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第71回 食品と放射能

牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

6.放射性物質の半減期とはどういうものですか。「物理的半減期」と「生物学的半減期」はどう違うのですか。

セシウム134の物理的半減期は2年強で、壊れて半分になり、137の方は半減期が30年でありなかなか壊れない。しかしどちらであっても、人間の体に入った放射性物質は普通に、汗、小便、大便の形で排泄される。これらにより、体内に入りっぱなしの状態ではなく、出ていくことになる。誤解され易いのは、水俣病の有機水銀のように体の中に蓄積され続けるというようなものではない。問題となっている放射性セシウムは一種のミネラルであり、どこか体の一部の臓器に留まることはない。ただ、放射性物質の種類によっては、たとえば放射性ストロンチウムは骨の中に、昨年3月に問題となった金町浄水場から検出された放射性ヨウ素はのどの甲状腺に長く留まる性質がある。
チェルノブイリの事故の際には放射性ヨウ素が大気中にばらまかれ、それが牛乳を汚染した。何らの規制もなくこの状態が放置されたために、汚染された牛乳や水を飲んだ近隣の子供たちに甲状腺癌が増えたのではないかと考えられている。今般の東京電力福島第一原子力発電所の事故の対応では、日本政府の対応が遅かったのではないかとの指摘が多くある。こういったご批判に対しては、今後、学者、ジャーナリストの検証に委ねるとして、金町浄水場の例のように、検出結果の公表と使用中止、抑制の呼び掛け等を行い、十分とは言えないまでも迅速な対応であったと考えてよいのではないか考えている。ただ現在でもミネラルウォーターで粉ミルクを溶かしている方がおられ、半減期が8日間の放射性ヨウ素についてはすでに心配ない状態になっていることの説明が不足していたと考える。情報の伝達がうまくいってない表れと判断する。

7.食品中の放射性物質の新しい基準値はどのようになっていますか。

去年の3月11日~今年の3月31日までは暫定規制値であり、下表左に示す数値であった。これは緊急時の対応として、事故後1週間程で設定している。
数字の背景は、ICRP(国際放射線防護委員会)では、分かりやすい言葉で言えば、緊急時にあっては、食品由来の追加被ばくは年間10ミリシーベルトまでは止むを得ないと言っている。
わが国では安全を見て、10の半分の5ミリシーベルトを食品由来の追加被ばくの限度とした。一般的な人の食生活を考えれば、飲料水や牛乳は摂取量が多いため厳しい値にしなければならない。一方野菜とか穀類は、飲料水や牛乳に比べると摂取量が少ない。このことから、飲料水や牛乳に厳しい値を定めた暫定規制値が設定された。
ICRPもこれは1年間くらいの緊急措置との判断であり、平常時の対応に関しては、追加被ばくは、年間1ミリシーベルトまでであろうとの判断である。

放射性セシウムの暫定規制値 放射性セシウムの新基準値

新基準値の設定に当たっては、通常の食品安全に係る行政機関の役割分担に基づき、コーデックス委員会の考え方に沿って行った。その役割分担とは、リスク評価は独立した機関が行う。リスク管理としての基準作りは評価を受けた別の機関が行う。そういったところが協力し合って意見交換会(リスクコミュニケーション)を行い、消費者、生産者、流通事業者および行政関係者の相互の理解を深める。このように役割を分担することで、リスク評価とリスク管理とリスクコミュニケーションの3点を行うこととした。
リスク評価は食品安全委員会、リスク管理は農水省・厚労省・消費者庁等の役所が行い、リスクコミュニケーションは全ての役所が協力して役割分担して実施している。
食品安全委員会が食品健康影響評価(リスク評価)に当たって主に参考にしたのが、広島、長崎での被爆の追跡調査の経験、チェルノブイリ原発事故の経験を踏まえて、どれだけの以上の追加被ばくにより何らかの影響があるのかについて検討を行った。広島、長崎の経験から、生涯125ミリシーベルト以上追加被ばくした人は、統計的に有意に癌、白血病のリスクが確率論として高まっている。
一方それ以下の被ばくの場合は、癌、白血病の原因になっている可能性もあるが、100ミリシーベルト以下の被ばくでは、果してそれが原因で癌や白血病になったのか、それ以外の原因があったのかわからない、つまり全く影響がないのか、あるかどうかがわからない状態である、統計的に言うと有意な差がない、というのが食品安全委員会の評価である。
国際放射線防護委員会は、生涯1000ミリシーベルトの追加被ばくをすると5%のリスクの増加が認められると言っている。このデータをグラフに表して延長すると、生涯100ミリシーベルトの追加被ばくをした場合は、癌のリスクは0.5%高まると考えられる。それ以下の被ばくの場合は、影響があるともないとも言えない、あったとしても他のリスクに隠れてしまうレベルであると考えている。
以上から、「追加被ばくは生涯100ミリシーベルトまで」と言う考え方でリスク管理を行うこととした。これは、毎年1ミリシーベルトの追加被ばくを受け100年間生きたとすると、国際放射線防護委員会の言っている追加被ばくの目安である、年間1ミリシーベルトまでと合致する考え方である。
以上から、追加被ばくは年間1ミリシーベルトに抑えるとの考え方を取った。

