第98回 牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

Q1.「グルテンフリー」とはどういう定義になりますでしょうか?
A1.
  • 小麦や大麦に含まれるタンパク質の一種であるグルテンを除去した食品や食事療法のことをグルテンフリーと言います。
    もともと、グルテンに過敏に反応して起こる自己免疫疾患である「セリアック病」の患者さんの症状を和らげるための食事療法なのですが、テニスプレーヤーのノバク・ジョコビッチやアメリカのセレブがグルテンフリー食を実践して、体質改善や減量に成功したことが取り上げられたのがきっかけで、世界中で注目されるようになりました。
  • 質疑応答
Q2.私たちの時代にはあまり「アスリート」という言葉が一般的ではなく、「アスリート」はギリシヤ語から来ているようですが、もともとはフィールドスポーツの選手とかそういう人たちのことを言ったというのが辞書に書いてありました。今はすごく言われますが、日本ではすべてのスポーツ選手に対して「アスリート」という言葉を使っているのですか。
A2.
  • きちんとした定義はないと思います。私たちが「アスリート」という言葉を使う際には、運動量やエネルギー消費量の観点から、大学生の競技レベル以上の人たちをイメージして使っています。ですので、それ以外の場合は「スポーツ選手」や「運動愛好家」とか。アスリートという言葉が一般的に使われるようになったのは最近のことだと思います。
Q3.すごく気になったところが、オリンピックのメニューのお話の中で、オリンピックの食事をチェックする団体というのがあったかと思うのですが、この団体は何というところなのですか。
A3.
  • ローマ字で「PINES」でパインズと言いまして、「プロフェッショナル・イン・ニュートリション・フォー・エクササイズ・アンド・スポーツ」で、スポーツ栄養の国際団体です。シドニーオリンピックのあたりから世界中のアスリートたちの食のニーズを、スポーツ栄養士が中心となって整理し情報交換を行っています。IOCからの依頼を受けて、PINESのフードサービスを専門にしている方々が、4年に1回選手村の食堂のメニューをチェックして、アドバイスをしています。それが100%実践されるかどうかは予算の問題とかがあるので、必ずしもすべては受け入れられないのですが、スポーツ栄養の専門家がいろいろな国の人たちのニーズに配慮してチェックしています。
Q4.先ほどの評価の中で、「ロンドンはオーガニックに配慮していて、アスリートの健康に配慮していた」というコメントがあったのですが、オーガニックだから健康にいいというのは科学的には別に言われていないことなので、何かちょっと間違った価値観があるのかなと。もちろん選手のニーズはあるとは思うのですが。先ほどのグルテンフリーの話にしても、あれはセリアック病の人はグルテンが食べられないけれども、私はジョコビッチ選手の話で非常に間違った知識が広まってしまって問題だなと思っていまして、グルテンフリーが必要な人はセリアック病の人だけなのに、何かまるで健康にいいみたいなことを誤解して思ってしまった人が日本にもたくさんいるものですから。当然、有名スポーツ選手の影響力って強いですから、彼らの知識を正さないで、彼らのニーズにだけに従っているというのはいかがなものかと思いました。
A4.
  • セリアック病以外の人は、グルテンフリーが必要ないというのも言い切れないと思うんですね。というのはグルテンに過敏な人たちも実際にアメリカ・ヨーロッパに多いと伺っています。
  • 質疑応答
Q5.過敏というのも、そこはなかなか数値で出てこないので難しいのですが、それがいるからグルテンフリーが健康にいいよというのは、医学の世界ではちょっと違うと言われているものですから、それを本当に選手とかセレブって結構間違った情報を広めて、それを一般の人に広めてしまうので、栄養的にも問題があることが多くて問題だなと思っています。ただ、ここのPINESがニーズを聞き取るのはいいのですが、「あなたたち、でもこれはこうですよ」っていうような指導をしたりすべきではないかと思いました。どうも聞いていると、ニーズを拾って、それに合ったものを提供しなくちゃみたいな感じになっているのが非常に気になりました。
A5.
