第96回 牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

Q1.とても本当に素晴らしい講演をありがとうございました。本当に韓国の話を聞いて、確かに日本もこれからこうなるなというので、すごく牛乳・乳製品ということを考えるのに勉強になる内容でした。また、デンマークはデンマークで確かにそうかと。デンマークって福祉国家のイメージで、農業も、動物福祉も頑張っていると伺うと、なるほどと思いました。ただ、この牛乳がアーラ・フーズ1社独占というのは驚きました。日本はいろいろな牛乳があって当たり前だったので、むしろデンマークもそんな感じかなと思っていたのですが、そうじゃないというのは意外な感じがしました。
あと、日本の生産者が減るというのは、規模を拡大しなければしょうがないなと思っていたのですが、この生乳の生産量も一緒に減っているというのは非常に問題だなと思うので、ここを何とかできないかなと、確かにおっしゃる通りと思いました。
1点教えてほしいのですが、乳牛1頭あたりの年間乳量で日本が8,000kgとありますが、何でこんなに差が出るものなのですか。
A1.
  • 私も日本の酪農の生産性は国際的にも成績が高いと思っていたのですが、まだまだ上には上があるようです。これは酪農に限らず、トマトなど野菜の生産においても、同じことが言えるようです。
  • 質疑応答
Q2.お米もそうですものね。確かに、飼料管理にこだわって、無理に量を搾らないというのも何かこだわりがあってということもあるのですか。
A2.
  • そうですね。北海道の農家に行った時のことですが、飼料の多くを粗飼料にして、濃厚飼料はわずかという牧場がありました。年間に牛1頭当たりの搾乳量は5,000~6,000kgでした。牧場主の話を聞くと、牛の健康を考えてそうしているとおっしゃっていました。無理して多く搾るのではなく、適量を搾り、牛には長生きをしてもらうといった飼い方を心がけていると言っていました。もっとも、多くの牛乳を搾っている牧場であっても、牛の健康に配慮しているところも少なくありません。
Q3.韓国でチーズの消費が急に増えたという話がありましたが、もともと韓国国内のチーズの生産というのは一定程度あったのでしょうか。輸入品が増える中で、国内の生産についてはどんな影響があったのでしょうか。
A3.
  • 輸入が増える前は、やはり一定程度ありました。スライスチーズとかさけるチーズとか、日本とほとんど同じような形のものを大手の乳業メーカーが販売しています。ただ、それはどちらかというと家庭用商品を普通に家庭で食べるという消費で、今韓国で伸びているのは外食で使っている、とけるチーズタイプです。その外食で増えている部分が、輸入物によってまかなわれたのかなと思います。
    国内乳業メーカーもそれをよしとしているわけではなくて、自分たちもこだわりのある乳製品を作りたいということで、牧場の名前を冠したチーズなども作り始めているようです。
  • 質疑応答
Q4.ありがとうございました。いろいろと興味深く伺いました。同じようなチーズの流れでお尋ねしたかったのですが、韓国のチーズを私はあまり存じませんのですが、パッと見た感じではいかにもトロリと溶けて、熟成が短くて万人向きみたいなチーズがたくさん使われているようですが、韓国でも山のチーズ的なものとか、熟成の長いチーズとかはあるのでしょうか。日本はずいぶん上手になって、立派な山のチーズがたくさん世界的な賞を取っていますが、韓国のチーズ界はどうなのでしょうか。
A4.
  • 十分に売り場をこまめに見ておりませんので、間違ったことを申し上げるかもしれませんが、やはりこだわりの牧場ブランドの熟成チーズは、日本ほどはまだ発展していないのではないかと思います。とにかくチーズそのものがこんなにおいしいのだということを消費者が知った段階で、辛い韓国料理にチーズを加えることでひと味違った料理になり、それはそれでおいしいねっていう評価になっている段階だと思うんです。
    ただし、韓国の人たちの、日本の6次産業化に対する勉強意欲というのはすさまじいものがございまして、もう毎月のように毎日のように日本に来たり、北海道でチーズづくりを勉強したり。私が知っている酪農家は、娘さんを北海道に研修に出してチーズづくりを覚えさせて、今韓国に戻ってチーズを作って、牧場発のチーズとして売っています。早晩日本のように国産のもの、また自分の農場の生乳を使った熟成チーズを作るという文化が生まれるのではないかと思います。
  • 質疑応答
Q5.大変面白いお話をありがとうございました。韓国のチーズの話も出たのですが、消費者はこういう国産がどんどん減っていくこととか、6次産業化みたいな商品が出ることへの関心は高まっているのでしょうか。
もうひとつ、デンマークでアニマルウェルフェアを熱心にやっていると思いますが、スーパーカウのように、あまりに乳を出させるためだけの酪農はアニマルウェルフェアではないという話もあり、これだけ乳量が多いって、多分ニュージーランドとかオーストラリアは放し飼いみたいなのでそんなに多くないと思うのですが、牛舎に入れてガンガン乳を出せみたいな感じだったら、ちっともアニマルウェルフェアではないと思いました。
A5.
