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第83回 TPP農林水産物市場アクセス交渉の結果

牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

チーズの種類
資料5-2:チーズの種類
チーズ
資料6:チーズ

次にチーズです。資料5-2のチーズの部分と資料6をご説明します。
先ず、資料5-2のチーズの種類をご理解いただきます。現在、我が国で輸入されている商品やスーパーの店頭に並んでいる商品、食品産業で使用されている主なものを6種類提示してあります。
フレッシュチーズ、その中にはモッツァレラやクリームチーズがあります。最近国産のものも売られており消費も伸びています。
ブルーチーズは青カビで熟成されたチーズです。国産としても製造されていますが主流とは言い切れません。その他のチーズ(熟成チーズ)はフレッシュチーズ・ブルーチーズ以外のもの全てです。主なものはチェダー、ゴーダ、カマンベール、パルミジャーノ・レジャーノ等はスーパー等で売られています。カマンベールは国産も含めて消費が伸びています。チェダー、ゴーダは直接消費もされますがプロセスチーズの原料として使われています。シュレッドチーズはチーズを帯状または短冊状にしたものの総称です。用途はピザやトーストに使い、消費は伸びています。おろし及び粉チーズはパスタ等にかけて使うものでチーズの種類を特定したものではなく粉状やおろしてある状態のものをいいます。プロセスチーズはナチュラルチーズを粉砕、溶解、乳化させたものです。

この区分を踏まえて、資料6の説明です。
チーズは昭和28年頃から自由化されています。関税が現時点で29.8%です。この関税を支払えば誰でも輸入できます。チーズは消費が伸びております。全体の消費の8割強は輸入品です。国産チーズも伸びてはいますが輸入チーズが大勢を占めていることになります。このチーズの現状から交渉では関税を撤廃しても良いのではないか、国産が少ないので守る必要が無いのではという輸出国側から大きな圧力がかかりました。この状況の中で
■日本人の嗜好に合うモッツァレラ、カマンベール、プロセスチーズ等の関税は維持します。
■特に業務用で原材料として使われるチェダー、ゴーダ等やクリームチーズ等は16年間の関税撤廃期間となり長い撤廃期間を措置することができました。
■国産チェダー、ゴーダ等の主な仕向け先であるプロセスチーズ原料用チーズについて、現行の抱合せ制度を維持することで、国産チーズに対する急激な需要減少を回避することとしております。

以上のこととは別に資料6、1)フレッシュチーズの合意内容でシュレッドチーズ原料用関税割当が記載されています。新たに国産品を1使用することを条件に輸入品3.5までは無税で輸入できます。国産品を使うことを条件とする新たな関税割当を措置しました。国産チーズの新たな需要を作ったと言えます。
6)のプロセスチーズの関税は現状維持できましたが、オーストラリア・ニュージーランド・アメリカに個別に100トン(当初)から150トン(11年目)の関税割当をすることになりました。ただし日豪EPAでプロセスチーズの関税割当は既に措置してあります。現状はオーストラリアからプロセスチーズは輸入されていません。

TPP交渉における乳製品(その他乳製品)分野の合意内容
資料7:TPP交渉における乳製品(その他乳製品)分野の合意内容

資料7上段の図のご説明です。
TPP交渉における乳製品(その他の乳製品)分野の合意内容です。全粉乳、加糖れん乳、無糖れん乳は新たな関税割当を合意しております。PEF(調整食用脂=バター70%と植物油30%程混ぜてある調製品)は現在でも関税割当数量があるため、数量ではなく税率を無くすことになります。その他乳製品枠の数量を増やさず枠内の税率を徐々に削減または撤廃することになりました。

以上が乳製品分野のTPP合意内容です。このことについて、生産者からは生産への影響の度合についてお問合せを頂戴しております。現在、内閣官房でTPP合意内容の影響度について試算することになっておりますが、時間がかかる情況で、今は合意内容の事実関係のみをご説明しているところです。ただし、脱脂粉乳やバターは現在追加で輸入している量から比べると今回の合意内容の量は少ないため、直ぐに国内生産に大きな影響があるとは思われません。一方、消費者の方の影響度合も詳細な検討を実施しております。バターに関してはTPP枠輸入分が確実に増えることになりますので、昨今の品薄状態は解消される方向に進むのかなと思います。

チーズはブルーチーズのように関税が削減されますので消費者にとって買いやすくなると思います。チェダー、ゴーダにしても直接消費者にとっては長い目でみると関税が撤廃されることになりますので、還元されていくと思います。シュレッドチーズ、粉チーズは消費者にとってメリットが出てくると思っています。

TPP協定は大筋合意されたわけですが、いつの段階で発効するのかと言いますと、今各国で条文を調整しているところで、それが終わると署名の手続きをします。その後、各国での国内手続きとなります。日本では国会で承認されなければなりません。TPP加盟12カ国全てで終了した時点から60日後に発効することになります。
2年経過しても手続きが終了しなかった場合は6カ国且つ12カ国のGDPで85%を超える国が批准の手続きを終えて60日後に発効します。今のところ明確な時期についてはわかりません。

今回のTPP大筋合意で農産品の中には大幅に関税が削減されたり、撤廃となる分野があります。生産者は今後生産が維持できるかといった大きな不安を抱かれています。このことについて政府全体としてTPP対策本部を立ち上げました。今後、農業分野にとってどのような対策が必要かを11月中にも対策の大綱を作成する予定です。牛乳乳製品については国内生産で需要がまかなえることが基本だと思っておりますので国内の生乳がきちんと再生産ができるような対策が必要だと考えております。