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第102回 コロナ禍における生活者の意識と行動変容を追う
~Jミルク・牛乳乳製品に関する食生活動向調査2020より~

牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

コロナ禍前と比べた、牛乳乳製品の利用意向と選択基準の変化

題目は堅苦しい感じですが、どんな目的で牛乳を使っていますかとか、どういった基準で牛乳を選んでいますかということを聞いた結果です。

コロナ禍における牛乳乳製品の利用意向の変化

コロナ禍における牛乳乳製品の利用意向の変化

この調査は2021年1月の調査結果であり、その結果、コロナ禍より前との比較において、2020年4月より前に比べて2021年1月の時点では、食べるヨーグルト、それから牛乳、飲むヨーグルト、チーズの利用意向の強化が明確に表れていました。
なかでも一番左側の食べるヨーグルトについては、利用の意向が表れている割合が非常に大きくなっています。ヨーグルト全体、食べるヨーグルトも飲むヨーグルトも合わせてですが、全体の利用意向が強いことについては、ちょうど1月時点、新型コロナウイルス感染の再拡大、特に年末に掛けて1,000人を超えるような感染者数が増加したこと、それから、冬の時期も重なっていることも要因として挙げられますが、免疫力強化への期待感が、この利用の意向に強く働いていると考えています。
 一方、利用の意向が強くなった人よりも、弱くなった人、青の方ですが、利用の意向が弱くなったが増した人では、生クリームとバターのみでした。生クリームについては、料理での利用の増加は確認されていましたので、このような結果についてはさらなる分析を行っていく必要があると考えています。

コロナ禍における牛乳乳製品の利用意向の変化(年代別)

コロナ禍における牛乳乳製品の利用意向の変化(年代別)

牛乳とチーズに関して、牛乳は左から2番目。それからチーズは左から4番目ですが、これについては薄い水色で表される10代の方々、それから緑色で表される65歳以上の方々において利用の意向が強いことが分かりました。なお、10代の若い世代においては、牛乳・乳製品の全般において利用意向が強いということが分かりました。やはりコロナ禍ということも含めて、牛乳・乳製品を若い世代で摂っていこうという機運が高まっていることも確認されました。

コロナ禍における牛乳乳製品の利用意向の変化(地域別)

コロナ禍における牛乳乳製品の利用意向の変化(地域別)

食べるヨーグルト、牛乳、それから飲むヨーグルト、チーズについて、利用の意向が強いのが特に北海道にお住まいの方々でした。牛乳乳製品の生産地としての特徴が強く表れているのではないかと考えています。

コロナ禍において牛乳乳製品の選択基準で強まったもの

コロナ禍において牛乳乳製品の選択基準で強まったもの

2020年4月以前に比べて、2021年1月時点は、食品全般と牛乳乳製品に関して、その商品を選ぶ際の基準で大事だと思うようになったものを調査しました。調査方法としては、例示されている項目の中から上位3つを選択する方法で調査をしています。その結果、コロナ禍より前に比べて、より大事だと思うようになった選択基準トップ3は、食品全般においては価格、安全性、おいしさの3つが上位でした。この項目は、牛乳の結果においても同じで、牛乳においてもやはり価格・安全性・おいしさが上位3つを占めました。牛乳は、青の線で示されているところです。この食品全般と牛乳においては、特に、安全性が特徴的であると考えています。

一方、牛乳以外の乳製品で選ぶ際に大事だと思う選択基準上位3つは、価格、おいしさ、好みでした。先ほどの牛乳に比べて、牛乳では安全性というキーワードでしたが、牛乳以外の乳製品では、好みというものがその選択基準の上位に上がってきていることが確認されました。

