第92回 牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

酪農家としての情報発信へ

一体どんなことが出来るのかなということで、いろいろ考えていると、生産現場から今私がやっているように、酪農の現状はこうなんだよということをやはり多くの方に伝える努力はした方が良いのではないかなと思う。そのために、日本全国に300軒程度の酪農教育ファームの認証農場がある。そこに子供達が行って、牧場で、酪農体験をしたり、乳搾りをしたり、色々なことをする中で、色々な食糧のこと、食育のことを学ぶ活動をしている。牧場に来てもらえない子供達も沢山いるので、わくわくモーモースクールで、学校に子牛を連れて行って、1日牧場にすることもやっている。

埼玉の学校に1日牛を連れて行って、学校を牧場にする。1年生から6年生までその日は1日授業なしで、牧場のお話をする。色々なカリキュラムがあり、牛の乳搾り、子牛のこと、餌の臭いを嗅いでもらって、どんなものを食べているのかとか、色々な話をする。栄養の話を女子栄養大の先生にしていただいたり、毎日牛乳を飲んでいるので、牛乳のこともお話しする。皆でバターづくりを朝から夕方までずっと行なう。

埼玉県では、年間五つの学校ぐらいしか行けないが、わくわくモーモースクールを行っている。酪農家だけではなく、色々な団体の方や乳業メーカーの方にも来ていただいて、1日食育の勉強をやっている。

この20年ぐらい、消費者交流で、牧場に人に来て頂いたり、私達が学校に行ったりすることによって、酪農家の意識は確実に変わってきたなと思う。バルククーラーに搾った時点でお金になっていた牛乳ではなくて、その先にこれを飲んでくれる人がいるのだということを、我々酪農家が初めてそこで知るわけである。それによって酪農に対する考え方や生産の意識も変わってくる。消費者に伝えるだけではなくて、我々も変化をしてきたなと思っている。そういうことをやることによって、実はメーカーだとか指定団体だとか、分断されていたところが、わくわくモーモースクールのイベントで一緒になることで、色々なコミュニケーションが生まれる。農協の人と話を今まで一度もしたことがなかったけど、わくわくモーモースクールで農協の人と話をしたとか、メーカーの人と初めて話をしたという酪農家の方もいる。分断された色々な牛乳の繋がりを、もしかしたらわくわくモーモースクールやイベントで繋げることができるのではないかと思っている。

これからの酪農と、次世代の育成

同時に、担い手の育成。埼玉県で牧場体験をした子供で、将来牛の仕事がしたいと言って帯広畜産大学の獣医学部に進学した女の子がいる。今5年生なので、もう少ししたら獣医になって戻って来る。そういう子供達の一番最初の酪農への繋がりは、私達のわくわくモーモースクールだったと聞いて、非常に誇りに思っている。それと、参加してくれる人は、酪農家の中でも若い人たちが多い。組合や地域を超えて集まってきた若い人たちが、結ばれたりすることも結構ある。長い間、色々な婚活を酪農団体がやっているのが、なかなかうまく行かなかったりするが、我々は3組ほど酪農家のカップルを誕生させた。色々な同じ目的で集まってくる若い人たちがその場所でコミュニケーションを取ることで生まれてくることもある。農業高校生も、明るくする希望の光。今、農業高校はすごいブームで、どこの農業高校も非常に倍率が高くなっている。多分アニメの銀の匙という漫画の影響が非常に大きいと多くの方が言っている。そういう人たちもわくわくモーモースクールのような形で、消費者交流にぜひ参加をしていただきたいということで、埼玉県の場合は農業高校をみんな招待して来て頂く。それにより、とてもやりたい若い人が増えている。もうそろそろ引退しても、そういう人たちがいるので安心だなと思う。

もう一つは、明るい話題として、業界全体として酪農家を支えてくれていることに非常に感謝をしている。酪農教育ファームに関しては、多くの団体が理解をして頂いて、とても支援を頂いているので感謝している。お金も掛かることなので、我々の努力だけではまかなえない部分を多くの方に経済的にも支援をして頂いている。

同時に、酪農家がこれだけ減ってきて、内地の本州の酪農がこれだけ疲弊している中で、業界全体で支援をして頂いている。乳業メーカーさんの団体が、牛がいないならオーストラリアから輸入をして、牛を増やして欲しいというようなことで、輸入のために掛かる経費などに対して補助金を頂いたり、ある意味我々一生懸命そういう方に応えるように努力をしている現状である。また、酪農女子が非常にブームになっている。去年の12月、北海道でイベントをしたら、100人を超える方が来てくれた。周りを見回してみると、酪農の世界は、ヘルパーさんも、牧場の従業員さんも、非常に女性が多い。今まで酪農の仕事は男の仕事と思われていたが、今は女の方。女性の方が多くて、そういう方が支える酪農というのもあって元気でいろいろなことを今やっている。

更には、メガファーム、ギガファームということで、私達の様な家族経営ではなくて、とても大きな経営体も生まれてきている。そうなると新規参入とか、新たに牧場をやりたいという人が働ける場が生まれるわけで、そこからどう発展するかは分からないが、ある意味そうやって入ってくるファーストステップを踏むことが出来るところが出て来たかなと思う。

そういう中で酪農の多様性というものに対する理解をもう少し広めていきたいと思う。山地酪農がすばらしい。放牧の牛乳はおいしい。和牛の肉はおいしいとか、そういう風な固定的な観念ではなくて、色々な牛乳があっていいと思う。おいしい牛乳を搾るために努力をしている日本中の色々なスタイルの酪農家があって良くて、決め打ちで、酪農はこうでなければいけないみたいなのではなくて、やはりいろいろな酪農があって良いと思っている。もっと私達が情報発信をしながら進めていかなければいけないなと思っている。

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