第92回 牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

地域社会とつながり、そして貢献できる業態を目指して

色々なことをやってきたが、ログハウスを作ったことが、地域社会への貢献だと思っている。秩父はあまり知られていないが、観光地で、観光客が来る。観光客が来た時に、牛が外にいるのを見て、牛乳飲みたいとよく言われた。イチゴは観光イチゴで、イチゴ狩りに来るお客様。あとは札所巡り。秩父には札所があり、札所巡りに22万人位のお客様が来る。秩父に来た時に、あそこで牛乳が飲めるとか、あそこでアイスクリームが食べられると言ったら、それは観光として良いねと色々な方に言われて、一緒にやろうということで平成4年にジェラートづくりを始めた。

自分の牛乳、イチゴだとかブルーベリーとかプラムとか、地場産の果物を使ってジェラートを作り、自分が売った堆肥で作った野菜を置いて、消費者の方に買って頂くということを始めた。当時は、6次産業化や、農家が商売するということはあまりなかったので、非常に注目頂き、沢山の方に来て頂いた。その頃から基本的に曲げないでいこうと思ったことが一つだけある。それは今の6次産業化は、とても大きく異なる。でも、何故これをやるかというと、秩父に来てほしい、もっと言えば自分の牧場に来てほしかった。だから道の駅にアイスクリームを卸すとか、作った製品をどこかに卸すということではなくて、うちの牧場に来て、牛を見ながら牛乳を飲んでもらい、ジェラートを食べてほしいということで、従業員を雇う。売れるからと言って規模拡大を提案されたり、色々な飲食店からオファーもあった。ジェラートを売ってあげるから作れと言われたが、多分本業が疎かになるだろうと。農業は片手間でできる仕事ではないと思うので、頑なに自分のところだけで売る。家族だけで経営をするというのをやってきた。

有り難いことに3世代が元気で、妹も家にいて、人手のある頃はそれが可能だった。時代が進んで、祖父母が介護が必要になり、農業も規模拡大をしていかなければいけない。そうなると中々人手が足りなくなって、残念ながら25年間、ログハウスでジェラート屋と農産物の直売所を行なったが、今は2年ほどお休みをしている。これは失敗談で、本当はもっとうまく経営をすれば、もっと皆さんにおいしいジェラートや牛乳を供給できるお店になったが、方向を少し間違ったのかなと思う。出来れば地域の人と一緒に色々なことをやって、地域に人を呼んで、色々なことをやっていきたいということの中で始まったことだったので、しばらくお休みをして、また良いアイディアを出して頑張ろうと思う。

酪農家がいま置かれている経営状況

次に、生産現場がどんな状況かということもお話しすると、増え続ける廃業者ということになる。言うまでもなく、昭和40年から平成25年まで、約半世紀で96%の酪農家が廃業した。今日本の酪農は昭和40年に比べて、僅か4%の酪農家で牛乳生産を支えていることになる。

当然酪農家戸数が減ると、1軒あたりの牛を飼う頭数が増えていく。今は、平均80頭位の牛を飼うようになっている。今、国は6次産業化とか、色々な農産物の輸出とかで、農業を成長産業にしようと頑張っているが、現場として見ると、6次産業化は大変なことだと思う。特に酪農が、新たな一歩を踏み出せるか少し疑問に思い掛けている。ましてや、世界的に見ると乳製品市場は変動が激しいものである。これからヨーロッパからチーズが入ってきたり、TPPもあり、乳製品や色々なものが入ってくる。今のところは他国から安く入ってくればいいかなとは思うが、既に先進国では酪農が衰退をしてきて、先進国が輸入をするような形にもなりつつある。日本で安定的に牛乳・乳製品が確保出来るかどうかというのは、多分疑問かなと思う。

今、起こっていることの一つとして、子牛バブルがある。産ませる子牛はとても高い。一部の酪農家は黒毛和牛の子牛を黒いダイヤと呼んでいる。1匹子牛を産ませると、その牛が2か月位で30万円とか40万円で売れる。だから牛乳を搾るよりも、子牛を産ませてその子牛を売った方が酪農家の生計は成り立つ。こ子牛の価格は上がりっぱなしである。

96%の酪農家が廃業して、残りの4%の酪農家を支援するために、国は畜産クラスター事業という補助事業を組み、私もその恩恵にあずかっている。餌を混ぜる機械は、約1,000万円位費用が掛かる。ただ、補助金があるからということで、本当に身の丈に合った設備投資をしているかどうか今非常に疑問に思っている。同時に、これから牛を増やして頑張る人に国は支援をしてくれる。しかし、何とかこの地域で、現状のこの頭数でうまく経営をやっていきたいというところには、クラスター事業という補助金は来ないので、やる気も正直な話なくなってしまうのではないかなと思う。なので、やはり色々な補助事業のあり方を少し考えた方が良いのかなと思う。
生産現場の未来について少し話をすると、まず最初に、再生産可能な適正価格と安定供給ということで、今、生乳の取引は50年ぶりに大きな改革の時期に来ている。私達は農協に牛乳を売れば必ずお金になった。もっと嫌な言い方をすると、牧場では牛乳を搾って、牛乳を冷やす機械であるバルククーラーという大きなタンクに入れた時点でお金。売る売れないは別にして、それは全量農協が他のところに持って行って売ってくれる。そう考えると、1滴でも多く牛乳を搾れば売ることを考えなくても酪農家は勝ちだった。
しかし、色々な取引の改革により、指定団体制度が維持できなくなった、牛乳の流れが変わったりすると、非常にリスクがあるものになると思う。適正価格で何としても牛乳を買っていただくシステムが必要だと思うので、何としても守る努力をしなければいけないなと思う。

それと同時に、生産コストも上昇している。これは為替相場や色々なものもあるが、何よりも一番生産コストが上昇しているのは人件費。今、他の企業でも人がいない、ましてや酪農の仕事に入ってきて、3Kと言われる様なきつい仕事をやってくれる人は徐々に減っている。いることはいても、そういう人たちを確保するのが非常に難しい状況なので、生産コストが上がっている。

生産のための組織の農協も徐々に変わっていく。我々少なくなっても生産をして、1kgいくらの手数料を農協は取っていたからOKだったかもしれないが、段々生産量も減ってくると、組織自体も変わってくるのではないかと思う。

何よりも心配しているのは、今、酪農家のモチベーションを支えているのは、もしかしたら子牛バブルなのかもしれない。子牛が高く売れるから、子牛がいれば、1頭いれば30万円、40万円になる。しかし、子牛の価格が高ければ肥育農家は潰れる。いずれそれが破綻するのは目に見えている。価値以上の価格で売れていると思うので、バブルが崩壊したらその時に酪農は一体どうなるのだろうと、とても心配している。

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