第88回 牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

乳量の推移、1出産当たり

1出産あたりの乳量の推移です。乳牛の改良というのは昭和59年に始められております。昭和30年、40年代は4,000kgから4,500kgぐらいで、この時に比べれば6割ぐらいだったのです。昭和50年代でも大体こんなものでした。この時代は何かというと、さきほど話したように輸入穀物というのはほとんど牛に与えておりません、この時代は、日本で取れる稲藁・野草・野菜くず、その他米糠とかいわゆる自分の身近なところで得られるものが餌となっていた。それで牛を飼っていたということがこれから分かります。実はこの4,000kg~4,500kgというのはこれ実はとても大切な数字なのです。配合飼料を与えない限り、牛はこれしか乳を出しません。これが伸びたというのは、これは私の先輩がよく言うのですが、大体5,500kgぐらいから初めて平成20年度に8,000kgを超えたのです。牛の改良が始まってから、どんどん伸びていったのですね。ですからこれがすごい成果だと言うわけです。私も学生を教えていた頃は、このあたりでしたから、確かにすごいなと思っていて、嘘とは言いませんが、よく考えないで学生にお話をしていたということになるわけですが、実はここで重要なのは、もし草で飼おうとするとこれぐらいがマキシマムであること。こんなふうに大きな増加を起こすには、配合飼料を与えない限りは駄目だということです。

酪農家戸数の推移

それで、さきほどもお話をしましたが、なぜ乳牛に配合飼料をいっぱい食べさせるのかということになるわけですが、実は全部これを支えるための配合飼料だったのです。
ところが、農家戸数の推移というので見ますと、全国で見ますとかなり減っているわけです。昭和35年というのは41万戸ぐらい、北海道で6万戸ぐらいの酪農家があったのですが、それがこういうふうに減ってしまったと。その次にこれは一体何を示しているかなのですね。実はこのあたりから牛乳の生産量、1頭の生産量は多いのですが、とても飼いにくい牛になったのです。つまりデリケートな牛になったのです。乳はいっぱい出しますが、非常にデリケートで飼いにくい。だからそこら辺に草をほったらかしておけば乳が搾れるなんていう牛ではもうなくなったのです。そうなりますと、特に全国ではすごい減少が始まるわけです。北海道はやはり酪農で生きているというだけあって、最初はかなり減りましたが、そうは減らない。やはり酪農で生きなければいけない。しかも酪農のプロがいる。そういうことで、多少デリケートな牛でも飼える。そういうことがここに反映されているわけです。

経産牛の推移

乳牛の品種改良の目標

それでこれ経産牛というのは、一応子牛を産んで乳を出したことがある牛のことなのですが、昭和35年の45万頭ぐらいから最初はずっと増えたのです。この場合、乳はあまり出さない牛ですから、1頭から絞れるのは4,000kgぐらいで、それを初期のあたりは数でカバーしていったわけです。ところが、このあたりからかなり減ります。約90万頭から80万頭ぐらいまで減ってしまいました。最盛期から見れば45万頭減りました。ところが全国の乳量生産ってそんなに変わらなかった。それはなぜかというと、確かにこれだけ減ったのですが、1頭たりの乳の生産っていうのは、ちょうどそれに見合うだけ増えたわけです。1頭あたりの牛が出す乳量×頭数ですからほとんど変わらなかったのですね。ですから、牛頭数は減ったのですが、あまり目に見えて牛乳が減ったなということは起こらなかったのです。ところが、さすがにそれも無理がありまして、このあたり、平成20年を少し過ぎた頃から、やはり減りだしたのです。もう無理がたたったのですね。このあたりまでは1頭あたりの乳量×頭数でカバーできたのですが、それができなくなった。こういう問題がこれから分かります。

乳量の推移 乳質の変化

なぜそうなのかということが最終的な問題になるわけです。これはさっきお示しした表ですが、乳量の推移に注目してください。そうすると、この改良開始から配合飼料を多給することによってかなり乳量が増えていきました。それでこれも家畜改良事業団が誇ることなのですが、それまで2.9%だった乳タンパク質が3.2%に改良されました。実際は3.3%ぐらいまで行くのですね。乳脂肪が3.4から3.9%になりました。つまり乳質が大きく改善されたと言うわけです。それで私が言うのは、ここの乳量を増やすために必要な配合飼料が必要。当然これカロリーを含んでおりますから、これを増産するために必要なエネルギー・栄養。配合飼料を多給しなければこんなものはできないでしょうと言うわけです。これが問題なのですね。

