第96回 牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

●韓国における酪農の現状

韓国の酪農のあらまし

韓国の酪農のあらまし

まず韓国ですが、特徴としては、消費が非常に活発で拡大傾向にあるということです。しかし残念ながらその消費拡大を支えているのがほとんど輸入の乳製品です。なぜ輸入が増えたかというと、一つはFTAが発効して、乳製品の関税がだんだん下がっていったということがあります。それだけではないのですが、その結果、牛乳の自給率が低下傾向にありまして、2010年ぐらいから大国とのFTAが発効していますが、発効前の2010年は65%だったのが、2017年には50%ともう少しで半分を切ってしまう状況です。調べたところ、日本の牛乳・乳製品の自給率は60%ですので、まだ日本の方がいいわけなのですが、今後TPPとか、日EUのEPA等々の進展状況によってこれも変化する可能性があると思います。

日本と韓国の農業比較

こちらも少し古いデータで恐縮ですが、日本と韓国の農業をざっと数値で洗い出してみました。大体、日本の農業の半分のサイズと思っていただくとほぼ合っているのかなと思います。国土の面積は日本より3分の1か4分の1ぐらいなのですが、農業産出高が日本は8兆円規模に対して韓国は4~5兆円です。農家の数としては、総農家数なので自給的農家も含めていますが、日本は253万戸で韓国が114万戸です。

日本と韓国の農業で一番違うところが、韓国は専業農家率が高いということです。
かつて日本では兼業農家が多い故に専業農家になかなか農地が集まらず、規模拡大が難しいといわれた時期がありました。それが今では、離農が進みすぎて、むしろ兼業農家がいることで地方の人口が維持されている、兼業農家がいることで地方の衰退が食い止められている部分があるのではないかと私は思っています。

一方、韓国は、農業を除くあらゆる産業がソウル一極集中で、商工業はソウル、農村は農業という形で色分けされます。商工業が発達していない農村では、農業以外の仕事を探しにくいため、専業率が高いのです。

米の消費量は日本と同じようにどんどん減っています。私が留学していた1990年代には韓国ではみんなご飯を丼2杯分食べていたのですが、今では日本と同じぐらいになってしまったというように、食生活は大きく変化しています。

韓国の酪農家数の推移

では酪農の話に移ります。韓国の酪農家数はもう激減していまして、これは日本と同じです。最新のデータでは6,500戸となっています。やはり日本と同じように小さい規模の農家が減っていて、大きい頭数の酪農家が増えています。牛50頭未満の酪農家の数が6,500戸のうち43%、50~100頭未満が37%、そして100頭以上の農家が20%となっており、増えているのはこの100頭以上の農家のみで、だんだんとその集約化・大規模化が進んでいるのは日本と同じかと思います。

乳牛飼養頭数及び生乳生産量の推移

次に飼養頭数と生乳生産量の推移ですが、思ったほど韓国の生乳生産量はそんなに減っていません。あとで日本と比べようと思うのですが、日本の生乳生産量は非常に減ってしまっています。韓国は、酪農家数は減っているのですが、生乳生産量は比較的横ばいで、でこぼこがありますが、規模拡大をしている農家が多いということでしょう。飼養頭数も少し下げ止まっているような形です。いま大体40万頭の飼養頭数に対して、生乳生産量は200万tとなっています。

韓国の酪農の特徴(日本との比較)

日本との大きな差は3点あると思います。
一つは、日本は都府県が飲用乳地帯として位置付けをされ、北海道が加工原料乳というような区別が(最近では北海道の牛乳も生乳として使われていますが)、一応色分けされています。しかし韓国はそういった色分けはされておらず、すべてが飲用乳地帯となっています。そしてソウル近郊の京畿道(キョンギドウ)、そちらに4割が固まっています。消費位置に近いということもあるでしょうし、酪農に適した地域というのが逆にないということがあります。従ってこの区別がなく、みんながやはり飲用乳用に作りたい農家が多いということになります。

二つ目の違いは、一元集荷・多元販売の体制になっていませんで、3系統に分かれています。酪農振興会、そしてこちらは乳業メーカーとしては最大手にあたるソウル牛乳協同組合、そしてその他の乳業メーカーがそれぞれ集乳や製品化をしています。

これが三つ目につながるのですが、それぞれ集送乳経路を持っています。需給調整もそれぞれが行っているために、非常に製品コストとか配送コストがかさむような状態で、実は日本の私たちが韓国に行くと牛乳が高いなというイメージがあります。実は牛乳だけではなくて、農産物全体が韓国は他の物価からすると高めです。安いなと感じるのは交通費ぐらいでして、バスの運賃とかタクシー代は安いのですが、農産物、米・野菜・肉類は日本とそんなに変わらないぐらいです。

韓国のFTA推進状況(2019年1月現在)

先ほど既にFTA、国際自由貿易協定についてお話をしましたが、上の世界地図の中で青く囲んだところは韓国がFTAを結んでいる国々です。赤いところは日本を含めてTPPに参加している国です。韓国はTPPには参加していませんが、TPP参加国とそれぞれFTAを締結しており、米国ともFTAを結んでいますから、日本以上に開放が進んでいるということです。このため、韓国の農家は農産物の自由化に非常に危機感を持っています。

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