第96回 牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

Q11.動物福祉、アニマルウェルフェアというのが最近EUでもすごくうるさく言われてきているという話をいろいろ聞いています。それで例えば鶏なんか平飼いをするのがいいと言われていますが、実はそれを日本でやろうとすると衛生面で問題があるのではないかとか言われているのを聞いたりしました。
お伺いしたいのは、具体的にこのデンマークの場合で結構なのですが、20ページと21ページにあるように、環境保全ということと動物福祉の規制が断続的に厳格化されていて配慮が求められているという件で、それぞれ具体的にどのような項目のようなものが求められているのか、ちょっと具体例をお教えいただければと思います。
A11.
  • アニマルウェルフェアでは豚のところはお話をしましたが、母豚には自由に動けるスペースを確保したり、と畜の際には苦痛がないような方法でと畜されます。また同じ空間で豚を飼うと、強い豚が弱い豚のしっぽをかみ切る恐れがあるので、子豚のうちに断尾するのですが、麻酔せずに断尾することを禁止しています。このように一定の条件を満たした豚肉などには動物福祉の基準をクリアしたことを証明するラベルを貼ることができます。
  • 質疑応答
Q12.26ページのオーガニックの比較のところで、オーガニックと言っても国とか物品によって定義が違うと思います。この場合のオーガニック牛乳というのはどのような定義なのか教えていただければと思います。
A12.
  • アーラフーズのホームページによると、オーガニック牛乳には主に次のような定義があります。
    ・牛は放牧が義務(一般の牛乳はオプション)
    ・放牧期間は4月15日より11月1日まで行い、最低6時間の日照時間で放牧する(一般の牛乳は6ヶ月の放牧だけが義務づけられている)
    ・1頭あたりの放牧面積:0.1~0.2ヘクタール(一般の牛乳は定義なし)
    ・牛舎における1頭当たりの面積:6㎡(一般の牛乳は定義なし)
    ・エサは、飼料に関する法律に則り、かつ100%有機栽培により生産された飼料(一般の牛乳は飼料に関する法律に則った飼料を用いる)
    ・投薬後、出荷を停止する期間:薬品により求められる期間の2倍(一般の牛乳は薬品により求められる期間)
    ・出産後1日間は子牛は母牛と同じスペースで飼育(一般の牛乳は定義なし)
  • 質疑応答
Q13.35ページで、3つほど先生が課題として挙げられているのですが、特にデンマークを参考にしているということですが、デンマークでは一元化されたデータ管理及び活用というのは、具体的にどのようなことをしているのでしょうか。
また、先ほど実動労働時間が後継者にとって問題と言うか、長く働くのが嫌がられているというお話だったのですが、例えばITの活用などによって実際にデンマークでは実動労働時間が減っているのか教えていただければと思います。
A13.
  • データ管理をするとどれぐらい労働時間が減るかについては、現地で調査しておらず、十分にお答えができません。
    データベースの活用についてですが、デンマークでは、飼養されているすべての牛の乳量、乳成分、体細胞数、飼料給与状況、飼料単価、乳価、繁殖記録等といった記録がデータベースとして保存されています。また、話を聞いて印象に残っていることは、全国の牧草地までデータベースが構築されていることでした。たとえば、自分の地域名を入力すると、その地域ではどういう種類の牧草を、どういう組み合わせで捲くのがよいかということが瞬時にわかるようになっています。恐らく日本の農家も経験では分かっていると思うのですが、地域名を入れるだけでベストバランスの草の種類や割合も分かり、時間の短縮になるということがあります。
  • 質疑応答
Q14.非常に個人的な興味なのですが、韓国に何回か行かれて韓国料理をたくさん召し上がっていると思うのですが、そこに牛乳が使われている料理があったり、注文すると牛乳を持ってくるとか、牛乳はどの程度韓国に溶け込んでいるのでしょうか。
A14.
  • 韓国の宮廷料理で、お粥に牛乳を混ぜる「牛乳粥」という料理があるそうです。話がそれますが、日本ない牛乳文化として、銭湯に行く人が、浴室に牛乳を持ち込んで飲む習慣があります。今もあるかどうかわかりませんが30年前は一般的でした。銭湯に行く時の必需品といえば歯ブラシと牛乳なのです。湯船に浸かって牛乳を飲みます。日本でも「銭湯で牛乳」という習慣がありますが、飲むのは風呂上がりですね。それから、普段の食生活の中で子どもの加工乳はとても定着しています。
Q15.韓国では給食で牛乳は飲みますか。
A15.