  • そうですね。決してグルテンフリーに関してPINESの栄養士たちがそれを間違った形で伝えてはいません。グルテンフリーを必要としないアスリートには、正しい情報を伝えていると思います。アスリートにとって、自分で変化を体感できるものというのはとても意味のあることで、それに関して我々サポートする側が、良い悪いと言い切れないところあります。
    正しい知識というのはもちろん伝えた上で、どちらかというとグルテンフリーに関しては、ベジタリアンのような嗜好の一つと捉えています。国を代表する選手たちが集まる国際大会では、ニーズがある以上それに可能な限り応えることが本当の意味でのおもてなしにつながるのではないかと考えています。
Q6.確かにおっしゃる通りで、消費者も望んでいるから、消費者が決めたりするので、正しくなくても求められればというのもわかります。例えば遺伝子組換えなどでも、あれは別に安全の問題ではないのだけど、消費者が求めるから表示するようになったら、遺伝子組換えでないものばかりになって、逆に誤解が広まってしまったみたいな。そこがちょっと、確かにおっしゃる通り、嗜好の問題で、求める人たちがいるのに、確かにおもてなしというところでいくとそうだなっていうところもありますし、難しいなと思います。
A6.
  • 現状、グルテンフリーがパフォーマンスに有利に働くという研究結果は出ていませんし、グルテンフリーに関しては、更なる研究が必要というのが専門家の共通した認識です。
Q7.今のことに関連して、「FODMAP」っていうのは私も初めて聞いたのですが、これがアスリートの間で話題になっていて、やろうとしている人もある程度いるとすると、ここに入っている牛乳とかヨーグルトとか果物類とか、皆様が率先しているものと相反するのですが、アスリートの中では、この自己矛盾はどうなっているのですか。
A7.
  • 実際に「FODMAP」のプログラムで、アスリートに対してのような指導が行われているのか詳細は分からないのですが、ここに出てくる食品が全て、その選手に合わないわけではありません。当然の事ながら、医師やスポーツ栄養士のサポートを受けながら、個々の選手に合った食事方法を見つけていくわけですから、これらすべてを口にしないという食事療法ではありません。
  • 質疑応答
Q8.ありがとうございました。大変面白かったです。個人的な興味なのですが、例えば運動選手にもちろん多いわけですが、アスリートと一概に言っちゃいますが、お相撲さんもいますよね。それからプロレスラーもいる、ボクサーもいる。とにかく食え食え食えだとか、特別に筋肉質を強化して、そして力を加えるトレーニングをやらせるとか、食生活よりも筋肉増強とか、パワーアップのためにということでやっている方たちが非常に多いんですね。そういうふうにして体を壊すようなパワーアップをする向きがあるのですが。そうするとその人たちっていうのは、短命になったりするんじゃないかと思ったりするんですね。
だからこういう今日のお話のようなことで、人間がうまく生きていくためにはああいう運動の強化みたいなもの、太らせたり、変に強く筋肉を付けたりというのはいいのでしょうか。
A8.
  • 決していいとは思いません。相撲に関しては、実は高校の相撲部の食事調査をさせていただいたことがあります。相撲部の1年生が卒業するまでの3年間、食事調査と、大学のスポーツ科学センターにおける血液検査、体脂肪測定を行い、体がどのように変化していくかを調査しました。
    子どもの頃から太れと言われて、好きなものばかり食べて入学してきた生徒の中には、体脂肪率が50%ちかくあるような学生もいました。また、血糖値や尿酸値を下げる薬を服用している学生もめずらしくはないそうです。
    相撲部の学生は、監督と奥様が作る米を中心とした食事に加えて、日々の稽古と相撲部にしては珍しくプロのトレーナーの指導による筋力トレーニングを行うことで、卒業する頃には体脂肪率が30%台まで下がり、筋肉を増やして増量に成功することが出来ました。
    ボクシングのように、急激に減量をしなければならない種目もありますが、無理な増量や減量は体に負担をかけますので、決してお勧めはしません。
  • 質疑応答
Q9.有名な選手でもたくさんいらっしゃったって伺ったことがあるのですが、お相撲さんに短命な方が多いという傾向はあるのでしょうか。
A9.
