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第71回 食品と放射能

牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

11.野菜をゆでたり洗ったりすると放射線量が減りますか。家庭菜園の野菜は大丈夫ですか。

現在は出荷制限等が厳格になっていることから、市場で販売されている野菜等に対し、特別な調理方法等の必要性はない。ただ、家庭菜園の野菜はどうなのかという問題がある。その場合、その地域で出荷制限されているものがあるかどうか調べ、該当するものについては食べるのを見合わせるよう呼びかけている。消費者庁は自治体に対し、検査機を全国で400台貸し出している。また、たとえば福島市では消費者庁だけでなく県、赤十字からの貸し出しもあり、各公民館、学習センターに1台検査機が置かれている。そこに検体を持ち込み、測定し、安全を確認後食べるよう指導している。このように地道な努力により追加被ばくを避けるよう取り組んでいる。

12.お米はきちんと検査されるのですか。

福島県の特定の地域については、全ての米袋毎に検査をすることを始めた。昨年の米で500ベクレル/Kg以上の放射性物質が検出された地域では作らない。100ベクレル/Kg~500ベクレル/Kgの値であった地域では、全ての袋毎の検査により問題ないと判明したもののみ番号記録とマーク付けを行い出荷という体制を先週末から始めた。このように福島産のコメは厳格に管理しているので安心いただきたい。(後に、福島県においては、県内すべての米について全袋検査を行うこととした。)

13.現在販売されている水産物は食べても大丈夫ですか。

福島産のものを繰り返し調べた結果、タコ、つぶ貝だけは試験的に出荷している(報告当時)。他の水域についても、北海道から神奈川県沖まで調べている。
今までにわかったことは、アジ、サバ、マグロ、カツオ等、沖合や外洋を移動する魚からは、放射性物質が基準値を超えるようなものは出ていないということである。
海洋生物環境研究所では、魚の体内で放射性物質は200倍程度に濃縮されると報告しているが、魚は放射性物質を取り込んでもえらから出してしまうし、また、生物学的半減期により排出している。また、海は広く放射性物質は希釈されているため、200倍に濃縮されても基準値には達していない。
ただ、沿岸部の底に棲んでいるマダラ、カレイ、ヒラメ等は、泥の中の様な所にいるため、放射性物質を継続して取り込んでいると考えられ、このため、基準値を超えたものが出続けている。
これからは、東京湾においても関東地方の荒川等からの泥が流れ込むため、東京湾の魚、貝、さらに特に福島県、茨城県、宮城県、岩手県、青森県を重点的に検査を続ける必要がある。セシウム137の半減期が30年であるため、かなり長い期間続けなければならない。また、チェルノブイリは内陸部にある原発であったため、海に放射性物質が流れ出したという例がこれまでになく、全世界で前例がないため、いつまで続けるかは、現時点ではわからない状態である。

14.原乳は、農場単位でなくクーラーステーション単位で検査が行われています。新しい基準値50ベクレル/Kgを上回っているものとそうでないものが混合され、正しい検査にならないのでは。

日本の牛乳のほぼ全量が下図に示すような流通ルートを経て消費者に届けられており、クーラーステーション毎で測定することは合理的である。

原乳から牛乳乳製品ができるまで
- 【牛乳・乳製品に関する消費者からの質問】 -

<なぜ、原乳はクーラーステーション単位で検査しているのか。>
「農家ごとに検査した場合、基準値を超えるものが出てしまうためにブレンドしているのではないか。」との疑問を呈されることがある。クーラーステーション毎の検査は、あくまでも検査の便宜の問題であり、検査機器台数が限られている中での合理的方法として行っている。

<学校給食の牛乳を飲ませない保護者、飲もうとしない生徒がいる。どのように考えるべきか。>
給食を無理やり食べさせることはできない。どうするべきかは、学校関係者特に給食の担当者、自治体の関係者、父母の方々みんなが集まって、給食をどう考えるかをリスクコミュニケーションとして意見交換し、何らかのルールを決めたらどうかと考える。
ただ、もし学校給食を食べない、牛乳を飲まないと決めた子供が特定の地域で大量に出現した場合、当該地域の給食制度が崩壊してしまう可能性がある。現下の厳しい経済状況の下では食事についてすら家庭間格差があり、栄養のバランスをとった食事を提供し続けているという役割を考えると、学校給食の制度の維持は重要と個人的には考える。

