第98回 牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

過去の国際大会におけるメニュー

ここからは、過去のオリンピックの選手村食堂でどのようなものが提供されたのかについてご紹介します。
これらの情報は、オリンピックに帯同された国内外のスポーツ栄養士や、大会の専用ホームページに掲載されていた情報を参考にしています。
2015年ロンドンオリンピックが開催された時の食事は、8日間サイクルで、地域別に、「Africa & Caribbean」「Europe, The Americas & Mediterranean」「India & Asia」「Best of Britain」の4つのコーナーに分かれていたそうです。
ロンドンの場合は、「Best of Britain」が非常に充実しており、このほか、宗教(ハラール)やベジタリアンなどの嗜好に配慮した食事も用意されていました。また、常設コーナーにはパンやシリアル、サラダバー、牛乳・乳製品、果物とドリンク類なども用意されていたようです。
ロンドンに関しては実際にオリンピックに参加した関係者や選手から、食事は充実していたと聞いています。

オリンピックの選手村の食事は、世界のスポーツ栄養の専門家で構成される団体が監修を行い、選手にとって必要なメニューが提供されていたかどうかの評価を行っています。
それによると、ロンドンでは持続可能性に配慮し、人や動物、アスリートの健康に良いオーガニックの食材が多かったそうです。当然のことながら、東京オリンピックでも持続可能な食材の提供が求められていますが、全ての食材を環境に配慮したオーガニックで賄うことは、現実的に難しいです。

一方、リオデジャネイロオリンピックは、「Pizza & Pasta」「International」「Asia」「Best of Brazil」の4つのコーナーに分かれており、ロンドンと比べて脂っこいものが多く、あまり良い評判は耳にしませんでした。また、選手や栄養士を困らせたのが栄養表示やアレルギー表示です。実際に提供されている料理とエネルギーや脂質の量が違っているのではないかと、複数の関係者が話していました。

東京オリンピックでは、過去の大会における選手や関係者の食事に関する要望を改善していけば、かなり評価は高くなると思います。中でも、グルテンフリーの食材や料理は、ロンドンオリンピックとリオデジャネイロオリンピックで「バリエーションを増やしてほしい」という要望が多かったため、小麦に含まれるグルテンを除去した美味しいパンやパスタを提供できると、相当評価は高くなるのではないでしょうか。

過去の国際大会におけるメニュー

牛乳・乳製品について、リオデジャネイロオリンピックで提供されたものについて、もう少し詳しく見ていきましょう。
牛乳に関しては無調整乳、無脂肪乳、それと最近のトレンドとして動物性の牛乳を飲まずにアーモンドミルクや、豆乳を好んで飲む選手が増えています。今日お集まりの皆様にとってはあまりいいニュースではないかも知れません。また、ヨーグルトに関しては、全脂ヨーグルト、いろいろなフレーバーが付いているもの、プレーンのもの、あとは何と言ってもギリシヤヨーグルトがブームです。

アスリートの間で話題の低FODMAP食事療法

これはあまり牛乳・乳製品とは関係がないのですが、先ほどグルテンフリーの食材や料理を求めるアスリートが多いとお伝えしましたが、グルテンフリーの次にアスリートの世界で注目されているのが「FODMAP」という食事療法です。
慢性的な腹痛や腹部不快感、便秘などが続く「過敏性腸症候群」の症状を和らげる食事療法のことを指し、腸内で発酵しやすい(消化・吸収されにくい)糖類を控えることで症状が和らげられるというものです。具体的には、オリゴ糖、二糖類、単糖類、糖アルコールを含む食品が対象で、従来体に良いと言われてきた食品に多く含まれます。
グルテンフリーは、テニスプレーヤーのノバク・ジョコビッチが体調不良を改善するためにグルテンを含む食品を除去し、体質改善に成功したことが大きく取り上がられたのがきっかけで話題になりました。
欧米では、近年、腸の不調を訴える人が多く、また、パフォーマンスとの関係についても研究が始まっているため、アスリートも健康上のメリットを期待して、グルテンフリーやFODMAPを取り入れているのだと思います。

2014Commonwealth Gamesにおける人気メニューと栄養相談内容

国際大会における牛乳・乳製品に関わるところで、今、牛乳よりも豆乳やアーモンドミルクを好む選手が多いという話をしましたが、その一方でスムージーも依然、人気が高いです。運動が終わった後の「リカバリー(回復)食」という言い方をしますが、牛乳やヨーグルトにフルーツを入れたり、野菜と果物だけでグリーンスムージを作ったりします。
オリンピックの選手村食堂でもスムージーは提供されており、ものすごい人気だったそうです。自分たちでプロテインを持ってきて、スムージーに混ぜて作ってほしいなど、いろいろなリクエストがあったようですが、衛生面やドーピング禁止物質の混入を避けるため、選手が持ち込んだものは一切入れないことになったと聞いています。
アスリートたちの間で、スムージーは依然、手軽に必要な栄養を摂るための人気メニューですので、子どもたちに牛乳を飲んでもらう方法の1つとして、スムージーはお勧めかもしれません。

アメリカ・オーストラリア・日本の比較

限られたデータの中からですが、日本と海外のスポーツをする人のカルシウムの必要量の比較について見ていきたいと思います。

国別スポーツをする人のカルシウム必要量

一番上が日本人のアスリート対象で、2つ目がスポーツをする日本の小・中学生のカルシウム必要量を示したものです。
現在のところ、アスリートに関して日本スポーツ栄養協会では「日本人の摂取基準を下回らないように」と記載しています。これは、種目や運動量などによって個々に必要量が異なるためです。
運動をすると、その分多くのエネルギーが必要となり、また、そのエネルギーを効率よく作り出すために、多くのビタミンやミネラルが必要だということは分かっています。しかし、具体的な必要量に関しては示されていないのが現状です。

3つ目のアメリカのデータを見ると、アメリカ栄養士会では小・中学生の男子の推奨量は1,000mgから1,300mgぐらいですので、日本に比べると少し多いようです。小・中学生の女子の場合も男子と同じですね。成人の男子と女子の場合は、小・中学生の推奨量よりも若干少なめです。
アメリカスポーツ医学会の基準では、先ほど話をさせていただいた「利用可能エネルギー不足」のアスリートの場合、1日1,500mgのカルシウムを摂らなければならないというガイドラインがあります。

4つ目はオーストラリアのスポーツ栄養士で構成されるスポーツダイエティシャンオーストラリアが設定している12歳から18歳までのスポーツをする人のカルシウム必要量です。
このように比較してみると、海外の方が日本よりもカルシウムの推奨量は若干多いようですが、個々に合った必要量は、食事調査や血液検査、骨密度の測定結果などを参考にしながら、微調整しているのが現状です。
データに関してはここまでです。

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