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第69回 機能性物質による被ばく低減化 ~ラクトフェリンを中心にして~

牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

- 講演後の質疑応答 -
Q1.今伺った内容は、一般国民に情報としてあまり流れてないようなんですけど、どうなんでしょうか?
A1.
  • 動物実験では低線量の実験ではなかなか分からない、効果が見えない。高線量で効果が確認されても、低線量で何をマーカーにして影響を見るかがきちんと分からないと低線量影響の話は難しい。人間への応用はどうなのかを問われると薬事法の絡みで歯切れの悪い言い方にならざるを得ない。
Q2.臨床的に使ってみようということは多々あるんでしょうか?
A2.
  • ラクトフェリンは海外ではやられています。放射線ではなくてがん症状の緩和剤的に使われているようです。
Q3.民間療法的に許されているヨウ素とかプルシアンブルー以外に対処療法的に体内被ばくを排泄するようなものはあるのでしょうか?あまり聞こえてはこないんですが。
A3.
  • キトサンの様に何らかの効果を出すと最終的にはサプリメントとして自己責任でということになると思います。私としてはラクトフェリンなんかは低い線量の被ばくでも効果はあるのではないかと考えています。
Q4.ラクトフェリンは牛乳の赤いタンパク質と言われますが、どこに含まれていますか?
1㏄にどれだけ入っているんですか?見ることはできますか?
A4.
  • 初乳には多いようです。牛乳には1mg/ml以下で初乳ほど多くない。もともと生体成分のため微量です。動物実験では高線量でしか生体影響が見えてこないというのが現実ですが、低線量を長期間浴びた場合、放射性発がんが問題視されると思いますので、この実験を予定しています。
Q5.腹腔内投与の説明図に注射器が見えたんですが、ネズミのお腹のどこに投与するのですか?
A5.
  • へその下辺りで、腸管に入れない様に注射します。刺すと腸管が逃げますので大丈夫です。お腹の場合操作が簡単なのと多くの量を入れることができるというのが特徴です。
Q6.医薬品として認められている物は、みんな海外で開発されたものかです?また実際に今回の事故の後に投与された例がありますか?
A6.
  • プルシアンブルーは今回の事故では使われていません。プルシアンブルーのようなフェロシアン化樹脂を開発し、人体内Csの排泄促進実験をされたのは放射線医学総合研究所の方です。DTPA:キレート剤ですが、日本で使われたことはありません。アメリカで核開発が進められた頃、事故がありその時に投与した例がいくつかあります。DTPA自体毒性が強いため、長期間投与の例はありません。認可されたというのは、燃料サイクルを想定して、応急処置用に認められたと思います。両方とも一般の方への使用は、大量に取り込んだ場合ということ以外、まずないと思います。
Q7.ネバダの核実験場で大量に被ばくした方がいて何かを投与したと聞いたんですが、もしかしたらこれらですか?
A7.
  • アメリカは、核開発の頃かなり凄い人体実験をしています。「核のモルモット」という文献が出ていますので、それに比較的細かく出ています。何を飲ませたかは分からないですが、色々な防護剤を投与したとは聞いています。今では信じられないような、社会問題になってしまう様な内容です。それが今貴重なデータになっていることは事実です。ICRPでも動物実験データよりも人のデータがあればそのデータを優先しますから。
Q8.ラクトフェリンの腹腔内投与の実験で、生存率が上がったというデータで、ラクトフェリンの量によって生存率の値に違いがあるというデータもありますか?
A8.
  • 今後の共同研究で濃度を変えた放射性発がんの実験を予定しております。ラクトフェリンの効果領域はあまり広くないので、投与量を変えたらどうか、などについてはこれから始めようとしているところです。
Q9.高線量でやられた実験だということですが、どれくらいの線量ですか?人間に例えるとどれくらいの数値ですか?
A9.
  • マウスのおおよその半致死線量、6.8~7Gy:グレイ(6.8~7Sv:シーベルトに相当する量)です。人間だと全員が死んでしまうくらいの線量です。
Q10.事故の場合の様に一度に高線量を浴びた場合と低線量で例えば福島の避難区域の様に年間数十mSvの場合ときちんと分けなければいけないと思うんですが、今検討されている防護剤は低線量でも役立つと考えてもよろしいでしょうか?これらの防護剤が何mSvであれば効果があるとかを教えていただきたい。
A10.