  • 後半の方は私も存じないので、今後勉強させていただきたいと思います。一番目の質問の韓国の国産志向なのですが、私が見る限り、日本の方が国産志向は高いと思います。
    韓国も一時1995年ぐらいにWTO体制になって、輸入農産物がドッと入ってきた時に、身土不二、そして国産愛用運動ということが非常に広まりました。消費者が身土不二という自分のところのものを自分のところで食べようという地産地消運動を、国を挙げて行いました。こうした背景があるので、韓国は国産志向が高いと私は思っていたのですが、やがて食の西欧化が進んだり、輸入農産物が増えたりして、輸入品もなかなかおいしいという評価が広まってきたように思います。輸入品が増えた点は日本も同じですが、日本ではそういうなかでも「国産がやっぱりいい」とか、「地産地消を大事にしよう」という人は一定程度います。私は日本の方が国産志向が強いと思います。
  • ただ、先ほどのご質問にもありましたが、韓国でも国産の良さを打ち出す製品が開発されれば、あらためて、国産の良さを再度見直そうという動きがでてくるかもしれません。日本がそうであったように。私は国産チーズにこだわりたいとか、この地域の、この牧場のチーズを食べることに価値を見いだすという時代が来るかもしれません。
  • ただ、全般的には例えばFTAによってチリ産のブドウが増えて、国産のブドウが若干減ってしまったりとか、あるいはアメリカのチェリーが、こんなにおいしいものがあったのかということで、みんなどんどんチェリーを食べて、他の果物の消費が減ったりしています。
  • 質疑応答
Q6.韓国は生まれたらキムチを食べさせるとか、食育をやっているという話を聞いていたので。でもそれは理想であって、現実はガンガン変わっているんだなというのを興味深く伺いました。
A6.
  • キムチが嫌いと言いましたが、今でもお母さんたちは小さい子にキムチを洗って食べさせて、徐々に慣れさせてというのをやっているとは思うのですが、ハンバーグとかピザとか、そういうものの登場によって、多少食生活が変わってしまっているようですね。
Q7.日本の酪農の弱みというところで、慢性的な後継者・担い手不足って、これはもう当然と言いますか、よく分かることなのですが、韓国の酪農家が抱える課題のところを見ると、韓国の場合の後継者問題はどうなっているのでしょうか。
A7.
  • 韓国の後継者問題は深刻です。本日は、後継者不足については触れていません。韓国の農業全般でみると、日本と同じように高齢化が進んでおり、後継者不足は深刻です。このため、日本でも導入していますが、就農して間もない若者の所得を補填する政策を導入しました。確か、年100万円ぐらいを所得補填金として提供しています。そうしたこともあり、脱サラをした人が農業を始めるという動きが出てきました。韓国では、田園回帰が日本以上に進んでいます。ただ、この人たちがすべて農業をやっているというわけではなく、都会で身につけた技術とかノウハウを生かして、それを農村に持ち込んで、起業するという人が増えています。今はなくなったのですが、農業大学校や専門学校に通った子は兵役も免除して、農業後継者を増やそうということもしていました。それぐらい後継者難だということでしょう。日本でも同じですが、若い就農者への所得補填によって、就農者が増えるかどうかを見極めるには、今後の動きをみる必要があるでしょう。
  • 質疑応答
Q8.最後に弱みをカバーしていくための課題ということで挙げられた3つですね、ここのところが実は日本は非常に不得手なところではないかと思っています。
例えばこの一元化されたデータ管理及び活用というところですが、例えば消費者問題に関する緊急の相談に応じるようなシステム、あれも実は日本では私は決してうまく行っていると思わないんですね。というのは、つまりITの利用にしても何にしても、非常に全国がバラバラで、一元化して全国で共通のシステムを使おうということがとてもうまく行っていない国だと思うんですね。それに対して韓国は今、マイナンバー制度にしてもすごく徹底してやられていて、あるいは一般の国民のパソコン利用に関する教育は徹底的に行われていて、そういう意味では、韓国は日本よりもはるかにこの点で進んでいると思っていて、そういう意味では、この最後の3つというのは、実はこれは課題と言うよりも、日本の弱みなのではないかと。本当にこういうことが解決されるのだろうかというのが、私はお話を伺った上での感想です。
A8.
  • おっしゃる通り韓国は、トップダウンでものごとが決まることが多いので、酪農の課題に対しても、現状を打開するような対策が今後、トップダウンによって採られるかもしれません。ただし、韓国の農業関係者によると、韓国の農業予算は日本に比べて少ないそうです。そのせいか、韓国の農業者たちが日本に視察などで来ると、日本の農業者を見てうらやましいと言います。補助金頼みの農業は見方に寄れば、弱みになってしまうかもしれませんが、いろいろな分野で助成金が出たり、貿易自由化の影響を最小限で抑えるための保護策がとられており、韓国の農家にすれば、うらやましく映っているのは確かです。
Q9.韓国の話が面白かったのですが、白い牛乳が85~86年で伸びていますよね。倍増ぐらいになっていてすごくびっくりしたのですが。これは政策とか、政権があの頃軍事政権から変わったとか、そういうことで政策なのでしょうか。急に牛乳を飲むように、85~86年のところですね。それだけ急増してちゃんと間に合うような状況だったのかなって。これだけ酪農家が減っているっていうのがその前ぐらいからありますが、その前は結構酪農家の数は多かったんですよね。多分小さいところがいっぱいだったのかもしれないけれども。
A9.
  • 1980年代に韓国経済が大きく飛躍したこと、学校給食が1980年代初頭から始まったこと、また同年代半ばから、生乳生産の川上から川下までコールドチェーンによる物流が整備されたことにより、需要が急速に伸びたようです。
  • 質疑応答
Q10.白い牛乳がすごく急速に伸びているので面白いと思いました。あと、日本でも問題になっている飼料は輸入物が多いのですか。
A10.
  • 日本とほぼ同じで、全面的に輸入に頼っていると思います。飼料の価格を日韓で比較したことはありませんが、以前、韓国の柑橘農家が農業資材の仕入れ価格を日韓で比較し、韓国は日本の農家よりも高いと言っていました。日本は韓国に比べれば農家数が多く、ロットをまとめることで価格交渉ができますが、韓国はそもそも農家数が少ないため、ボリュームディスカウントができないので、同じ輸入依存型の農業であってもコストがかさむと言っていました。

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