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第80回 乳和食の意義と今後の展開

牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

目からウロコの乳和食 意義・定義に関する補足説明

以下は、牛乳・乳製品に降圧効果があるという試験結果の報告です。

『牛乳・乳製品摂取とメタボリックシンドロームに関する大規模横断調査』
研究名:
「食生活、生活習慣と健康に関する調査研究」
調査対象者数:
乳業4社の勤務者及び家族(明治乳業・森永乳業・雪印乳業・日本ミルクコミュニティ)8,659名
(非喫煙者 6,548名についての解析)
(従業員のみの回収率 36%  喫煙率)
調査内容(アンケート):
日常の食生活の把握(45項目)、普段の運動と日常の生活の様子の把握(18項目)、健康診断の結果(12項目)
調査スケジュール:
2008年10月~2009年3月 調査実施
2009年4月~2010年1月 解析
2010年8月 日本栄養・食糧学会誌 掲載

これらの試験結果については、女子栄養大学の上西一弘教授が以前この「食と健康を考える会」でご報告された内容です。牛乳・乳製品自体に降圧効果があり、更に食塩摂取が高い和食に牛乳を使うことで減塩料理が出来ることを基に、乳和食を普及させることをJミルク普及グループでは考えました。
大規模横断調査について改めてその結果を報告します。もともとは「牛乳・乳製品摂取とメタボリックシンドロームに関する研究」として調査を進めました。その結果、メタボの要因である高血圧に対して牛乳が降圧作用を持っていることが明らかになってきました。そこから乳和食の発想が出発したわけです。
調査の概要ですが、対象者は乳業4社の従業員の非喫煙者6,548名で解析をおこないました。喫煙者を除いた理由は、日常の食生活や運動に関係なく喫煙によって血圧が上下するためです。調査はアンケートで実施しています。
以下が調査結果の概要と、その結果をグラフにしたものです。

研究結果の概要
牛乳・乳製品の摂取が多い人では、メタボリックシンドロームが少なかった

このグラフの横軸は、日常の食生活で牛乳・乳製品の摂取量を少ない人から多い人の順に並べ4等分したもので、C1というグループは最も摂取量の少ないグループでC4は最も摂取量が多かったグループになります。縦軸は、メタボになっている人の割合で、最も牛乳・乳製品の摂取量が少ないグループがメタボリックシンドロームになっている割合を「1」とします。女性は摂取の多いグループが最も少ないグループと比べて40%メタボが少ない結果となりました。男性でもその差は20%、摂取量が多いグループが少ない結果が出ました。
女性では牛乳・乳製品の摂取量が多いほど「腹囲」、「BMI」は低かったという結果になりました。グラフで示すと以下のとおりです。
「BMI」の単位で見てみますと、多く摂取したグループの方が低い結果となっています。「腹囲」も2cm細いという結果が出ました。多く摂取しているグループの方がメタボリックシンドロームになっていない傾向が分かります。

女性のBMIと復囲との関連

また、女性では牛乳・乳製品の摂取量が多いほど「中性脂肪」は低く「HLD」は高いという結果になりました。以下のグラフが示すとおりです。
このグラフでは女性の脂質代謝と牛乳・乳製品摂取との関連を示してありますが、やはり摂取量が多いグループのほうが「中性脂肪」が少ないく、善玉と言われる「HLD」コレステロールの数値は高くなっています。

女性の脂質代謝との関連

以下は、男女ともに牛乳・乳製品の摂取量が多いほど「血圧」は低かったという結果です。
このグラフでも摂取量の多いグループの方が少ないグループに比べ男女とも「血圧」は低い結果が出ております。数値的には正常の範囲にどのグループも入っています。

男女の血圧との関連

これまでの結果は、横断調査というかアンケート調査ですので、原因と結果の結びつきという観点からは若干弱い部分があります。つまり、この調査は「牛乳摂取量が多い人ほど健康である」という結果となり、その理由は「牛乳・乳製品を多く摂る人ほど健康意識が高く、バランスのとれた食生活や規則正しい生活習慣を送っているからメタボリックシンドロームが少なくなっていたのではないか」とも考えられます。そこで、牛乳・乳製品を摂取することで、本当にメタボリックシンドロームが改善されるのかということを確認するために、次に示す介入研究も行いました。その概要を説明します。

『牛乳・乳製品摂取とメタボリックシンドロームに関する介入研究』
研究名:
「メタボリックシンドローム指標に対する牛乳・乳製品長期摂取の効果の検討ランダム化比較研究」
調査対象者数・介入期間:
IT企業従業員 年齢20歳以上60歳以下の非喫煙・メタボ男性 200名
牛乳・乳製品摂取群(牛乳400ml相当/日)100人、非摂取群:100人
牛乳摂取率93%、脱落率1%
摂取期間 24週(6ヶ月)
摂取群・コントロール群ともに栄養指導(適正なエネルギーになるような食事改善を目標とする)
臨床試験登録 UMIN000006353
調査内容:
日常の食生活の把握(45項目)、普段の運動と日常の生活の様子の把握(18項目)、睡眠調査(9項目)、血液検査(11項目)
調査間隔 スタート時、12週(約3ヶ月)後、24週(約6ヶ月)後
調査スケジュール:
2011年1月~2011年7月:介入調査
2011年9月~2012年7月:解析
学会誌:
Journal of Nutritional Science and Vitaminology