  • 飲みます。給食は今だんだん無償化の傾向があり、小中学校は大体無償化なのですが、高校もこれから無償化しようということです。あとは有機とか環境保全型特別栽培も使おうということで、そちらは日本よりも進んでいますね。食育をしっかりやろうというところはあります。
Q16.先ほどオーガニックの話が出ていたのですが、最近日本でもイオンがビオセボンっていうのを展開して、本格的にオーガニックの製品をスーパーマーケットみたいな形で展開していますが、このあたりは日本はどんなふうに展開されるのでしょうか。
A16.
  • 日本はきわめてオーガニックの勢いが弱い国だと思います。今やEUでは市場規模が4兆円近くで、アメリカでは5兆円近く。これに対して、日本が今1,800億円ぐらいだそうです。有機農業の取組面積は、全耕地面積の0.5%程度といわれています。
    今ちょうど農水省の食料・農業・農村政策審議会のなかに、果樹・有機部会がありまして、世界の潮流としてオーガニックマーケットが急激に増えるなかで、どうすれば日本でもマーケットを広げられるかという議論をしています。なぜ、海外の動きとは対照的に、日本ではなかなかマーケットが広まらないのかということも議論のひとつに入っています。日本では産物と一言でいっても、有機JASの認証を取得したものと、認証を取っていない有機がある。また、特別栽培農産物があり、さらにはエコファーマー農産物があるといったように、安全性を唄う農産物といっても、さまざまな定義、コンセプトの農産物があり、消費者にはわかりにくい。これが市場規模が小さく留まっている要因のひとつではないかという意見が出されました。JAS有機の認証が始まって20年近く経ちましたが、一般消費者に聞くと、有機よりも「無農薬栽培」がもっとも安全性が高いという意見が多いそうです。このため、いろいろある基準をある程度整理したほうがいいのでという議論もされています。牛乳に関しては、有機で生産されたものは少ないと聞いておりますが、日本でどれぐらいあるかご存じの方はいらっしゃいますか。
    ちなみに、先日、東京でおこなわれた「北海道チーズ展」に行った時、かなりの数のチーズが紹介されていましたが、有機チーズはわずか1種類だけでした。
  • --日本乳業協会から回答--
    正確なことは覚えていませんが、オーガニックは餌から始まるので、まず食べさせる飼料は、多年生作物の場合は3年間化学肥料と化学農薬を与えないとか、そういった基準があって、濃厚飼料も含めてとなると、そういう飼料を調達するのは難しいという問題があります。
    あとは放牧地とか草地も一切化学肥料と化学農薬を与えないで3年間(注:多年生牧草の場合は2年間)過ごさなければいけなくて、その間に相当収量が落ちてしまいます。乳の量もそれに合わせて落ちますので、その期間持ちこたえられるかという非常に厳しい課題があます。それでなかなか増えない面があるという気がします。何社かやっていますが、あまり増えていません。
  • 質疑応答
Q17.多分、有機と普通のものとで味がすごく違うなら売れると思うのですが、多分目隠して食べたら分からないから無理だと思うんですね。やっぱり普通に旬のものを食べればそれなりに減農薬じゃなくても普通においしいので。農水省は農家の収入を上げようとして有機に力を入れたいのだと思うのですが、あまり成功しないのではないかと思っています。だから牛乳で有機がどれぐらい日本で売れるでしょうか。今、牛乳は日本だとやっぱり150円から200円ぐらいの1Lパックが有機だと多分300円ぐらいになっちゃうと無理だろうなと。価格的に厳しいかなと私は思います。
A17.
