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第78回 北海道の酪農の現状と今後の方向性

牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

ここから、本日の演題の最大のポイントで、乳価をあげたからには北海道はきちんと生産量を上げろとメーカー各社の方々はお思いになっていると思います。本日、このような講演の機会を頂戴できたことに、感謝しなければならないと思っています。なぜ、北海道の生産が揺らいでいるのかをお話致します。
北海道の生乳生産が失速している要因は3点あります。
1)酪農家の戸数:分かり易く言えば離農が多い現状がある
2)搾乳牛頭数:一戸あたりに飼育している乳牛の頭数、そもそも牛がいなければ生産はできない
3)一頭あたりの搾乳量:一頭あたりどれくらい乳を出しているか
これらを、詳細に説明致します。

生乳出荷戸数前年比(%)

上図は、生乳を出荷されている酪農家戸数が、前年に比べてどのくらい残っているのかを示したグラフです。昭和60年から平成25年までの変遷です。平成4~7年は毎年4%位減少しています。その後、3%に一旦落ち着き、良い年は2%程度となり3%~2%の間を行ったり来たりしていましたが、今3%を割り始めたというのが現状です。
酪農というのは、一つは親から子へと親子継承だけとはなりません。酪農家は、本当に働き者です。その子供さんですから、勤勉で他産業にどんどん就業してしまいます。実は、ホクレンの職員の中にも、酪農家の子息が数多くいます。有名大学を卒業し、何とか酪農のためになりたいということで働いております。
そういった状況で酪農を続ける戸数が落ちてきます。しかし、逆に参入する、新規の人を酪農に入れればよいではないかということになりますが、毎年、酪農を止める戸数は200戸あります。新規に参入される方が毎年30~40戸です。なぜ、そのように少ないのか。イニシャル投資が、5,000万円~1億円かかります。牛1頭、50万円します。牛舎を建築すると、最近の牛舎は1億円ほどかかってしまいます。搾乳をするための施設は、良いものになると2,000~3,000万円かかります。酪農は施設産業であり、生産する牛自体も50万円という大変な資金が要ります。小規模に始めても、5,000万円です。学校を卒業したての人が、5,000万円の資金があるかというと、用意できません。それでは、こういう人に対して、例えばリース方式であるとか様々な方法で何とかしてあげている状況はありますが、しかし、思い切って酪農を始めようかという人にとっては、あまりにも重い負担がかかります。これが、北海道で酪農を始めようとする人にとって、大きなネックとなっており負担となっています。従って、現状の毎年戸数が減っていく分を新規参入の方々で補うということにはなかなか難しい状況です。

年代別離農戸数と離農主因(平成24年度)

戸数が減っている理由についてですが、上のグラフを参照下さい。その理由はたくさんあります。年金を支給される年齢になったため、止めるという方が一番多い。平成24年度の方々を調査した結果の統計をとったものです。だいたい200戸位離農されています。実数は204戸が正確な戸数ですが、そのうち90戸、約半数は60代の方々です。一番の理由は本人、家族の高齢化、後継者がいないことが41戸となります。その他に若い方々でも離農されています。50代の年代の20戸で、その理由は本人、家族が病気になってしまったり怪我をしたことです。実は、酪農というのは家族皆でやっている商売なのです。だいたい1家族3人位働いています。ケースとしては、若い夫婦とその父親、あるいは高齢な方であれば、親夫婦とその息子さんがだいたい平均的な酪農家です。この3人のうち1人でも病気になると、大きな経営を維持して行かれない。労働的にも非常に厳しいものだということもご認識頂きたい。
それから、相変わらずですが、負債が大きく止めるという方もいないわけではありません。全体的には4分の1位の方がいます。酪農というのは、どの位の仕事をこなしているのかといいますと、平均的な酪農家では1年間で600t位搾っております。600t搾るといことは、乳代と子牛や乳を出す牛の販売で、6,000~7,000万円の年間所得があり、場合によっては1億円位の収入・支出がある。ちょっとした中小企業の規模です。ですから、経営感覚が必要になります。乳業メーカーから多大な乳価を頂戴している訳ですが、それでも餌代が騰がったりしてカツカツの経営なのです。ひとつ間違うとずっと赤字が続くことになります。例えば、牛が病気になってしまった、原因が分からないまま次々と牛が罹患し乳がでなくなる。このことだけでも、1,000~2,000万円の赤字となってしまう。このような商売となっている現状です。経営が大規模になればなるほど経営能力が必要です。そこで失敗して酪農を止めざるを得ない人も出てくる。
やはり、その中で一番多い理由は後継者がいないため自分の代で止めようとすることです。また、65才になると年金が万度に支給されるので、そこを潮時として止める方が多いのです。
こういった理由で生乳出荷の戸数がどんどん減っている状況の中で、1000t以上搾乳できる酪農家は、大きく増えてきている。こういった形態で生産を維持してきたのです。
1戸当たり搾乳牛頭数、つまり減った分を他の酪農家が飼育して生産してくれればいい訳です。こういうことが行われてきたかということを検証します。