  • 高校・大学の相撲部も、体重が重ければいいという傾向はあるようです。筋肉をつけずに体重を増やすと、自分の足で体重を支えられなくなり、大学で選手生命を絶たれる選手が少なくありません。それがそのまま大人になって、学生時代と同じような食生活を続けていると、糖尿病や痛風になる人たちが多いと聞いていますので、決して良いとは思えません。
  • 質疑応答
Q10.私40年ぐらい前にアメリカの大学に行っていたんですが、その時に学食に行くと死ぬほどまずくて、今も死ぬほどまずいんだろうなとは思うのですが、その時にサラダは値段がグラムで決まるんですよ。だから根菜が売れないっていうのですごく悩んでいる方たちもいました。でもその時に学食に行ったら、ベジタリアンの人たちはこちらっていうカウンターがあって、40年以上前ですが、ああ、そういうちゃんと学校の中で分けているんだなというのが非常に興味深く思えて。ベジタリアンの方がずっとおいしかったいうことも覚えています。
質問は何かというと、結局昔食べるものって、ハラールのことも出ましたが、ユダヤ法上の決めごととか、豚は食べないとか牛は食べないとか、そういうふうに宗教上のことがまずあって、それからベジタリアンとか、もうちょっと今は過激になったビーガンとか、ああいう主義みたいなものがあって。その次にローカーボンとかグルテンフリーとか、ちょっとファッションにも少し近付いてきているようなダイエットであるとか嗜好であるとか、いくつかのものがあると思うのですが、巷のレストランでうちはビーガン用のものをそろえておりますとか、うちはハラールのものしか出していませんっていうのはありだと思うのですが、スポーツの特にオリンピック村みたいなところでおもてなしをする側としては、オリンピック村の中で一体どのぐらいまで提供するのが良いと先生ご自身は思われますか。結局フードファシズムってここの勉強会でもやったことがあると思いますが、どんどんそういうものが出てきてしまうので、一体どこまで提供する側は、特に外の飲食店ではなくて、オリンピック村みたいなところで線引きをするとしたらどんなところなのかなというのをちょっと興味持ちました。
A10.
  • 国を代表して戦いに来ている選手のコンディションを維持するためには、当然のことながらハラールのような宗教上のニーズや、ベジタリアン、グルテンフリーのように各国のアスリートの間でニーズの高い嗜好、また、アレルギーや健康上必要な対応(乳糖不耐症)にも柔軟に応えていく必要があると考えています。
    選手村に来るとアスリートたちはごちそうが食べたいわけではなくて、日常自分の国で食べているものを食べたいだけなので、そういう意味では、決して贅沢でも特別なことでもなく、世界の人が集う場所では当たり前の対応なのではないかと思います。
Q11.どうもありがとうございました。私はラグビーとかサッカーの選手が何でもガンガン食べているのだと思ったら、ダイエットに気を使っているっていうのはちょっと驚きました。最初のサッカーとかラグビーの選手はなぜそんなに気にするのですか。
A11.
  • 一つは定期的に体重や体脂肪率を測定しますので、選手からするとその値が増えていると、何となく調整が上手くいっていないような気になるようです。なかには、体脂肪が少なければ少ないほどスピードが出ると思い込こんでいる選手もいます。
    あとは、若い男性なのでかっこよく見せたいといのも理由の一つです。
    また、監督によっては体脂肪率が何%以下じゃないと試合に出さないという場合もありますので、選手は当然、必死で太らないようにします。
  • 質疑応答
Q12.それとは話が違うのですが、陸上の長距離の女性の選手が無月経で非常に問題だという話を昔聞いたことがあるのですが、最近そういうことが言われ始めてから、女性の体に対するケアという考え方から、食に対する注意というのはされてきているのでしょうか。
A12.
