、大変危険なサインである。皮膚の症状というのは、食物アレルギーの9割ぐらいに出るが、呼吸器の症状は、即時型の方の3割ぐらいに出る。皮膚と呼吸器が合わさると、通常はアナフィラキシーと呼ぶ。

食物アレルギーの症状(3)

アナフィラキシーは、皮膚・粘膜・消化器・呼吸器のいろいろな症状が複数出てきて、それが一辺に押し寄せてくる感じがある。アナフィラキシーによるショックに進んでいくことを、アナフィラキシーショックと言うが、ショックというのはいろいろなことが原因で起きる。例えば出血性のショックや、心臓が悪くてショックを起こしたり、要は血圧が下がって脳に血液が行かなくなることをショック状態と言う。意識が遠のいたり、呼び掛けに反応しないとか、顔色が悪くなったりとか、ぐったりして体に力が入らないところまで行くと非常に危険である。この前の段階で何とかしてあげなければいけない。学校現場も、保育園の現場も、非常にアナフィラキシーに気を使って給食の提供をしているという状況がある。

即時型アレルギー全国モニタリング調査

今、私達の病院では全国の先生方1,000人位をモニターとして、3か月に1回ずつ、3年に1度全国調査をしている。何らかの食物を食べて60分以内に症状が出て医療機関を受診するなど本物の食物アレルギー患者の調査を、アレルギー物質を含む食品表示に反映させるためにやっている。3か月ごとに1年間で4回やるが、2,900例ぐらい全国から1年間で集まる。1,000人位の先生を対象にお願いしているので、それぞれ3名ずつ位そういう方に出くわしていることになる。

年齢分布

2,954名を対象として調査を行った。横軸が年齢分布である。多くの小児科の先生が協力しているのも理由の一つであるが、0歳、1歳、2歳が圧倒的に多い。一度何かを食べて症状が出たら、その後は避けるよう管理をしているので、年齢が上がるに従ってそういう方々は病院にかからなくなる。同時に、小さな時に出た食物アレルギーは治っていくことから、それも反映している。ただ、10代の子どもたちや、大人でも食物アレルギーがある。

臓器別の症状出現頻度

9割が皮膚の症状が出る人で、30%位が呼吸器の症状、粘膜が28%で消化器が18.6%、ショックまで行った人は10%位いる。皮膚に出るというのは食物アレルギーだとかなり遭遇する。その中でさらに呼吸器まで来たときは、ショックになる可能性がある。何か変な咳を急にしてきたとか、あとは苦しいと訴えているという時は、救急車を呼んでいただいてかまわないと、今学校現場とか幼稚園・保育園には申し上げている。

原因食物の割合
新規発症と誤食発症の割合

全年齢をまとめると、卵・牛乳・小麦という子どもの時に出る三つが非常に大きなウェイトを占めていて、全体の70%位を占めている。次にピーナッツや果物や魚や甲殻類である。これらは年齢が上の方で見られる方々の食物アレルギーである。新規発症と言って0歳の時のものは新たにというのが圧倒的に多い。90%ぐらいが新規に発症するわけで、1歳になると、今度は半分は間違って食べたという、すでに診断を受けていたが誤って食べた人が増えてくる。2歳、3歳は、新規は更に減ってきて、4歳から6歳というのは間違ってというのが段々増えてくる。親、おじいちゃん・おばあちゃんのところに行って間違って、あとは学校や保育園で間違ってとか、いろいろな間違いがあるが、誤食というのが大事に至らなければいいと心配する。今学校では非常に一生懸命対応してくれている。
小学生以上でも間違ってが少し減ってきて、新規が少し増えてくる。20歳以上になると、さらに新規が増えてくる。小さな時に出る食物アレルギーと、小学校以上から出てくるアレルギーがあると考えられる。

新規発症の原因食物

新規発症の原因物質だが、卵・牛乳・小麦というのは、全体の新規発症が1,700人である。2,900人のうちの1,700人が新規発症で、そのうちの半分は0歳である。0歳代に食物アレルギーは基本的に発症する。1歳の時点で卵・牛乳、2歳から3歳では卵が新規発症だが、気になるのは、1歳で2番目に魚卵とか、2歳から3歳で魚卵が原因物質として出てくる。これはイクラが主な原因である。ピーナッツも新規発症で1~3歳、4~6歳で出てくる。残りは木の実や果物。4~6歳は果物が多く、7~19歳は甲殻類・果物で0歳と小学生以上とでは相当原因となるものが違う。

誤食の原因食物

0歳、1歳、2~3歳、4歳~6歳の誤食は1番が卵で2番が牛乳である。小麦が3番目に多いが、4番にピーナッツの誤食が上がってくる。

原因食物別ショック発症率

原因食物別のショック発症率では、小麦は食物依存性運動誘発アナフィラキシーというタイプもあり、小麦は結構ショックの誘発リスクが高い。そば、木の実、甲殻類、ピーナッツが続く。卵は比較的数は多いが、卵に比べると牛乳は少し重くなりやすい可能性がある。

加工食品のアレルギー表示
加工食品のアレルギー表示について

加工食品のアレルギー表示は2001年に法律ができ、2002年から実際に始まり、日本では15年位の歴史がある。表示義務のある7品目は、卵・牛乳・小麦・エビ・カニ・ピーナッツ・そばである。少しでも入っていたら表示をしなければいけないことになっている。残りの品目は、表示の推奨で表示義務はない。卵・牛乳・小麦は子どもに非常に多くて誤食の原因にもなり、ピーナッツやそばは大人にも多く、アナフィラキシーの原因にもなるということで、2001年当時に義務表示になった。エビとカニは後から義務化された。

表示の義務がないもの

法律が決められる前は、原材料における割合が5%未満のものはJAS法で表示しなくても良いことになっていた。カレールーの中にはピーナッツバターが入っていて、5%未満だと食品表示には表示されない。ピーナッツアレルギーの人がカレールーを摂りアナフィラキシーを起こして病院に運ばれるようなことが、2001年より前はあった。日本が世界に先駆けて義務表示をしていて、加工食品に数ppmでも入っていたら、表示しなければいけないとしている。症状が出やすいというものではなくて、患者の頻度が高いということである。表示の義務がないものもあり、外食や量り売りされた総菜や中食では表示義務がない。外食に行って症状が出ることもよくある。

加工食品のアレルギー表示について
新しい食品表示制度

加工食品のアレルギー表示は、昔は乳関係が紛らわしかった。代替表記が認められていて、特定加工食品は、乳に関する牛乳・乳製品の表記はとても複雑だった。今度、新しい食品表示制度が平成27年の4月1日から施行され、5年間の猶予期間だが、個別表記になって、全粉乳とか乳糖とか小麦とか書いていて、特定加工食品、及びその拡大表記が廃止されより見やすくなったのではないかと思う。

注意喚起表示について

注意喚起表示は、コンタミネーションと言い、原材料には使っていないが、意図せず入る場合に記載する。例えば同じ工場の中で作り、少し入っている可能性があるけど、表示をしなければいけない義務までは行っていないという時に、注意喚起表示というのがある。同じ工場で○○を含む製品を作っている。機械だとラインを変えて違うものを作ったりすることが、食品会社ではよくある。