一戸あたり搾乳牛頭数の伸び率(%) 乳量階層酪農家別出荷数量の推移

1戸当たりの搾乳牛頭数が伸びなかった年は、それほどなかった。ただし、伸び率は段々落ちてきていることはご理解いただけると思います。特に平成18年に0.2%の伸びとなっていますが、実はこの年は最後の減産なのです。減産して以降、伸び率は良くなってきていますが、大体1%になってきている。直近ですと、0になっています。今年に入ってからの伸び率は、恐らく0になっていると思います。こういう様に、1戸当たりの伸び率を支えた原因は、酪農家の出荷戸数、これを乳量階層別に見ますと、200t未満は減って、300~500tの酪農家も減ってきていますが、500~1000tの酪農家は、やや維持傾向にあります。実は、1000t以上の酪農家は爆発的と言っていい程増えてきていて、平均してみると1戸当たりの伸び率を上げています。これは、北海道で進んでいる投資による規模拡大で、メガファームと我々は言っているのですが、1000t以上の酪農家の方々が今約700戸おり、全部で1384千トン生産しております。法人経営はおそらく、1,000戸に近い戸数だと思われます。こういった大きな流れになってきています。

酪農の形態をここでご紹介いたします。よく見る酪農というのは、パイプラインミルカーという装置を1頭1頭、牛に取り付けて、牛は繋がれていて乳を搾っていくやり方です。実は、北海道でも全体の8割はこの形態です。また、平成に入ってから増えてきたのが、フリーストール牛舎。牛が繋がれていない状態で、その中で自由に動く、好きな時に餌を食べられる、そして牛が乳を搾って欲しくなったら、搾る場所に行く。その搾る場所は、ミルキングパーラーと言い、昔は1頭1頭搾っていて、まだ北海道の8割はこの形態です。こういうパーラーと言うところに、牛が来て並んで搾ってもらって帰っていく。最近増えているのは、回るパーラーです。手前から牛が入って、ぐるっと回って先に出て行く。出て行く間に搾ってしまう。ゆっくりと回っています。更に技術は進歩して、オランダやドイツでは20年ほど前から搾乳ロボットを使用していたのですが、最近のものは非常に性能が良く、牛にとってもやさしい搾乳の仕方ができるようになった。技術の進歩に合わせて酪農家は、つなぎ牛舎の形態からパーラーあるいはロータリーパーラーを選択し、規模を拡大する酪農家が多くなってきています。
しかし、つなぎ牛舎からフリーストール牛舎に規模拡大する際には、問題もあります。牧草地も増やさなければならず、牛の飼育頭数は約3倍に増えます。そうすると、牛の餌もより多く必要になります。牧草地も、3倍に増やさなければなりません。しかし、大規模になっても、家族経営の方が多くいらっしゃいます。こういった方々は、3倍に増えた牧草地の管理をし、収穫をする。または種を蒔く。そういった労働は、非常に大変なことです。そこをどのようにやっていくのか。それが酪農支援システム。1番目はコントラクターといい、農作業の請負組織。北海道では、水稲91組織、麦が115組織、豆が87組織、牧草が139組織と325組織があります。酪農では全体の4割に当たる、2,500戸の方々が利用して牧草を収穫してもらう。あるいは種を蒔いてもらう。面積的には、道内の5分1あります。この組織は、誰が運営しているのかというと、農協でやっているところが多いのですが、他には例えば、地元の土建屋さんや運送業者に委託してこういった作業会社を作ってもらう。規模拡大した酪農家は、労力の足りない部分をこの組織を利用してやっていこうとしています。