  • 私は実際に女性アスリートをサポートする機会が少ないのですが、日本は欧米に比べてアスリートに対するケアが遅れていると言われています。東京オリンピック・パラリンピックと2020年以降を見据えて、今、国を挙げて女性アスリートの競技力向上のための支援が始まっており、ここ数年、女性アスリートに特化した勉強会や指導者の育成などが行われています。
Q13.カルシウムの必要量のところで、これは別にスポーツ選手じゃなくても、日本でも今食事摂取基準が3段階あって、どれをお勧めしたらいいか全くお手上げ状態なんですね。しかも、どのぐらいカルシウムが足りていないかを見る方法が一つもないんです。スポーツ選手は個別で一人ひとり細かく食事記録を付けながら血液検査とか排泄物のカルシウム量を取ったり、汗や呼気分析をしたり、いろいろそういう科学的なことのお世話になれるけど、一般の人は全くそんなことはないんですよね。だから、やっぱりまだ日本の栄養学は非常に遅れている。
一方では、やっぱり分子栄養学に走っていて、例えば動脈硬化学会に行っても、糖尿病学会に行っても、細胞の話と薬の話ばかりなんですね。で、実際毎日患者さんにどうやって食事をしたらいいかなんていうことに興味を示してくださる先生がいないので、本当にそういう意味では私たちと言うか、私もそうですが、食生活指導そのものをこれからどういう方向でやったらいいかというのを考えなければならないと思います。今回のオリンピックはそういう意味では非常にいいチャンスでもあり、モデルケースでもあります。さっきのオーガニックだとかグルテンフリーだとか、日本人はもともとお麩という大事な宗教上の食物を長いこと食べていたわけですよね。で、いきなりお麩は駄目だみたいな話になっちゃって。それもおかしいなと思うので、ぜひこの機会に、オリンピックの食生活に少し光を当てていただければいいなと思って今日はお話を伺いました。どうもありがとうございました。
A13.
  • ありがとうございました。
  • 質疑応答
  • 質疑応答
Q14.私もWebを見てみたら、このアスリートの食事にというのに関連した記事を見ました。その説明が非常に分かりやすくて、私たちにすごく参考になるものでした。先ほどのIOCの合意声明にしてもすごく分かりやすい。だからこれ、例えば水分にしても、ビタミンにしても炭水化物にしてもタンパク質にしても、どういう役割でこうっていうのが分かりやすくまとめられていたので、そういう意味では何もアスリートだけじゃなくて、一般の人にも参考になりますよね。例えばスライスチーズ、私、自分で量ってみましたら、これメーカーによって違うのかもしれませんが、1枚18gだったんですね。1枚18gのスライスチーズ、今日のスライドに「30gから45gのスライスチーズ」というのがにありましたが、18gって言うとちょっと中途半端で、2枚だと36gだしとかって考えたりしました。そういう意味ではすごく分かりやすい。参考になりました。
A14.
  • ありがとうございます。スポーツをする人の食事と一般の人の食事の違いについて聞かれることがあるのですが、今おっしゃった通り、アスリートの場合は、いつ、何をどれぐらい食べればよいのかが、とても明確です。選手たちにも明確に伝えないと納得はしてもらえません。
    ですので一般の方に食事の話をする際には、アスリート向けの伝え方を取り入れると分かりやすいのかも知れないと、今、伺っていて思いました。
  • 質疑応答
Q15.私のお願いはとても簡単な幼稚なことなのですが、先ほどからカルシウムのところがとても気になっていたんですね。それでやっぱりスポーツの方たちもそうですが、高齢になると、何か隣近所がカルシウム不足で、やれ捻挫したの、やれ骨を折ったのなんていうことが多いのです。それでいつも私は生徒さん方にいかにカルシウムが大事かというのを言い続けているのですが、ここに書いてあるチーズの量なんかも本当に少なすぎる気がしますが、選手村でチーズなどもお出しになるでしょうが、これはどこ産のチーズなのでしょうか。スイスもあれば日本もありで、それは何か決まりがあるのですか。スライスしたチーズなんかがとても魅力的にきっと選手の方たちは召し上がると思うのですが、そういうプレゼンテーションなんかはご担当の方がいろいろ工夫をなさっているでしょうけれども、主としてやるのはどの部署なのでしょうか。ぜひ少し日本のものをアピールして、選手の方たちがゲットなさって、知識としてお帰りになるといいなという気がつくづくいたします。
A15.
  • 選手村食堂に関しては、大手のフードサービスの会社の方が担当されますので、おそらく過去のメニューをベースに日本らしさも取り入れながら、工夫をされるのではないかと思います。
  • 質疑応答
  • 質疑応答

1 2 3 4