コロナ禍における食品市場

コロナ禍における食品市場

コロナ禍により偏った食生活、運動不足、免疫や筋骨量の低下、メタボ、糖尿病や高血圧などの持病の悪化、ストレスによる心の病気など、新たな健康2次被害が世界で顕在化しつつあり、ウィズコロナにおける喫緊の健康課題となりつつあります。今後一層食生活の多様化が進むとともに、新たな食品カテゴリーとしての植物ベースの動物性代替食品の市場が一定の規模に発展する見込みです。その要因は、植物性食品の多い食事が健康的であるという考え方とか、環境負荷の低さや安定供給という視点で、持続可能なフードシステムであるという考えによるものだと考えております。
世界の酪農・乳業組織では、健康的な食事とは、バランスの取れた食事であり、動物性と植物性の両方から様々な食品群が組み合わされ、すべての必要な栄養素を含むもの、と考えています。

進む牛乳乳製品消費の多様化

進む牛乳乳製品消費の多様化

牛乳消費という観点で見たものがこのグラフです。このデータは、総務省の家計調査のデータを参考にしています。勤労世帯あたりの購入頻度として、日本人の牛乳・乳製品の消費は、従来の牛乳中心の消費から、ヨーグルトやチーズなどの利用が増加し、徐々に多様化が進んできている状況です。食生活の多様化や、豆乳・人工肉に代表される植物性代替食品の普及などの新たな動きにより、牛乳乳製品の消費構造の変化は今後も続く見通しであると考えています。

コロナ禍における牛乳乳製品の消費状況

コロナ禍における牛乳乳製品の消費状況

2020年度上期の期間で見たのがこの結果です。前年同期と比べて学校給食、業務用の牛乳とバターの減少が挙げられています。一方で外出自粛や巣ごもり需要により、家庭用の牛乳やヨーグルト、家庭用のバターについては増加という傾向が現れています。

コロナ禍のなかで利用が増加している食品について

コロナ禍のなかで利用が増加している食品について

コロナ禍にあっては、家庭内消費が増加し、多くの食品類において消費の増加が継続していることは皆さんもご承知の通りです。そこで2020年4月、8月、10月の3回のタイミングで、飲食の機会や回数が増えていると感じる食品について、上位3つを選択してもらう方法で調査しました。グラフの縦軸は、増加していると感じる割合であり、すなわち増加の傾向があるということです。その結果、緊急事態宣言時の2020年4月に比べて、上位2つである野菜・野菜料理とヨーグルト類の場合、8月、10月のいずれも増加傾向の状況には変わりがなかったのですが、4月に比べてその増加者の比率が10ポイント以上減少していまして、増加していると感じる程度はやや鈍化していることが確認されました。

この中で牛乳・乳製品の特徴について確認したところ、ちょうど赤で示されるバーのところです。なお、ヨーグルトについては、途中から食べるヨーグルトと飲むヨーグルトに分けて調査をしています。その結果、8月と10月の時点において、8月は薄いピンク、10月は赤の比較ですが、増加していると感じる人の割合の大きな変化はありませんでした。すなわち、バーの高さがほぼ同じぐらいを示しているということであり、増加傾向は定着していることが確認されました。4月の時にはかなり増加というところの数値で表れていましたが、8月、10月につれて、時間が経って減少していくのではなく、増加は一定量維持されているということです。

今後、購入や利用を増やしたい食品について

今後、購入や利用を増やしたい食品について

この調査は2020年10月に行いました。その結果、今後購入や利用を増やしたい食品では、魚介類が特徴的に多く表れていて、次いで豆腐が多いということも確認されました。牛乳乳製品と豆乳、牛肉、鶏肉、代用肉とは同じ程度の比率で表れていました。

男女別で見てみると、面白い結果が出ていて、女性では赤のバーで示される部分ですが、魚介類とか豆腐・豆乳、大豆で作った代用肉が、男性より多く表れていることが確認されました。一方男性では、青で示されたところであり、牛乳乳製品、それから牛肉、鶏肉、豚肉、卵において、女性よりも多いことが分かりました。すなわち、女性では比較的植物性の食品を好み、男性では動物性の食品をそれぞれ選択する傾向があることがこのデータからも分かってきました。