  • そうですね。牛乳は毎日飲むものなので、消費者として価格に敏感になるのは仕方ないと私も思います。私も一時低温殺菌の牛乳を飲んでいました。味は明らかに違い、おいしいと感じました。ただ、280円とか300円となると、継続的に買い続けるのはむずかしく、通常の牛乳に戻りました。ミルクのおいしさがストレートに感じられるので、飲みたいとは思うのですが。有機の場合、通常の牛乳と明らかに違うというより、生産方法に対してどこまでその価値観を共感できるかということになり、伝え方に工夫が求められるように思います。
Q18.お話を聞いていて有機栽培の野菜はいっぱい食べる人がいてもつかどうかという話だったのですが、うちの娘が連れ合いの転勤で今上海に暮らしておりまして、もう10年目ぐらいになっているのですが、食材を集めるのに心配ではないか、親の方が日本で心配していたんです。そうしたら日本人社会で、日本人が向こうで無農薬野菜を作っていて、それを日本人相手に売ってくれるから大丈夫よと。どこまで大丈夫かは分からないのですが、そういういう形で自衛を図っていたみたいです。
今日お話を伺っていて、動物福祉の話と、ついこの間もありましたが、豚コレラでの殺処分という言葉。この言葉二つが成り立たないって言うか、並立するのがとても不思議な感じがして。もしデンマークで豚コレラみたいな、あるいは鳥インフルエンザみたいなそういう病気が起こった時は、どういう処置をなさるのでしょう。
A18.
  • 家畜伝染病と動物福祉は切り分けて考える必要があるように思います。殺処分される家畜の映像は確かに見ていて心が痛みますが、蔓延を防ぐには他に方法はないのではないかと思います。
    動物福祉についてですが、基本的にはできるだけ快適な環境で、良質な栄養を与え、苦痛やストレスのない状態で飼育すべきだという考えに基づいて飼育や処置をしようという概念です。
    早くから動物福祉に着目し、現在も先進国として厳しいルールが敷かれているのはEUです。1960~1970年代から動物福祉の重要性を訴え、1990年代に入り、次々と法制度を作りました。EUでは一定の要件を満たす農家に補助金が支払われますが、動物福祉の遵守も支給の条件のひとつになっています。
    日本では、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの選手村等で提供される食材の調達条件のひとつとして、「動物福祉の考え方に対応した飼養管理がされていること」が明記されました。つまり、オリパラの食材としての条件を満たすには動物福祉への対応が求められるようになりました。
    こうした考えが打ち出される前から、日本でも多くはありませんが、動物福祉に配慮した飼育方法を実践している畜産農家がいます。そのひとつの養豚場に行ったことがあります。養豚場は、動物福祉の考え方に基づいた設計になっていました。たとえば、出荷直前の豚がいる豚舎には、自動的に豚の体重を測る「オートソーター」という装置がありました。豚1頭だけが通れる大きさで、床が体重計になっています。もし出荷に適した体重であれば、自動的に扉だけが開く。基準以下であれば、再び給餌の部屋に通じる扉だけが開く。多くの豚の中から取引先が求める体重の豚だけを探し、その豚だけを出荷のための部屋に追い込むのは豚にとってもストレスになる。このストレスを軽減する装置でした。
     もう一つが「フリーストール」というものです。母豚は人工授精から妊娠・出産までの期間、ストールという柵で過ごすのが一般的です。しかし、この養豚場では、人工授精後から出産1週間前までは、一定のスペースで群のなかで飼育されます。自由に運動もできるわけです。ただ、こうした動物福祉の取組によって、豚肉に付加価値が付くのかというとまだそこまで行っていません。もし、消費者が動物福祉は望ましいことだから、実践している農家の豚肉であれば、100gあたり150円が200円になっても、「ぜひ買おう」となれば、多くの農家が前向きに取り組むのではないかと思います。単に生産者だけに動物福祉を求めるのではなく、消費者の理解や支持があってこそ広まるように思います。
  • 質疑応答
Q19.さっきのオーガニックやアニマルウェルフェアの話と関連して、乳脂肪分の違いで。いろいろな商品が売られているとありました。27ページの方ではオーガニック牛乳は買い取り価格に上乗せされるとありました。例えば消費者が選択する時に、オーガニックとか、ちゃんと環境規制を守っていますよとか、動物福祉をちゃんとやっていますよとか、そういうマークがあって、何か選択できるようになっているのか。そして価格には反映されているのかお伺いしたいのですが。
A19.
  • オーガニックは確かオーガニックミルクとパッケージに表示されておりましたので、誰が見ても分かると思うのですが、動物福祉とか環境に関しては、表示そのものはなっていないと思います。また、動物福祉を遵守しているからといって小売価格に転嫁されるということもありません。ただ、EUの共通農業政策のなかで、動物福祉を遵守することが、農家に支給される直接支払いの条件の一つとなっているので、消費者が負担をするというより、政府が負担をしているという考え方だと思います。
  • 森永乳業株式会社 東倉執行役員からのコメントへ

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