<ホエ―は安全なのか。>
いろいろなお菓子や食品にホエ―が入っていることから、ホエ―は安全なのかとの問い合わせがある。
最近の原乳の測定結果は検出限界以下になっている。この原乳から得られるホエ―を、ほぼあり得ないことではあるが、仮に濃縮して100ベクレル/Kgのものができたとする。これをどれだけ摂取したら、年間の追加被ばく量の限度である1ミリシーベルトに達するかというと、年間600~700リットルになる。これだけのホエ―を1年間で摂取することは普通では考えられないことであり、消費者の皆様は冷静に考えてほしいと思う。
ホエ―は安全なのかとの問い合わせがなぜ出てきたのかは、よく分からないが、消費者はそこまでセンシティブになっているということの例の一つとして示した。

15.牛肉が大問題になりましたが、何が起きていたのですか。

国産牛で、飼料として放射性セシウムに汚染された稲わらを食べたものがあったため、2000ベクレル/Kgの牛肉が出てしまったことがあった。BSE対策で作った牛肉トレーサビリティー制度があり、国内の牛にはすべて番号が付けられているため、今回のような事態に対しても番号を確認することで、該当する牛が全てわかるようになっている。このため、問題になった放射性セシウムを含む牛肉は、現在では出回っていない。よほど特殊な例として、冷凍庫に1年くらい依然として保管されているようなものもあるかも知れないが、それ以外は市場からなくなっているため、問題ないと判断する。

16.鶏肉や豚肉も心配です。大丈夫ですか。

福島県の豚肉で一度だけ100ベクレル/Kgを超えるものが出た。理由はわからない。即座に出荷自粛とした。それ以外では鶏肉、豚肉で基準値を超えるものは一度も出ていない。そもそも餌が輸入飼料のみのため、問題が発生しない。
現下の家畜の飼料に関する問題は、福島には広大な牧草地があるものの、空から降ってきた放射性セシウムを浴びてしまったため汚染してしまい、牛に与えられないし、ビニールで包んでそのまま置いてある牧草(ロールベール)がたくさんあり、処理の方法がないのが現状である。除染のために剥がした土の持って行きようがないのと同じ状態で、牛の糞の堆肥も同様の状況にある。

17.野生きのこや、いのししなどの野生獣について、検査はどうなっていますか。

群馬、茨城、福島、宮城、岩手では、山に降り積もった放射性セシウムが、野生きのこや山菜に含まれてしまい、それらを餌として食べた猪、鹿等の野生動物が汚染されてしまっている。
日光でも何千ベクレル/Kgというきのこが出てしまった。「きのこ狩りやらないでください。」ということも呼びかけている。山の除染はなかなかできないのが現実のため、自然界から放射性物質の影響が無くなるまでこの状態が続くことになる。
猪については、ハンターが撃って定められた施設で処理されたものについては全頭検査を行っているため、店で売られている猪については食べても安全と言える。

18.水道水に含まれる放射性物質の「管理目標」はどんなものですか。

厳格な管理を行っている。去年の5月以降、水道水から放射性物質は出ていない。

19.おわりに

普段通りの食事を普段通りのメニューで一食分多く作ってもらい、それを測定する陰膳(かげぜん)調査を各種の機関が行った。京都大学と朝日新聞の福島県内での共同調査では、年間の追加被ばくは最大で0.1ミリシーベルト以内に留まっている。コープ福島の調査でも最大で0.14ミリシーベルトに留まっている。
これは、今回これだけ厳格な新しい基準値を定めたことに対し、みんながこれを守る努力をしている結果として、このレベルの追加被ばくで収まった状態であると判断する。この現状を維持するべくこれからも引き続き努力していかなければいけないというのが今の日本の課題である。
これは役所だけの問題ではなく、生産から消費者にいたる関係者みんなで守り、万が一出荷制限のかかっている品目の市場へのもれがあった場合に対しても、みんなで見つけ対応する鋭い眼をもった消費者になっていただくことが重要と考える。