今後訴求していく牛乳乳製品の食品価値

まず最初に、牛乳に対する認識・イメージについてです。Jミルクでは牛乳に対する認識・イメージについて7つの指標を作成しました。
1:牛乳はカルシウムが豊富で、子どもたちの成長や骨粗鬆症予防に欠かせない食品
2:牛乳は直接飲食したり、料理に利用できる便利でおいしい食品
3:牛乳は人間に必要な栄養素がほぼ全部含まれている健康にとって優れた食品
4:牛乳は必須アミノ酸の含有量が高く、良質なタンパク質を摂取できるという食品
5:植物性食品と動物性食品のバランスが良いことで知られている日本型食生活において、牛乳は欠かせない食品
6:牛乳は高血圧や糖尿病などの生活習慣病の予防効果や、健康寿命を延ばす効果がある食品
7:牛乳は新型コロナウイルス感染拡大を防止するための免疫力維持に有効な食品

牛乳という食品への認識・イメージについて

牛乳という食品への認識・イメージについて

男女ともにカルシウムが豊富で、子どもたちの成長や骨粗鬆症の対策に欠かせないという指標が最もイメージとして強く出ていることが確認されました。すべての認識イメージにおいて、男性よりも女性の方において、「とてもある」というお答えをいただいている状況ですが、中でも女性については、カルシウムが豊富で、骨粗鬆症対策に欠かせないとか、飲食したり料理に使ったりできる便利でおいしい食品というイメージが、認識として強く特徴的に現れているという結果が出ました。

牛乳乳製品の利用が増加した理由や動機

牛乳乳製品の利用が増加した理由や動機

なぜ牛乳乳製品の利用が増えたかの理由について。その結果、牛乳と食べるヨーグルト、飲むヨーグルト、チーズでは、健康増進、栄養の強化、免疫力・抵抗力の強化が共通して上位となりました。また、食べるヨーグルトと飲むヨーグルトでは、腸内環境の改善が上位で挙げられていました。バターにおいては、家庭内での食事を理由として挙げる人の比率が特に高くなっていました。また、牛乳とチーズにおいては、家庭内での食事を理由として挙げる比率が高くなっていました。なお、牛乳・チーズ・バターを増やした人については、酪農家への応援、それから、牛乳・バターに関しては、学校の休校で余った生乳の消費、といった理由で増加をさせているという声も聞くことができました。

牛乳乳製品以外の食品の利用状況

牛乳乳製品以外の食品の利用状況

2020年8月に実施した緊急調査において、調査対象である5,000人のうち、コロナ禍において牛乳乳製品を増やした人は1,003人いました。その全体5,000人と、牛乳乳製品を増やした人1,003人において、牛乳乳製品以外の食品の利用がどのように変化したかを聞いた結果です。その結果、牛乳乳製品の利用を増やした人、すなわち、これは赤のバーで示されるところですが、これらの人は、調査対象者の全体の平均よりも、積極的に牛乳乳製品以外の食品の利用を増加をさせていることが判明しました。例えば、牛乳乳製品の増加者においては、約半数の方々が積極的に麺類を増やしており、4割の方々がご飯・米料理を増やしており、4割の方々が野菜・野菜料理を増やしていました。このように、調査対象者の全体と比べて、牛乳乳製品の増加者は、牛乳乳製品以外の食品についても利用を増加させているという声を聞くことができました。

特に増加した上位5つの食品について見ると、牛乳乳製品の利用を増やした人において、牛乳乳製品以外の食品の利用を増加させた割合は、先ほどお話をしたように、牛乳乳製品の利用を増やした人の51.8%が麺類の利用を増やし、42.1%がご飯・米料理の利用を増やし、42.3%が野菜・野菜料理の利用を増やし、26.2%が冷凍食品の利用を増やし、33.6%が肉・肉料理の利用を増やしていました。いずれの増加割合も、調査対象全体に比べて、2倍以上である、という結果になっています。

