第79回 牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

12. 質疑応答

  • 質疑応答
Q1.チーズというものは日本の漬物と同じようにもともと、各々の地域で自然にできたものではないかと思います。本日、試食したチーズやご説明いただいたチーズは、工場で大量生産したチーズであることは理解致しますが、本来は自然発生的にできたものではないのか。また、乳酸菌は空気中にも存在するのでしょうか、あるいはレンネットのように牛なり羊からしか採れないものでしょうか。
A1.
  • チーズは、自然発生的というか偶然にできたものです。私たちが飲んでいる牛乳の搾りたてのものは無菌のように思えますが、多少の菌がいます。その一つが乳酸菌です。搾りたての牛乳をそのまま放置し、乳酸菌が優位に働くと発酵乳になります。そこから、切れ目を入れて水分を出します。水分がホエイです。水分を取り除いたものを型に入れたり、布袋に入れて吊るしておくとチーズになります。それぞれの地域、環境は重要でして、ご指摘の通り、そこに存在する微生物が発酵を助けて多様なチーズが作られてきたことになります。
    今では、製造技術の向上により環境をコントロールできるようになったことから、この地域でなければできないというようなチーズは、日本では有りません。外国にはその地域だけの原料乳を使い、独特な製法を守って作られているチーズも多くあります。
Q2.日本で作られるカマンベールチーズは、「カマンベール風」ということでしょうか、完全にカマンベールチーズなのでしょうか。
A2.
  • カマンベールチーズの製造方法に則った作り方をしています。「カマンベールタイプ」のチーズとも言えるでしょう。そういう意味では、400種類あるチーズの一つのタイプであると言えます。チーズ製造の基本形は、400種類程度であるといわれています。その一つにカマンベールの製造方法があってそれに則って日本では作られています。
Q3.「チーズの中の生理活性化ペプチド」の表の中でペプチドが非常に多い「Manchego」というチーズはどのようなチーズでしょうか。
A3.
  • 恐らくヨーロッパ、スペインのチーズだと思いますが、詳細はわかりません。
Q4.私は色々な方の記録を拝見していますが、ヨーグルトはかなり普及しているのにチーズは固有名詞で表現せずに、例えば学生ですと「ピザ」とか「ハンバーガーに乗っているチーズ」と表現しています。日本のチーズの消費量のなかでは、そういった消費が多いと思いますが、単品ではなく合成されたものを多く食べているということでしょうか。
A4.
  • ピザとかハンバーガーに使われるチーズは、本日のテーマの一つである熟成とはあまり縁のないチーズではないかと思います。熟成しているとしても、短い期間であってペプチド産生は少ないタイプのものだと思います。
  • 質疑応答
  • 質疑応答
Q5.それは経済的合理性という理由でしょうか。
A5.
  • そうだと思います。熟成が長くなる程、値段も高くなるのが一般的です。
Q6.大量に売っているチーズは今回お話いただいたチーズの機能特性をどれ位期待できるのでしょうか。
A6.
  • 食べる量によると思いますが、日常、我々が摂っている量だけでは、正直なところあまり期待できないと思っています。チーズは長く熟成すればする程、今日お話した潜在機能が顕在化しますが、値段も高くなります。食べる量にも制限がかかるのが現実です。チーズはどの種類でも何らかの健康寄与成分がありますが、どれだけ食べたらその効果があるかということは非常に難しいことです。
Q7.チーズの世界各国の消費量と比べて、日本はどれ位なのでしょうか。
A7.
  • フランスの10分の1程度の年間約2㎏だと思います。
Q8.日本は世界一の長寿国ですが、「チーズ摂取量と循環器系疾患死亡率」のグラフから見るとチーズの摂取量が少ないことで循環器系疾患の死亡者数は高いのではないかと思われます。日本の食生活の中にもっとチーズが入ってくればより良い方向にいくと思います。また、世界遺産に日本食が認められましたが、その中にチーズをどのように取り入れるのかを考えた時、上手に取り入れることができればチーズの摂取量は増えると思います。特に男性は酒のつまみ程度にしかチーズを考えていないことも問題だと思います。
A8.
  • 牛乳も飲むのではなく乳製品として食べる、乳成分が10倍に濃縮されたチーズとして食べることが牛乳成分を有効に摂取できる最良の方法だと思います。熟成されたチーズを料理に使う、例えばパルメザンチーズは、正に調味料として料理に用いられています。そういったチーズを購入しやすく供給されれば、多くのチーズを摂取することができると思います。
  • 質疑応答
  • 質疑応答
Q9.日本の男性の平均寿命も80代となってきました。数年前まで沖縄県が男性・女性ともトップだったのですが、トップから落ちてしまい、医療関係者から沖縄ショックと言われました。その結果を受けて、大学とか厚生省の研究班が1位の長野県と沖縄県の食生活を色々な角度から比較して、病気の構造も含めて調査しました。原因として野菜の摂取量の多さは勿論ですが、牛乳・乳製品の摂取量が沖縄が80数グラムだったのに対し、長野は約110グラムだった。この30グラムの差は多分ヨーグルト、チーズ、牛乳が長野の食事に入っているのだと思います。このたった30グラムを毎日積み重ねる、つまり「継続は力なり」が大きな違いになると信じたいですね。
A9.
