第71回 牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

4.放射能の単位「ベクレル」と「シーベルト」はどう違うのですか。

「ベクレル」は放射線を出す能力で、1秒間に1個放射線が出てくる量単位をいう。
放射性物質と言うのは、原子が壊れていくときに欠片や波をたくさん放出する。欠片や波、すなわち放射線が1秒間に1個飛び出したのが1ベクレル、500ベクレルは500個飛び出している状態をいう。
一方「シーベルト」は極めて分かり難い単位で、放射線を体に浴びた場合、それがどれだけ人体に影響があるかを示した単位である。何もなくても日本人は1年間に1.5ミリシーベルト、世界平均では2.4ミリシーベルト浴びている。スウェーデンの様な緯度が高く岩石に囲まれた国では、宇宙線の影響や岩からの自然放射線が強く、7ミリシーベルトくらい浴びている。
また、医療被ばくもある。CTスキャン1回で約7ミリシーベルト浴びることになる。ただし、CTスキャンが危ないかと言うと、癌の早期発見等の意義から必要な、許容される被ばくと判断されている。もっとも、やり過ぎは問題との指摘もある。

5.「外部被ばく」と「内部被ばく」はどう違うのですか。

誤解を受けやすい部分であるが、「『外部被ばく』と『内部被ばく』とで、どちらが危ないのですか?」と良く尋ねられる。一部の説では、「内部被ばくは大変危険で、少しでも内部被ばくすると癌の可能性が外部被ばくに比べて何百倍も高まる。」と主張しているが、これは多数意見ではない。また、政府としてもこの説を採用していない。
「外部被ばく」が問題となるのは、福島県の原発周辺から中通り、栃木県の那須地域から茨城県西部および埼玉県東部および千葉県北西部にかけての地域、群馬県赤城山から群馬県および長野県の県境辺りの、いわゆるホットスポットと言われている地域で、そのような地域で生活していると「追加被ばくが1ミリシーベルトを超えてしまうから危険ではないか。」と言われるが、こうした地域であっても外部線量が高い部分はまだらに分布しているため、すべての部分が危険であるとまでは言えない。また、問題となっている原発由来の放射性物質は、セシウム134と137であるが、134の半減期は2年強であり、どんどん壊れてなくなりつつある状態である。137の方は半減期が30年であるため、除染等の対応が必要である。
一方、「内部被ばく」は、「食品と放射能」のメインな部分であるが、1年前の、ホウレンソウの葉っぱの上に放出された放射性物質が空から積り、それを食べることで内部被ばくする、といった状況とは現状は違っている。現状の放射性物質は大気中にあるのではなく地表などに落ちており、それが泥の状態で川や海に流れ出している。最近の調査結果では、基準値を超える値が出ているのは淡水魚と海の魚の特に底の方にいる種類のもので、マダラとかカレイ、ヒラメ等である。外洋で泳いでいるアジとかサバ、マグロなどには基準値を超える様なものは全く出ていない。放射性物質も一種のミネラルであり、時間経過とともに沈殿し海の底に溜るようになる。海の底にいる魚類がそれを摂り込んでしまうために高くなっていると考えられる。また、野外に降り積もった放射性物質の影響が残り続けている露地栽培のきのこ、野生の動植物で高い値のものが発見されている。
今の日本で「外部被ばく」と「内部被ばく」でどちらが問題かと言うと、「外部被ばく」が問題となるのは、前述の福島、千葉、茨城、群馬等のホットスポットで、「内部被ばく」は、魚、野菜の形で全国に流通する食品から発生する可能性がある。物理的にはどちらも同様に問題であるが、社会的な影響の観点からは、「外部被ばく」は局所的で、「内部被ばく」は食品流通の面で全国的な問題になる。このような理由で「内部被ばく」の方が問題と考えている。

わたしたちが1年間に受ける自然放射線 一人当たりの年間線量(世界平均)