調査対象者は、IT企業の従業員で、20歳以上60歳以下の非喫煙・メタボ男性です。ランダムに100名づつ2群に分け、6か月間毎日牛乳・乳製品(牛乳400ml相当)を摂取したグループと、牛乳・乳製品非摂取グループで比較した。両群とも栄養指導を行い摂取カロリーが同じになるように指導した。この介入研究の結果は、メタボリックシンドロームに関しては両群とも良くなった。ただし、サブ解析をしましたところ牛乳・乳製品摂取群と非摂取群、両群とも肥満ではない適正体重のグループでは牛乳・乳製品摂取群が血圧(収縮期血圧)と空腹時血糖値が下がった。また更に運動をしているグループの中で牛乳・乳製品を摂取しているグループとそうでないグループではでは前者の血圧が下がった結果も出ております。

適正体重グループ 運動グループ

介入研究の結果を要約すると、両群ともに腹囲、収縮期血圧、空腹時血糖値、体重、体脂肪率、HbA1c,LDL-C、総コレステロールに優位な改善が見られた。また、牛乳・乳製品摂取群では適正体重者、適度な運動実施者で、牛乳・乳製品の摂取により血圧がより低下したということです。

次に減塩の問題についてお話いたします。以下のグラフは、国民健康・栄養調査で年ごとに食塩を一日当たりどれ程摂取しているかを調査したものです。平成24年では、1日平均が10gを少し超えた量を摂取しています。

成人の食塩摂取量の平均値と目標値

目標とすべき摂取量は、以下の表で示したとおりです。今後、更に減塩を進めなければならないことになります。

各種食塩の摂取基準

先ほどのグラフでも分かるとおり、年々食塩摂取量は減ってはきていますが、ここにきて下がり方が緩やかになってしまっています。今後、世界的な基準であるWHO/FAOの目標値5gにするためには更なる減塩、食塩摂取量を減らさなければなりません。
国連総会ハイレベル会合宣言より提唱された5つの課題をお示しします。これによると喫煙の問題に続く2番目の課題として挙げられているが食塩摂取量の問題です。マスメディアキャンペーンや食品企業の自主的な活動によって減塩を進めることが謳われています。

非感染性疾患(生活習慣病)対策のための5つの課題

日本人の長寿を支える健康な食事のあり方に関する検討会が、食事パターンの基準を10月16日にまとめました。来年4月以降から実施されます。
その厚生労働省のプレスリリース「健康な食事」の食事パターンに関する基準の内容と留意事項では、食塩の基準に関する記述に「単品」の場合は、料理ごとに1食あたりの食塩含有量は1g未満であることが示されています。お弁当のような主食・副食・副菜を組み合わせた場合は、3g未満とされています。また、1日の食事にあわせて牛乳・乳製品、果物を摂取することも書かれています。この基準をクリアーした場合につけることができるマークも制定されました。この塩分量をクリアーすることはかなりハードルが高いといえます。
こういった、背景の中で現代日本人の栄養問題についての記述です。これは「和食の課題」と言って良いと思います。

現代日本人の2大栄養問題

日本人の2大栄養問題は「食塩の摂取過剰」と「カルシウムの不足」が挙げられます。先ず、減塩運動を進めるなかで次のような困難な状況があります。
(1)「だしの旨みで減塩」の指導では、薄味に限界があり、これ以上の減塩は困難となっています。また、手間がかかり働く女性は調理時間が確保できないことなどが障害となっている。
(2)食の外部化(外食・中食)がさらに進んでいる。外食・中食では、旨味の関係で高塩分となりがちとなっている。
という問題に対して血圧降下機能を持ち、だしの代わりに旨みの出せる牛乳を使うことによって効果がある。また、カルシウム不足についても牛乳の持つカルシウムを多く含み吸収率も良い機能が役立つと考えます。
こういったことから、牛乳を「減塩運動支援」に使用し、更に和食に活用する「乳和食」として提案しております。

- 3. 乳和食の展開と減塩運動 -

昨年から展開している「乳和食」の活動です。

乳和食の展開と減塩運動-1
乳和食の展開と減塩運動-2
NHK総合テレビ等で乳和食を紹介
2014年グルマン世界料理本大賞を受賞
- 4. 今後に向けて -

・乳和食のコンセプトは減塩。減塩のツールとして乳和食の更なる定着を。
・健康長寿のための減塩運動の推進と実践へ。減塩意識、必要性の認識と味覚の体感
・一方減塩ニーズは、まだまだ未充足。どうしたら減塩できるの。
 外食、中食、加工食品、多様な減塩料理法の普及が必要。
→牛乳・乳製品の和食文化への融合定着