牛乳乳製品以外の食品の利用増加者における牛乳乳製品の利用実態

牛乳乳製品以外の食品の利用増加者における牛乳乳製品の利用実態

牛乳・乳製品以外の食品である麺類、ご飯、野菜、肉のそれぞれについて増やした方々は、牛乳乳製品をどれくらい増やしたのかについて、その比率を解析したものです。
その結果、全体5,000人について、麺類を増やした人は1,435人であり、そのうち牛乳乳製品を増やした人は519人でした。すなわち、麺類を増やした人のうち牛乳乳製品を増やした人の割合は36.2%でした。このような割合のうち、特に多く表れているのが、野菜・野菜料理を増やした人です。野菜・野菜料理を増やした人は680名でしたが、そのうちの牛乳乳製品を増やした人は424名でした。すなわち、率にすると、野菜・野菜料理を増やしている人の6割強の方々が牛乳乳製品を増やしているということが分かりました。また、肉料理に関しても、半数以上の方々が牛乳乳製品を増やしていることも分かりました。

今後訴求していく牛乳乳製品の食品価値(まとめ)

今後訴求していく牛乳乳製品の食品価値(まとめ)

牛乳乳製品は、カルシウムの吸収率に優れ、必須アミノ酸の含有量が多い良質なタンパク質を含み、多種多様なビタミン類を含む栄養バランスの良い食品であり、日本人のすべてのライフステージにおいて、食生活の課題や栄養ニーズに対応する食品です。
特に、牛乳乳製品は、子どもの健やかな成長、感染症対策としての免疫機能の低下抑制や健康2次被害予防、高齢者のフレイル予防といった健康寿命の延伸、等のそれぞれに貢献ができます。

牛乳・乳製品は、脂肪中の飽和脂肪酸の含有量が多いものの、他の動物性食品とは異なり、動脈硬化性疾患の発症には中立的です。また、生活習慣病のリスクとなるような高血圧、血糖値の急激な上昇、肥満、などへの予防対策や、糖尿病やメタボなどの生活習慣病の予防の効果もあるとされています。
牛乳・乳製品は、国内における生産と流通の仕組みが整備されており、日常的に安定して消費者に供給されるものです。また、海外でも高く評価されている日本型食生活において、牛乳・乳製品は、植物性食品と動物性食品とをバランス良く組み合わせるために欠かせない、おいしく利用しやすい食品の一つといえます。

今後の消費の展望

コロナ禍における牛乳乳製品の利用においては、直接の飲用・喫食だけではなく、料理の材料としての利用も進んでいることが分かってきました。特に若い女性においては、お菓子やパンづくりでの牛乳・乳製品の利用が進んでいることが分かってきました。
コロナ禍において、牛乳類の購入場所としては、スーパーマーケットが定着してきていると考えられます。また2020年4月の時点において増加が目立った1回あたりの購入量は、徐々に落ち着いてきている状況でした。
コロナ禍後の牛乳・乳製品の利用には、接触回避とともに、リスク低減に関する取り組みが強く関与してくるものと考えられます。食事を通して規則正しい生活や栄養バランスを確保し、体力強化・免疫力アップなどにつながる取り組みと、牛乳・乳製品の利用とをリンクさせていくことが、今後も重要なポイントになってくるものと考えられます。

「ポストコロナ」へ向けて

2つまとめさせていただきました。1つ目は、牛乳・乳製品はより楽しむ利用へ、です。
コロナ禍のさなか、SNS上では牛乳・乳製品を使った様々な料理レシピへのアクセスが増加しています。このことにより、家庭で楽しく食べる食事においては、牛乳乳製品の利用や普及につながるものと考えています。
もう1つは、牛乳・乳製品はより正しい利用へ、です。健康面、栄養面というところで、牛乳乳製品の利用を意識していただきたいということです。免疫・抵抗力の強化への再認識や、ウイルス感染のリスク低減への貢献という場面において、牛乳・乳製品の利用は、今後も意識されるのではないかと考えています。
生活者がコロナ禍に直面している現在のタイミングにあっては、牛乳・乳製品における楽しさと正しさとの両立を、説得力のある形で訴求できる希有な時代なのかもしれません。