  • そうですね。牛乳等の動物性食品、特に動物性の脂質が健康に良くないといった漠然とした評価があります。今回の話の中にもありましたが、脂質の評価は、脂質とともにその食品を構成する他の成分との関係も含めて評価すべきだと思います。牛乳、乳製品の場合一緒に摂る牛乳成分との相乗効果があるなど、もう少し正確な知見を根拠にしていく必要があると思います。現に、動物性の食品を摂取することによって、平均寿命が向上してきたことは周知の事実です。
Q10.中年以上の男性の中には、牛乳は子どもが飲むものだと言う人がまだいます。家では夫に強引に飲ませておりますが、ようやっと飲みます。癖がつくと飲むのですが…。牛乳に対する意識を変えるにはどうしたら良いでしょうか。
A10.
  • 「頭」で飲ませる、食べさせる、つまり理屈、健康との関係を並べて、飲ませたり食べさせたりすることも一つの方法だと思います。しかし、この方法では長続きしません。牛乳をおいしく飲んでいるかどうかです。私の年齢層の方々が、飲み物としての牛乳を多くは摂れないと言うのが私の感想です。私自身も、牛乳だけを飲料とすることは少なく、インスタントコーヒー粉末を牛乳で溶かすとか、自分にとっておいしく飲めることが重要だと思います。その代わり、チーズは、こんなに食べていいのかなという位食べています。
  • 質疑応答
  • 質疑応答
Q11.先生のご研究ですと日本人のチーズの好みはクリアで癖がないものだと挙げられていらっしゃいましたが、このことは日本人がチーズに慣れていなかったからで、これからチーズをガンガン食べる人が増えればフランス人のようにウオッシュタイプを食べるようになるのでしょうか。あまりチーズを食べない人には大衆向けの癖の無いチーズを、とてもヘビーな人には高くても好みのチーズを沢山食べるという二極化になっていくのでしょうか。また、先日モンゴルに行った時にゲルの上にカチンカチンに固めたチーズがあったのですが、ヨーロッパだけでなくアフリカでも南米でもどこでも動物を飼っているところにはチーズはあるのでしょうか。
A11.
  • 最初の質問ですが、チーズに対する嗜好性の変化ということだと思います。チーズへの嗜好の変化はどんどんエスカレートして行くのが一般的で面白いところです。例えば、チーズ種の「近縁」でお話したようにエメンタールが好きな人はブルーチーズが好き、ブルーチーズが好きな人は次にウォッシュタイプチーズが食べたくなります。次々と試してみたいと言う欲求がそそられます。これがチーズの面白いところというか、おいしさに対する好奇心をもつ価値のある食品であると言えるのでしょう。あまりチーズを食べない人でもチーズを食べることによって嗜好は変わって行くと思います。そこには、食べ易い環境が必要になります。これは価格の問題もありますが…。
    チーズは何処にでもあるのかというご質問ですが、牛乳のあるところにはチーズは有ります。牛乳は人にとっても素晴らしい食品だということが分かっていますので、それを保存する手段としてチーズが作られどこにでもあるのだと思います。
Q12.チーズの味は、原料、熟成、菌の種類といったおいしさを生みだす多くの要素があります。今回のテーマにもあった熟成についてお伺いします。フランスには熟成師がいます。特別な技術として大変重く扱われ、勲章を貰ったりしておりますが、日本の熟成師の中にフランスの制度の熟成師を持っている方々を知っています。日本ではそういう技術に対する評価は、どれ位進んでいるのでしょうか。日本にはお酒にしろ、お味噌にしろ優れた熟成の技術がありますが。
A12.
  • ただ今のご質問は、今初めて考えさせられる問題です。更なる品質向上に向けて、確かに重要なことだと思います。日本にも熟成士がいらっしゃいますが、一朝一夕で獲得できる技術ではないにもかかわらず、その評価が伴っていないのが現状かと思います。きちんとした評価をしたうえでその存在を認め、制度として広げることが必要だと思います。社会的に認知される資格制度として確立することが必要だと思います。
  • 質疑応答
  • 質疑応答
  • 質疑応答
Q13.熟成がメインのチーズですが、先生のお話のまとめに「健康な動物から良質なミルクと微生物の絶妙な働きによって形成される各種チーズ」とありますが、弘法筆を選ばずではありませんが、どの牛、どの山羊、どの羊、またはどの品種でも、乳さえあればチーズはできるのでしょうか。
A13.
  • とても重要なことです。どのような哺乳動物、また、どのような品種からのミルクでもチーズは作れますが、健康な動物からの高品質なミルクでないとおいしいチーズはできないと言っていいと思います。技術さえあればチーズができるというものでもありません。原料乳は重要です。ある意味、どのような原料乳でもおいしいチーズが作れれば良いのでしょうが。チーズの熟成への第一歩は、チーズを作る前の原料乳の段階から始まっていると言えます。常に同じチーズを作ることも難しいことなのです。牛を限定し健康管理された牛からの生乳が基本となります。
Q14.先程から価格の問題が上がっていますが、やはり価格とすると輸入品になるのでしょうか。安くて量が多いとなると輸入品になるのでしょうか。日本の酪農を生かすためには価格ではなく品質ということになるのでしょうか。
A14.
  • 私も北海道の酪農家を対象にし、6次化をテーマにした調査をしたことがあります。酪農家は十分高品質な原料乳を生産しているし、海外のチーズに劣らない技術も持っています。残す課題は「売り方」をどうするかという問題を指摘しました。技術指導や生産指導ではなく、今は、価格も含め、如何に売るかという売り方のプロが6次化に関与することが必要だと思います。

1 2 3 4 5