第69回 牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

2.今回の原発事故による影響

<事故による放射性物質の種類と影響>

今回の原発事故により、原発から放射性プルームという雲のようなものが気流に乗って流れてきて、これを飲食物から取り込めば内部被ばく、外から受ければ外部被ばくとなる。

  • 問題となる主な放射性核種

今回の事故により問題となる主な放射性核種は、
・放射性ヨウ素-131(半減期8日)
・放射性セシウム-137、134(137:半減期30年、134:半減期2年)
・ストロンチウム-90、89(90:半減期29年、89:半減期50日)
であり、これらを大量に取り込んだ場合に使用する薬物としては、日本では3種類しか厚生労働省の認可を受けていない。

<放射性ヨウ素>

・放射線ヨウ素は甲状腺に集積し、甲状腺がんの元になると言われている。
・ヨウ素剤の適用(希釈):WHOは19歳未満、予測線量10mSv以上での適用を推奨。
・チェルノブイリ事故後、ポーランドで約90%(一千万人)の子供にヨウ素剤を服用させた。

⇒ポーランドで有意な小児甲状腺がんは観察されていない。
ただヨウ素剤の効果かどうかはまだ解析されていない
⇒低ヨウ素地帯のベラルーシ、ウクライナでは甲状腺がんが多く発生している。
ポーランドはバルト海に面しており、内陸ほど低ヨウ素地帯ではない。

・日本は四方が海で、日常的に海産物から安定ヨウ素を多く摂取しており、ICRPの代謝モデルで放射性ヨウ素による被ばく線量計算をすると過大評価になる。

<放射性セシウム>

・全身、とくに軟部組織に分布する。
・排泄促進剤としてプルシアンブルー(吸着)がある。

  • ヨウ素剤
    ヨウ素剤
  • セシウムの促進剤:プルシアンブルー
    セシウムの促進剤:プルシアンブルー
【ゴイアニア事故】

ゴイアニア市内にあった廃病院に放置されていた放射線治療用の医療機器から放射線源格納容器が盗難により持ち出され、その後廃品業者などの人手を通しているうちに格納容器が解体されてガンマ線源のセシウム137が露出。
光る特性に興味を持った住人が接触した結果、合計250人が被曝し、そのうち4名が放射線障害で死亡した。
40人以上にプルシアンブルーを1日10g強制的に飲ませ、一定の効果が得られた。
今回の福島第一原発事故の様なレベルでは副作用も考えると殆ど効果がないと考えられる(プルシアンブルーは30mSv以下では治療利益がない、とされている)。

<放射性ストロンチウム>

・NRC(米原子力規制委員会)やIAEA(国際原子力機関)では大量に放射性ストロンチウムを取り込んだ場合、リン酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、アルギン酸ナトリウムなどの投与を考慮するように勧告している。
・核実験が盛んなころ、放射性ストロンチウムに関して多くの研究がなされており、海産生物などのOR値(Sr-Ca観察比)が調査された。
海産生物のOR(観察比)=(海産生物中のSr/Ca比)/(海水中のSr/Ca比)
表に示すようにストロンチウムとカルシウムが同時に存在した場合、多くの海産生物はカルシウムを多く取り込む傾向がある中で、昆布、わかめ等の褐藻類は逆にストロンチウムを多く取り込む性質があることが分かった。この性質を使って放射性ストロンチウムの排泄を促進できないか、褐藻類の粘質多糖であるアルギン酸ナトリウムを使った研究が一時進んだ、という経緯がある。
1965年のNATUREのデータを下図に示す。
ヒトで放射性ストロンチウムに対するアルギン酸の排泄促進効果を確かめる実験をしている。アルギン酸はストロンチウムと不溶性の塩を作るため、ストロンチウムが体の中にあった場合はアルギン酸と結合してストロンチウムを体外に排泄を促進させるものと考えられている。

  • 海産生物のOR値
    OR=(海産生物中のSr/Ca比)/(海水中のSr/Ca比)
    海産生物のOR値 OR=(海産生物中のSr/Ca比)/(海水中のSr/Ca比)
  • ヒトにアルギン酸を投与した後、20分後放射性ストロンチウムを投与したときの体内残留量の変化
    ヒトにアルギン酸を投与した後、20分後放射性ストロンチウムを投与したときの体内残留量の変化

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