第69回 牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

<放射性核種除去剤>

今のところ認可されているのは、ヨウ素剤、セシウムへのプルシアンブルー及びプルトニウムやアメリシウムなどのキレート剤であるジトリペンタート(商品名:Ca-DTPA、Zn-DTPA錯体形成)が昨年7月に認可された。

<キチン・キトサン>

チェルノブイリ事故後、ストロンチウムの除去剤として適当なものがないとのことでスクリーニングを実施。その際に注目されたのがキチン・キトサンである。キトサンはキチンの化学修飾物で一般にはキチン・キトサンと呼ばれる場合が多い。
セルロースが植物性の食物繊維であるのに対し、キチン・キトサンは動物性の食物繊維である。多機能で、資源としては無限で最後のバイオマス(未利用生物資源)と言われている。
キチン・キトサンの性質と用途を以下に示す。
・キレート作用がある。:凝集剤(廃水処理、重金属や放射性物質の吸着・除去)
・抗菌、防黴作用がある。:食品添加物、防腐剤、防黴剤
・生体適合性に優れている。:人工皮膚、人工腱、人工靭帯、縫合糸、止血剤、徐放剤
・保湿性に優れている。:衣料、化粧品、入浴剤
・免疫賦活能がある。
・肥料、減農薬、イオン交換体、クロマト担体としての利用。
・放射性Sr,Fe,Znなどの排泄促進作用がある。
・摂取することで放射線抵抗性を示す。

今回実験で示したのは、青字で示した新しい機能である。

キトサンを投与してからストロンチウムを経口投与した場合、排泄促進効果が認められた(下図)。また、キトサンを加えた餌で飼育したマウスに半致死線量の強いX線を外部照射すると生存率の上昇が見られた(右図:対照群約30%に対し、キトサン摂取群50%)。

  • キトサンを経口投与してから、Sr-85を経口投与した後の体内残留率の経時変化較キトサンを経口投与してから、Sr-85を経口投与した後の体内残留率の経時変化較
  • キトサン添加飼料で飼育したマウスにX線を照射した後の生存率キトサン添加飼料で飼育したマウスにX線を照射した後の生存率

キチン・キトサンの放射線防護効果をまとめると、
・キチン・キトサンは水溶液中の放射性物質を効率よく吸着する。
・胃腸管内にある放射性ストロンチウムの排泄を促進させる。
・放射性鉄、亜鉛に対しても排泄促進効果がある。
・被ばく前に経口摂取することで放射線抵抗性を示す。

<ラクトフェリン>

共同研究者の石巻専修大学の角田先生からラクトフェリンの研究を進められ取り組み始めた。ラクトフェリンに関し以下に示す。
・1939年に「牛乳の赤いタンパク質」として、スウェーデンで発見された。
・哺乳類の乳、分泌液、成熟好中球の顆粒に含まれる分子量約8万のタンパク質で、2~3個のシアル酸からなる糖鎖を持っている。
・ラクトフェリンは血液中の鉄蛋白であるトランスフェリンと同様、Fe3+を二個分子内にキレートする性質がある。

キトサンと似て多機能であるため、キトサンで行った放射線防護実験を実施した。
ラクトフェリンを加えた餌で飼育したマウスにX線照射(半致死線量:6.8~7Gy)した後の生存率を比較した。照射後2週間程で死に始めるが、ラクトフェリンを与えた群は80%以上生きているのに対し、対象群は60%と大きな差がみられた。

  • 【実験1】LF添加飼料で飼育したマウスにX線を照射した後の生存率を比較【実験1】LF添加飼料で飼育したマウスにX線を照射した後の生存率を比較
  • 【実験1】LF添加飼料で飼育したマウスにX線を全身照射した後の生存率【実験1】LF添加飼料で飼育したマウスにX線を全身照射した後の生存率

次に、投与経路を変えた実験として、X線を照射(半致死線量:6.8~7Gy)した後にラクトフェリン(4mg/1匹)を腹腔内投与した。
30日後の生存率を比較すると、コントロールは60%となったのに対し、ラクトフェリン投与群は殆ど死なず、毛並みも良く餌も良く食べ元気な状態を維持する、驚くべき結果となった。

  • 【実験2】X線を全身照射後、LFを腹腔内投与し、生存率を比較【実験2】X線を全身照射後、LFを腹腔内投与し、生存率を比較
  • 【実験2】X線を全身照射後、LFを腹腔内投与した後の生存率【実験2】X線を全身照射後、LFを腹腔内投与した後の生存率

ラクトフェリンの放射線防護効果として、
・被ばく前に摂取することで放射線抵抗性を示す。
・被ばく後の腹腔内投与で著しい生存率の上昇がみられる。

  • ・ヒドロキシルラジカル(・OH)のラジカルスカベンジャー(ラジカルの連鎖反応を止める物質)である。
  • ・脾臓細胞のアポトーシス(自滅作用)を抑制する。
  • ・骨髄細胞の損傷を抑制する。
  • ・腸内細菌叢を変化させる。

などのことが示されたことから、ラクトフェリンは安全域の広い放射線防護剤として利用できる可能性がある。以上の内容は、2006年の放射線医学総合研究所のデータで、プレス発表されている。今回の福島第一原発事故の後、ラクトフェリンが改めて着目され、継続実験が始まっている状況にある。

<その他の放射線防護材研究>

国際放射線防護会議(ICRR)などで発表された放射線防護剤研究として、

  • ・スピルリナ
  • ・アスコルビン酸
  • ・高麗人参
  • ・イソフラボン
  • ・プロポリス
  • ・アロエベラ
  • ・当帰芍薬散、川芎(センキュウ)セリ科
  • ・藻類バイノス

などがある。
さらに今回の事故の後、りんご(アップルペクチン:メカニズムまだ不明)、味噌汁(メラノイジン)、ビール(ビール成分:粒子線にも効果)、ミネラル酵母、バナデート(天然バナジウム化合物)等の機能性物質が注目され、2011年12月8日に『機能性物質による被ばく低減化研究会』が立ち上がった。

  • その他の放射線防護材研究
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