酪農家支援システム 1.コントラクター
酪農家支援システム 2.TMRセンター

また、最近増えてきているのは今の形態を更に進めた形態でTMRセンターです。これは自給飼料の増産、畜産経営の安定ために飼料生産で、餌を混ぜて供給する、つまり牛の給食センターと思っていただきたい。こういう形態を北海道の酪農家の方々は、隣接する酪農家10戸程度で資金を出し合って、共同運営することが増えています。これですと、毎日やらなければならない餌の調整の作業などが必要なくなる。更に餌の与え方という作業は非常に難しく、餌そのものの牧草がどういったものなのかをきちんと分析した上で、それと合う配合飼料、トウモロコシの量や様々な物を混ぜていかなければならない。こういう組織を作り上げて、一番効率の良い餌をそこで作って配る。これなら、規模を拡大した酪農家も、取り敢えずちゃんと牛を管理して搾乳する。この管理をきちんとやって行けば良いため、家族経営でも、かなりの規模拡大ができます。TMRセンターは、現在北海道で53組織有ります。北海道では、約6,200戸の酪農家がいますが、そのうちの約1割近い555戸が利用しています。近い将来、100組織になって、2割の方々が利用するだろうと予測しています。色々な形態の支援システムを農協も考えましたが、このTMRセンターは酪農家自身が考えだし、自ら出資して作り上げていくことが多い。こういう力が、北海道の酪農家の皆さんにはあります。それが、ここまで規模拡大を牽引してきたことになります。

北海道の生乳生産量は370~380万tありますが、生乳出荷規模階層別生産乳量をみると、その内の130万tは1000頭以上の酪農家が搾っていることになります(下図)。1000t未満の酪農家の出荷乳量は、どんどん落ちてきている。放っておくと、落ち続けて行く訳ですが、規模拡大によりこの落ち込みを補って、更にプラスの増産に持ってきたといのうのが、このグラフの意味するところです。自然減という事態が、平成12年にありました。この自体は北海道で初めてでして、その時は大変驚きました。そこで、生産を如何に進行するかというプロジェクトをホクレン内部で立ち上げました。結論は、1000頭以上の規模拡大を目指す酪農家を応援していこうと、大規模法人化のお手伝いを続けてきました。その結果、大規模酪農家の出荷乳量が増えてきたわけです。平成23年あたりから、伸びが鈍化していることがお分かり頂けると思います。これが現状の問題です。

生乳出荷規模階層別生産乳量の推移

つなぎ飼いから、先程ご説明したフリーストール、ミルキングパーラーという規模拡大に進んだ酪農家がどれ位増えたかと言うと、北海道農政部の調査で、平成元年度には171戸しかなかった(下図)。平成12年度くらいから、もっと大規模な設備投資も増えてきましたが、平成17年度くらいから伸び率が止まってきて、平成23、24年度の2年間はゼロになっています。

フリーストール・ミルキングパーラーの導入状況

なぜ、規模拡大する酪農家がいなくなったのか、分かり易く言いますと、平成22年度10月に当時の管首相がTPPに入ると言ってしまった。TPPに参加することになれば、酪農は打撃を受けることになる。そのような状況の中で、規模拡大のように数億円もかかる大きな投資をこの時にやっていいものだろうか、といことになりますよね。酪農家の立場になったら、今のTPPの進捗方向では、「後継ぎの息子も帰って来るし、大規模を目指そうか」と30年に渡る大きな借金を背負おうという気持ちになるでしょうか。やはり、そうはならなかったのです。これが、現状の問題です。つまり、仕方のない理由で酪農を止める方もいるのですが、その乳量を皆で大規模になることで背負ってきた、その背負う人々がピタッと止まってしまった。これが今の状況です。1戸当たりの搾乳量の伸び率は、平成22年度くらいから規模拡大する酪農家が減ってきた。そして、この2年間落ちてきた。これからどうなるのか。平成23年度に、大規模酪農のための設備の増加はほとんどなかった。規模を拡大すると、2~3年間は乳量が伸長します。今、伸長している状況は、平成22年度に規模拡大した酪農家がいらっしゃったことによります。この後は、マイナスになる可能性が大きい。この点が我々にとって頭の痛いところです。