6.放射性物質の半減期とはどういうものですか。「物理的半減期」と「生物学的半減期」はどう違うのですか。

セシウム134の物理的半減期は2年強で、壊れて半分になり、137の方は半減期が30年でありなかなか壊れない。しかしどちらであっても、人間の体に入った放射性物質は普通に、汗、小便、大便の形で排泄される。これらにより、体内に入りっぱなしの状態ではなく、出ていくことになる。誤解され易いのは、水俣病の有機水銀のように体の中に蓄積され続けるというようなものではない。問題となっている放射性セシウムは一種のミネラルであり、どこか体の一部の臓器に留まることはない。ただ、放射性物質の種類によっては、たとえば放射性ストロンチウムは骨の中に、昨年3月に問題となった金町浄水場から検出された放射性ヨウ素はのどの甲状腺に長く留まる性質がある。
チェルノブイリの事故の際には放射性ヨウ素が大気中にばらまかれ、それが牛乳を汚染した。何らの規制もなくこの状態が放置されたために、汚染された牛乳や水を飲んだ近隣の子供たちに甲状腺癌が増えたのではないかと考えられている。今般の東京電力福島第一原子力発電所の事故の対応では、日本政府の対応が遅かったのではないかとの指摘が多くある。こういったご批判に対しては、今後、学者、ジャーナリストの検証に委ねるとして、金町浄水場の例のように、検出結果の公表と使用中止、抑制の呼び掛け等を行い、十分とは言えないまでも迅速な対応であったと考えてよいのではないか考えている。ただ現在でもミネラルウォーターで粉ミルクを溶かしている方がおられ、半減期が8日間の放射性ヨウ素についてはすでに心配ない状態になっていることの説明が不足していたと考える。情報の伝達がうまくいってない表れと判断する。

7.食品中の放射性物質の新しい基準値はどのようになっていますか。

去年の3月11日~今年の3月31日までは暫定規制値であり、下表左に示す数値であった。これは緊急時の対応として、事故後1週間程で設定している。
数字の背景は、ICRP(国際放射線防護委員会)では、分かりやすい言葉で言えば、緊急時にあっては、食品由来の追加被ばくは年間10ミリシーベルトまでは止むを得ないと言っている。
わが国では安全を見て、10の半分の5ミリシーベルトを食品由来の追加被ばくの限度とした。一般的な人の食生活を考えれば、飲料水や牛乳は摂取量が多いため厳しい値にしなければならない。一方野菜とか穀類は、飲料水や牛乳に比べると摂取量が少ない。このことから、飲料水や牛乳に厳しい値を定めた暫定規制値が設定された。
ICRPもこれは1年間くらいの緊急措置との判断であり、平常時の対応に関しては、追加被ばくは、年間1ミリシーベルトまでであろうとの判断である。

放射性セシウムの暫定規制値 放射性セシウムの新基準値

新基準値の設定に当たっては、通常の食品安全に係る行政機関の役割分担に基づき、コーデックス委員会の考え方に沿って行った。その役割分担とは、リスク評価は独立した機関が行う。リスク管理としての基準作りは評価を受けた別の機関が行う。そういったところが協力し合って意見交換会(リスクコミュニケーション)を行い、消費者、生産者、流通事業者および行政関係者の相互の理解を深める。このように役割を分担することで、リスク評価とリスク管理とリスクコミュニケーションの3点を行うこととした。
リスク評価は食品安全委員会、リスク管理は農水省・厚労省・消費者庁等の役所が行い、リスクコミュニケーションは全ての役所が協力して役割分担して実施している。
食品安全委員会が食品健康影響評価(リスク評価)に当たって主に参考にしたのが、広島、長崎での被爆の追跡調査の経験、チェルノブイリ原発事故の経験を踏まえて、どれだけの以上の追加被ばくにより何らかの影響があるのかについて検討を行った。広島、長崎の経験から、生涯125ミリシーベルト以上追加被ばくした人は、統計的に有意に癌、白血病のリスクが確率論として高まっている。
一方それ以下の被ばくの場合は、癌、白血病の原因になっている可能性もあるが、100ミリシーベルト以下の被ばくでは、果してそれが原因で癌や白血病になったのか、それ以外の原因があったのかわからない、つまり全く影響がないのか、あるかどうかがわからない状態である、統計的に言うと有意な差がない、というのが食品安全委員会の評価である。
国際放射線防護委員会は、生涯1000ミリシーベルトの追加被ばくをすると5%のリスクの増加が認められると言っている。このデータをグラフに表して延長すると、生涯100ミリシーベルトの追加被ばくをした場合は、癌のリスクは0.5%高まると考えられる。それ以下の被ばくの場合は、影響があるともないとも言えない、あったとしても他のリスクに隠れてしまうレベルであると考えている。
以上から、「追加被ばくは生涯100ミリシーベルトまで」と言う考え方でリスク管理を行うこととした。これは、毎年1ミリシーベルトの追加被ばくを受け100年間生きたとすると、国際放射線防護委員会の言っている追加被ばくの目安である、年間1ミリシーベルトまでと合致する考え方である。
以上から、追加被ばくは年間1ミリシーベルトに抑えるとの考え方を取った。

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