8.食品や飲料水に含まれる放射性物質に関する規制はどのようなものですか。加工した食品はどのように扱われるのですか。

新しい基準は、分かり易いものにした。飲料水については、全ての人が飲んで代わりがなく、その摂取量が多い。1日2リットル飲むため、一番厳しく見る必要がある。牛乳と乳児用食品は、子供がたくさん摂取する。チェルノブイリ事故の調査結果から放射性ヨウ素の影響による甲状腺癌の増加が推察されたことから、厳しい基準を定める必要がある。
それ以外の食品については追加被ばく年間1ミリシーベルトに抑えるべく計算するとの考えで、最も食事量の多い13~18歳の男子が食べる量の平均値を想定し、その量の半分(国の自給率が40%で、政府としてはこれを50%に高める計画があるため)が放射性物質を含んでいた場合、1年間の追加被ばくを1ミリシーベルトに抑えるためにはどこまで許容されるかを計算した場合、放射性セシウムが含まれる量の限界は120ベクレル/Kgとなる。さらに、量は少ないがストロンチウム等他の原発由来の放射性物質もあるため、こういった核種を取り込んでしまう可能性も考慮し、120という値を更に切り下げ、一般食品の基準値を100ベクレル/Kgとした。
牛乳と乳児用食品は、子供たちが飲む牛乳、食べる乳児用食品は、全て国産品で全てに放射性物質が含まれていた場合を前提に計算し、50ベクレル/Kgというより厳しい値を定めた。
飲料水の10ベクレル/Kgというのは、1日2リットル飲むということと、国際基準WHO基準で飲料水中の放射性物質は10ベクレル/Kgまでとなっていることに合致させている。

年齢区分別の摂取量と放射性物質の健康に与える影響を考慮し限度額を算出
9.農産物はきちんとモニタリング検査が行われているのですか。

新基準値を定めたが、モニタリング検査を実施することで、基準値を守ることを確保している。
検査を行うべき対象の自治体は、青森から新潟、長野、静岡を結んだ東日本1都16県で、県による検査体制を整えている。
検査の内容としては、過去50ベクレル/Kgを超えたものについては週1回調べる。牛乳については週1回、その季節に始めて流通するものについては出荷の3日前から調べて、安全であれば流通する。1回出荷制限し、その後何回か調べた結果基準値以下で出荷制限を解除したものについても、継続的に調べるという態勢を取っている。牛乳については週1回クーラーステーションで調べる。

10.食品の出荷制限と摂取制限の仕組みは。

摂取制限は、著しく高い濃度の放射性物質が検出された場合、「当該食品を食べないでください。」と言うもので、現在、出ていない。
出荷制限は、現在出ているもので、内閣総理大臣が原子力災害特別措置法に基づく原子力対策本部長として特定の市町村を単位として特定の品目について出荷の制限を指示することである。例として、千葉県の白井市産の原木シイタケで高い値が出た。これを踏まえ、野田総理大臣は原子力対策本部長として、森田千葉県知事に対し千葉県白井市産の原木シイタケについて出荷制限の指示を出し、その指示に対し森田知事は白井市長と白井市を範囲とするJA西印旛の組合長に対し「出荷しないよう要請します。」との要請書を出した。これを踏まえ、千葉県知事は職員である農業改良普及員に対し、農家を巡回し実際出荷していないことを確認させる。また、農協職員も農家、直売所、市場、農協の選果場を見に行く等の取り組みを繰り返すことで「絶対出荷させない。流通させない。」体制を取っている。
出荷制限の基礎になる原産地表示については、農林水産省の職員で食品表示Gメンが全国規模で、偽装表示の立入検査、指示、公表等を行っている。朝早くから夜遅くまで地道な活動により、偽装表示を無くすよう努力している。