一頭あたり乳量の伸び率(%)

もう1つの要素。1頭あたり乳量の伸び率、これも大切な要素です(上図)。北海道では、「乳牛検定」というのをやっています。略して「乳検」と言って、毎月、毎月、1頭1頭の乳量を計り、成分も計ります。乳質、衛生的に問題がないかもやります。その莫大なデータは、如何にたくさん搾るかというデータとしても使いますが、もう1つ目的があります。牛のお母さんは人工授精で、場合によっては、常に残念なことですが外国の牛のお父さんの精液をつけてしまう。あるいは、日本の優秀なお父さんの精液をつける。このように、牛のお父さん、お母さんを作っていく。この両親を作る時に、この牛の系列にこの牛の系列をかけあわせる、といった雄の系列と雌の系列がこの検定でわかります。年度を追って、1頭あたりの乳量は徐々に増えていっています。この検定から、良い牛を選びだしてくる。これを酪農家の作業として毎日毎日やっています。お父さん牛の能力は、色々な機関がきちんと調べて、この系列とこの系列をかけあわせると乳量が増えるということをやっています。こういう努力をやっている訳ですが、最近、国がお金をくれなくなりまして、ブレーキがかかった状態です。今、政府に助成の継続をお願いしている最中です。また、餌の与え方を上手にやったら、乳量は増えます。しかし、伸び率の増減の1番大きな原因は、北海道の非常に厳しい自然です。例えば昨年、牧草の収穫時期に天候が悪かったですし、春先はすごく寒かった。それだけで、1頭当たりの乳量の伸び率は低くなってしまいます。一昨年は、豊作で非常に良い牧草がとれました。そうすると、乳量の伸び率は高くなります。その前の年、6月牧草収穫時期に晴天が2日しかなかった。牧草を刈り取れない。牧草を刈る機械を畑に持って行っても、ぬかってしまい出てこれなくなってしまう。こういう年が2年続くと、マイナスもしくは低い伸び率となってしまいます。厳しい自然要件によって、伸び率が変わってきてしまう。これも北海道の現実なのです。

生乳伸び率(要素別)の推移

これまでご説明してきたことを全てまとめると、酪農家は減りましたが、減った分を1戸当たりが伸ばしてきた(上図)。更に平成24年度は牧草の出来も良く、1頭あたりが伸びています。平成25年度は3%程度の離農で、特に多かったわけではありませんが、規模拡大が減り、1頭当たり、1戸当たりが伸びなかった。実は天候も悪く、牧草も良いものが刈り取れず、1頭当たりの乳量が伸びなかった。その結果、生乳生産は98%しかいかなかった。
我々は今後、どの部分をやらなければならないのか。増産のためになすべきこと。もちろん、離農の歯止めをしたいわけですが、何が1番良いのかというと、後継者が必要です。卒業して様々な職業に就いている若者に、「酪農は本当にすばらしい」「北海道に行って(帰って)やってみないか」という環境を何とか作れないものかということが、離農の歯止めとなります。それと、新規就農。これは、ずっと続けて取り組んでいますが、大きな施策を実施しないと、つまり、5000万円なり1億円のお金を何とか自前で用意するとなると難しい。
1戸当たりの搾乳牛頭数、これが今、1番厳しい状況です。もう一度、酪農家の皆さんに投資をしようという機運を作っていかなければ、いけないと思っています。私どもが一番やらなければならないのは、この部分だと思っています。投資をするから、北海道に帰って来て酪農をやってみないかという会話を酪農家の方にやってもらいたい。TPPがあるにも拘わらず、このことを勧めるということは、本当に勇気のいることですが、そろそろやらないと大変なことになると思っています。
1頭当たりの搾乳量を伸ばそうと、特に良質粗飼料、草から見直し、牧草地をしっかり管理していこうという運動を遅まきながら、一昨年から始めています。