  • プルシアンブルーもDTPAも投与は医療行為になるので勝手に使ってはいけない。大量被ばく時に使うとなっていますが、福島の事故レベルの線量では使われることはないと考えます。被ばく低減化研究の1つのキーワードは、ラジカルの発生を防ぐことにあります。低線量でもラジカルの発生はあり、それに対しどの程度まで効果があるのか、具体的な数字はどなたも言えないと思います。ヒドロキシルラジカルの発生を抑えることで防護効果が出てくることは色々な実験結果から見ても共通するところです。低線量でも目に見えなくともラジカルの発生抑制は効果があると考えています。低い線量でも検出できるマーカーが見つけられれば実験が進むのですが、今のところないのが実情です。遺伝子レベルでの解析が進めば低い線量での効果確認の可能性が見えてくると期待しています。
Q11.放射線防護研究に関して、日本は世界の中で進んでいるのかまたは始まったばかりか、どのレベルなんでしょうか?
A11.
  • 世界的には進んでいる方だと思います。というのは、世界的に放射線防護に関する研究を行っている人があまり多くないという実情もあります。
Q12.今度「フクシマ」が「ヒロシマ」、「ナガサキ」の列挙されるようになりましたが、「ヒロシマ」、「ナガサキ」があったから、もっと進んでいてもいいのではないかと思うんですが。なかなかできなかった状況があるんでしょうか?
A12.
  • 今回の事故の後、秋月先生(秋月辰一郎:長崎の被爆医師)という随分昔のお医者さんの本(内容の一部:塩分を摂る事で放射線障害を防護した。)がようやく今頃出てきたという状況です。日本は被爆国で、色々な研究が進んでも良かったんでしょうが、「ヒロシマ」、「ナガサキ」の時代はとてもそのような研究が行われる状況ではなかったのだろうと思っています。
Q13.「ヒロシマ」、「ナガサキ」のあと、米軍が多くの被爆者をアメリカに連れて行き治療等いろいろな試みがされたという話があるんですが、治療という面でアメリカではかなりやられていたんでしょうか?
A13.
  • 治療としての有効な薬剤はたくさん研究されていています。以前JCO事故(中性子線を高線量浴びた事故)の時の治療剤は、日本では認可されてないアメリカからのものを使っています。高線量に対しての治療剤というのはいくつかあります。
Q14.ラクトフェリンの効果ですが、薬事法との関係から安易に効果を謳うのは難しい事と、研究はまだこれからということはお聞きしたんですが、実際に人間に対する活用の可能性に対しどの程度期待していいものなんでしょうか?
また、ラクトフェリンの研究に関しても、海外と比較して日本のレベルはどの程度なんでしょうか?
A14.
  • ラクトフェリンと放射線と言うことに関して言えば、他の所での研究はないと思います。ロシアでも研究されていますが我々の方が早いです。そのほかのラクトフェリンの効果に関しては、ラクトフェリン研究会が有り、歯肉炎に効果があるとか色々報告されています。期待に関しては、放射線発癌に関して期待しています。古典的実験で、胸腺リンパ腫というのがあり、ある種のネズミに一定量を照射すると8~9割胸腺リンパ腫を出すというのがあります。このネズミを使ってやりかけている状態です。結果がどうであれ、メカニズム解明にいいヒントになると思います。
Q15.低線量の放射線の影響というのは確定的なものではない状況で、発癌の率が上がるかもしれないという話だと思います。ラクトフェリンを含めた除染のための防護剤の副作用はどうなんでしょうか?
A15.
  • 防護剤の考え方としては、連続的に摂取しても害がないというのが重要と考えます。その意味でラクトフェリンは毒性がなく連続的に摂取しても問題ない。放射線防護効果の一つであるラジカルスカベンジャー(ラジカルの連鎖反応を止める物質)であるということで期待しています。
Q16.今日お話を伺って、正直に希望が見えてきたかなって思っています。日常的な食生活指針として期待を持ってこれからどのように一般の方に伝達しようかと考えています。やり方によっては日本発の食生活による除染・低減の提案のようなものが生まれそうな期待を持ちました。
A16.
  • 治療と防護は別の考え方をしなければいけないと思います。同じ考えでは誤解されやすいので、安易に「効く。」と言うと、逆風評になってしまうので、メカニズムを追って、実験データで示していかなければと思っています。
Q17.牛乳の成分表に「ラクトフェリン」と書いてありますか?
A17.
  • ありません。ラクトフェリンは熱に弱いので、普通の牛乳は熱処理していますので、これからラクトフェリンを摂ることはできないと考えて下さい。「ラクトフェリンヨーグルト」というのがあります。ヨーグルトに後から無菌のラクトフェリンを添加・強化したものです。機能表示はしてないです。サプリメントとしてラクトフェリンだけの物もあります。効果は明確には書けません。
Q18.先程の長崎の被爆例で、塩の効果を述べられていましたが、メカニズムはどのようのお考えですか?
A18.
  • 混乱の中での対処ということもあり、メカニズムは示されてなかったように記憶しております。