第96回 牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

韓国の消費について

消費は活発で、それを牽引しているのはひとえにチーズです。逆に、白い牛乳とか発酵乳とか加工乳というものは、そんなに伸びていません。むしろ少し、白い牛乳あたりは消費の低迷が心配されています。韓国のドラマを見られる方はご存じかもしれませんが、実は韓国というとバナナ牛乳とかイチゴ牛乳とかチョコ牛乳というのが子どもたちの大好きな飲み物でして、そういったものが加工乳を支えてきたのですが、そちらも少子化・高齢化ということがあるのでしょうか、さほど伸びていません。唯一頑張っているのがチーズです。

FTA締結国からのチーズ輸入増加

そのチーズの状況ですが、輸入が実際に増えています。折れ線グラフの青い線がチーズの総輸入量を表していまして、今11万tぐらいまで増えてきました。FTA締結前は6万tなので約倍の量になっています。2011年にEUとのFTAがスタートし、2012年はアメリカとのFTAがスタートしまして、2014年にオーストラリアとのFTAが、2015年にニュージーランドとのFTAが発効しました。本当に酪農大国と軒並みFTAを結んだこともあり、全般的には輸入が伸びています。

輸入が需要増を支えている

その輸入が需要の増加を支えています。国内の牛乳・乳製品の消費量は非常に活発に推移してきているのですが、それを支えているのは輸入量の増加であることはこちらを見ていただければわかると思います。

チーズの消費拡大の背景

私も実はかねてから何でそんなにチーズを食べるのだろうかと疑問に思っていまして、いろいろな文献を探したり、人に聞いたりして、4つぐらいあるのかなと思います。

一つ目は先ほどの表の通り、FTAの発効に伴って如実に関税が下がってきたということがあるかと思います。

二つ目は生乳価格連動性の影響。下に小さく書かれていますが、政府が一定の関与をして、生乳価格を維持していこうという制度です。統計庁というところが、前年度の生乳生産コストと、それと消費者物価上昇率を勘案して、生産コストが少し高くなっているから、来年から生乳価格はこれぐらいにしましょう、というような、官製価格に近いやり方になっています。ただ、これは乳業メーカーから評判が悪く、脱脂粉乳などの在庫量を反映したものではないので、前の年に在庫量が積み重なっていても、また次の年に生産コストが上がっていたら生乳コストを上げようという形になってしまっていて、需給バランスが考慮されていないということで、乳業メーカーから反発がありました。ただし、日本も同じかもしれませんが、農家と農林族、政治の方がつながったということもあって、交渉の結果結局これは今も維持されていまして、結果的に何がもたらされたかというと、牛乳以外の乳製品の原料を国産から安価な輸入に切り替えてしまったということで、乳製品の国産離れを引き起こしたのではないかなと思います。

それと三つ目に外食産業が大変チーズを活用していること。韓国料理と相性が非常に良いようです。韓国料理は辛いですよね。唐辛子をたくさん使っています。ところが、最近の若い子どもたちが嫌いなものは何?って聞くと、大体キムチとなっていまして、だんだんと西洋化、食文化が変わっているのです。そこに登場したものがチーズです。チーズは韓国料理との相性が非常に良く、料理の辛さを中和してくれるし、韓国料理を洋風の料理としてアレンジできるというわけです。

四つ目はワインの消費の拡大。これは日本も同じだと思います。

チーズトッポギ チーズチャーハン チーズホットドッグ チーズタッカルビ

たとえばこちらです。韓国料理の典型的な大衆料理でトッポキというお餅に、チーズがたっぷりと掛かっていまして、チーズトッポキというものです。チャーハンの周りにもぐるりとチーズがあります。それと、新大久保とかでも皆さんよく食べていらっしゃる、ホットドッグの中にモッツァレラチーズが入っていて、いかに伸びるかを競うようなお店が日本でも有名になっています。タッカルビという鶏肉の辛いカルビにも3分の1ぐらいチーズが入っているというように、本当に恐ろしく大量のチーズが使われていますが、これは安い輸入のチーズ類によってまかなわれているということです。
韓国は割と変化を求めると言うか、変化を好む国民性でもあって、流行るととってもたくさん流行ります。そういったところがうまくチーズの消費拡大には響いたのかなと思います。

国産生乳のアピールに乗り出す

それを懸念しているのは当然ながら国内の酪農家とか関係者です。国産の牛乳をどうやってアピールしようかということで、「K-MILK」と言って国産の韓国の牛乳を使っている商品とか、それを原料にしている加工品にこのようなマークを付けてもらい、国産を応援していますよということを企業にもPRしてもらい、そのPRが消費者に届けば、農業を応援しているという社会貢献にもつながるということで、2014年に新設されました。2016年末には18社、358の商品が認証を受けています。認知度を高めるために人気歌手に歌を歌ってもらったり、コマーシャルを流したり、YouTubeで動画を流したりしているのですが、「K-MILK」というマークを知っている人は3割程度で、まだそんなには広まってはいないようです。

スターバックスと韓国酪農肉牛協会によるコラボレーション

何とか広めたいと思い、スターバックスと「K-MILK」の認証を始めた韓国酪農肉牛協会というところがコラボして、スターバックスがラテ1杯を販売する度に100ウォンずつ(10円ぐらい)を積み立てて、1億ウォンになった段階で、この協会を通じて恵まれない家庭に牛乳を飲んでもらおうというボランティア活動を行うことで、この「K-MILK」の認知度を高めようということをやっています。

韓国の生産者乳価の推移

こちらはALICの資料ですが、乳価が結果的に上がったという話です。酪農家も減っていて、乳生産量も減っている上に、2013年から価格連動制が始まって価格が上がったのでしょう。これは生産者にとっては良いことなのですが、乳業メーカーにとっては非常に厳しい状況だと言えます。

韓国の酪農家が抱える課題

韓国の酪農家が抱える課題

酪農経営実態調査というものをしているのですが、これは、今後必要な対策は何かという質問を農家に尋ねているものです。
やっぱり予想通りで、国産の牛乳を使った乳製品の市場拡大をしてほしい、乳製品の需要だけが伸びて自分たち、韓国の酪農が発展しないという状況になっているので、国産の乳製品の市場拡大を求めるということ。
そして3つに分かれて硬直化している流通構造を改善してほしいということ。
それと団体給食、これは学校給食とか、韓国には軍隊があり、大口需要者になっていますが、そういったところでたくさん牛乳を使ってほしいということを求めています。

そして環境規制に対する支援。これは、搾乳をした後の水を川に放出してはいけないとか、環境規制が韓国はかなり厳しくなっています。私が韓国の酪農家に質問した時はこれを一番憂慮していました。FTAで酪農ができなくなることは自分は考えていないけれども、環境規制によって酪農をたたまないといけないということを懸念していると。
消費者から、酪農・畜産の環境問題が提議され、糞尿・堆肥の臭いがするというような相談事やクレームがあると、政府としては対応せざるを得ないということで、かなり畜産農家に環境規制をしています。規制が強化される一方で、それを是正・改善するための助成金が韓国の農家にしてみたら足りないということで、環境規制に対する対策費を支援すべきだと言っているわけです。

簡単に申し上げますと、韓国は、消費は非常に活発で、チーズの消費に支えられて、乳製品の需要としては伸びているのですが、そこに国内の酪農がついていっていない、恩恵を受けられていないということ。そしてむしろ規制や政府の施策に対して、十分な対応がされていないということで、農家としては非常に厳しい経営を迫られているのかなと思います。

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