<増産のためになすべきこと>
・酪農家戸数:離農の歯止め(後継者呼び戻し)、新規就農
・一戸あたり搾乳牛頭数:規模拡大(投資)、牛舎の空きを埋める工夫
・一頭当たり搾乳量:良質飼料給与(特に粗飼料)、乳牛改良

こういった3つの対策をしっかりやっていかなければならないのですが、最大の問題は、規模拡大の投資のことなのです。北海道の酪農の経営者の年齢別の人数のデータを見ると、65歳になると皆止めてしまいます。60歳の酪農家の人数が最も多く、今後、離農していく可能性はあります。ただし、このことで大変なことになるのかというと、これだけではならない。この世代の方々にどれ位後継者がいるのだろう。60代の酪農家の全体の5割を超える方々に、もう既に後継者がいます。酪農に就労していないが、確実に帰って来る後継者がいるという方々を入れると、結構高い率で後継者はいます。ただ、この方々が帰って来て就農すれば、若い世代が増えるわけですが、全員が帰って来て酪農を続け、かつ規模の拡大がなければ、今と同じ量を確保できないことになります。後継者が帰って来た時に、親の世代が規模拡大しておいて欲しい。このことを、続けてやってきたから、維持できていたのが北海道なのです。もう一つ、後継者がいないという酪農家。子供さん達が非常に優秀で、一般企業に行ってしまったという方が多いです。後継者の就農の意志が分からないという方も、結構いらっしゃる。もちろん、若い世代でお子さんが小さい場合は、就農の意志は「わからない」という回答はわかりますが、50代以上の方で後継者の意志がわからないと回答した人は、実は迷っている状態です。子供を酪農に就労させても良いものかという気持ちになっていて、本当は子供に声をかけたいのですが、TPPもあるしという気持ちの方がかなり多いのではないだろうかと想定しています。こういった方々に、規模を拡大して、もう一度やろうと言える酪農を本当は目指したいということが、我々の最大の課題です。

酪農家の経営規模別戸数分布の推移

上図は、酪農家の経営規模別戸数の分布です。北海道の酪農家で、層が厚いのは300~500t位の方です。この層のプロフィールは、年齢的には高く、息子さんはいるのでしょうが、牛舎が古いのです。300~500tクラスの牛舎は、昭和50年代に建てた牛舎が殆どではないでしょうか。その牛舎で、連綿と経営をやってきた方が、息子を後継に呼び戻した時には、1000t以上の乳量の規模にもっていかなければなりません。そして先程申し上げた、フリーストール等の規模拡大をやっていく。なぜ、それが必要かというと息子が帰ってくると2家族になります。2家族になると、これまでのトン数ではやっていけません。2家族の生活費を出していくとすると、規模拡大して1000tクラスにならなければなりません。今、これが止まっている状態です。この状態を何とかしたいというのが我々の大きな願いです。具体的にはどのようにするのかというと、メガファームをどんどん作って来たのですが、メガファームにも問題点が出てきております。それは、投資額が非常に大きくなったこともありますが、人が集まらないことが大きい。世間の企業の中には、人が集まらないことが業務を停滞させていると聞くことがあります。都会ですら人集めに苦労している状態の中で、酪農のメッカといわれる地域は言葉は適切かわかりませんが、辺境の地です。冬は寒さが厳しいところです。そういうところまで来てくれる雇用労働というのは、そういう面からも厳しい環境にあります。従って規模拡大が止まったという理由の1つは、その面にもあります。そういった中で、我々が今考えているのは、家族経営だけで規模拡大ができないかということ。家族経営で規模拡大をする場合、牧草の方は先程のコントラクターが利用できる。労力が最も必要なのは、実は搾乳なのです。この労力は、3~4人必要です。それをロボット化することで、1000t規模の酪農を家族だけで経営できる。そういう新たな形態の規模拡大の構図を描けないかと考えています。もう既に、100戸はあり、非常に上手くいっております。ただし、搾乳ロボットを1台入れると、2500万円かかります。2台だとそれだけで、5000万円かかってしまうので、初期投資が大きい。これに何とか政策の力をいれていくことができないか。この様なことも含めて何らかの方法で、300~500t規模の人達に、1000t規模まで持って行ってもらい、息子に「それじゃあ帰って来い」と言ってもらう、こんな機運の北海道酪農に持って行きたいと考えています。