畜種別配合飼料 配合資料給与量

乳牛はどうして配合飼料をそんなにいっぱい食べるのかということになるわけですが、実は全部これ家畜改良の結果なのです。いいことは一つもなかったのですね。ですが、彼らはなおかつ良くなるよと言うわけです。こういう問題が日本の畜産には、酪農には含まれております。これをどうにかしない限りは、自給率は絶対に上がりませんし、日本の食糧安保にも結び付きません。こんな牛はね、飼えるものではありません。とてもデリケートで、牛のオーバーワークなのです。ですから、そのうちに必ず牛からの反撃が起こります。

その結果起きたこと

配合飼料依存の酪農になった結果、何が起こったのかです。一つは妊娠しなくなりました。本当に妊娠しないのです。今平均出産回数が3.5回です。かつては8回出産したのです。今は3.5回です。誰でも知っていることですが、妊娠しなければ乳が出ません。乳の出ない牛を飼っていてもしょうがありませんから、廃用にしなければいけません。今、大体3回から4回目で廃用になるのですが、2回、もしくは3回出産して、乳を搾ったらもう廃用という、経済的に見れば非常にマイナスなのですね。8回出産しますと、乳量が多少少なくてもこっちの方が経済的な価値は高いのです。牛というのは大体2年後に出産します。生まれてから2年後。だから満2歳になった時に大体出産するのです。そこは全部費用持ち出しです。それを8回で割るか、3回で割るかによったら、生産費がどれだけどちらが多いかというのは、誰が考えても分かります。8産の方が有利に決まっているわけです。
もう一つはいろいろありますが、乳房炎が多発したのです。とても乳房炎にかかりやすくなったのです。農林水産省が家畜保健統計かな。正確な題名は分かりませんが、家畜共済保険報告というのを出しているのですが、今牛の病気で一番多いのは何かというと、乳房炎なんです。単に乳房炎?って言うかもしれませんけど、実はこれは治療費が大変なものとなり出荷も停止となります。乳房炎になりますと1週間出荷ができません。それに治った後も乳量が減ります、少なくなるんです。また、乳質が悪くなりますから、乳価が下がります。これが実は全部酪農家のマイナス要因になってくるわけです。今、平均的な酪農家は、この乳房炎の治療費というのは、大体年100万円だそうです。それで、どれぐらい多発するのだということになりますが、さっき言った家畜共済の保険で行きますと、年に45万件が乳房炎で治療を受けています。ですから、日本の搾乳牛の半分が、1年で2頭のうち1頭が乳房炎にかかりますよというわけです。それが実は全部酪農家の負担になっているわけです。
それで心配なのは何かというと、乳房炎になって治療ができなくなることがあります。非常に敗血症が起こりやすいのです。それでどういうことになるかというと、少しでも治療が不可能になりますと廃用になります。それが年に2万頭です。1回目のお産であろうが2回目のお産であろうが3回目のお産であろうが、治療不能になったら即廃用です。治療不能になれば、必ずその乳牛は死んでしまいますから。必ず敗血症で死にますから、治療不能になったと判断が付いた時点で廃用にします。つまり少しでも経済的なプラスになるようにということで、廃用にするわけです。それが年に2万頭です。その経済的なマイナスというのは、無視できないわけです。これ全部実は乳牛の泌乳能力がプラスになったことで起こったことです。
昔、4,000kgの時というのは、ほとんど搾乳した後に消毒なんかしなかったのです。ほったらかしで絞ったら絞りっぱなし。今は大変予防に注意しております。消毒をしたりいろいろなことをします。ではどちらの方が乳房炎が多いかというと、実は今です。非常に注意していながら乳房炎が多いのです。昔は何も注意していないのに、なかなか乳房炎にかからなかったのです。それはなぜかということなのです。なぜ乳牛というのは改良するとそんなふうになるのか。そういうことが次の問題になってまいります。

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