第79回 牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

4. 発酵食品と微生物

発酵食品と微生物

発酵食品と微生物との係りを上表に示しました。このように発酵には微生物が利用されますが、微生物の利用の仕方に、かなり違いがあります。またその微生物の種類も様々であるということを知って頂きたい。酵母カビあるいは、細菌を単用するなど、大きく3つに分けられます。また、それらを組み合わせることもあります。カビと酵母、カビと細菌、細菌と酵母さらに、それら全部を併用するというものもあります。細菌を単用する代表的なものに発酵乳、ヨーグルトがあります。チーズの場合、種類によってさまざまですが、細菌である乳酸菌は、大方のチーズで使われています。乳酸菌単用によって作られるチーズは多い。カビと乳酸菌を併用するチーズとしてはカマンベールがこれです。カビと細菌と酵母の併用ではウオッシュタイプのチーズが代表的なものです。このように様々な微生物が単用、あるいは併用によって多様であり独特な風味を有する製品に作り上げていくことが想像頂けると思います。まさにチーズはこれら微生物を駆使した発酵食品であることがお分かり頂けると思います。

5. 牛乳成分と微生物の共同作用

原材料と微生物、メインの微生物である乳酸菌と共同作用によって、発酵乳製品やチーズにはどのような機能が付与されるのかについてお話を致します。牛乳が微生物の力によって他の食品へと形を変えるということについて。まず、牛乳の脂質の部分、クリームを発酵させて作ったものがバターです。これも発酵乳製品の一つ。ヨーグルト・チーズの場合はタンパク質・脂質・糖質を利用して牛乳から別の特性を持った乳製品に変化したものです。これらをもう少し具体的に示すと生乳の脂質部分、クリームに乳酸菌を添加して一定の温度、時間で発酵させると酸味、香り、特にジアセチル臭がメインとなる香り成分ですが、濃縮されたジアセチルは汗臭い匂いと表現したら良いのかと思いますが、ある意味悪臭ですが、極々微量ですと芳香性に富んだ香りとなります。発酵させたクリームからチャーニングといったある種の撹拌操作によって脂肪粒を取りだしてバターにします。一方、タンパク質や乳糖を利用して作る代表的な製品としてヨーグルト、チーズがあります。これも牛乳に細菌、乳酸菌を加えることによって乳糖から乳酸を生成させて酸性、酸味をもたらし、そして、その酸性に傾けたところにチーズの場合は酵素を加えて凝乳をおこして凝乳物を集めてチーズにします。ヨーグルトの場合は脱脂乳、牛乳に乳酸菌を加えて酸を生成させ、その酸が牛乳のカゼインというタンパク質同志が集まった形の凝乳を起こします、これがヨーグルトです。いずれにしてもクリーム部分、脱脂乳部分に乳酸菌が作用して酸を生成する特徴を利用しています。酸によって凝乳または凝乳酵素が働きやすい条件、風味が作られます。

6. 乳酸菌による機能性の付与

チーズ、発酵乳、共に言えることですが、ミルクの成分と乳酸菌の絶妙な共同作用による産物です。牛乳の脂肪、タンパクと乳糖などの成分に対して乳酸菌や凝乳酵素が働き新たな美味しさ、機能性を付与することになります。乳酸菌が乳成分を利用して新しい機能を生み出しています。その生みだされた機能が発酵乳の場合ですと特定保健栄養食品として、特保マークをつけた製品として利用されています。そのような新たな機能というものはどういった機能なのか。「新たな」と言うことですので原料素材に無い、すなわち牛乳成分にはない成分または牛乳成分に潜在しているものが顕在化されてプラスされるなどです。そして、新たな成分生成によって風味、テクスチャー(食感、口触り)、さらには健康を調節する成分が形成されることもあります。さて、チーズにはどのような機能が付与されるのでしょうか。栄養特性、嗜好特性、健康調節特性、これらを第一機能、第二機能、第三機能、3つの機能と言われますが、これらについてお話致します。
多くの方々は健康調節機能に係る成分について興味を持たれるのですが、やはり食品である以上美味しさ、嗜好特性も重要です。個人的には健康調節特性は栄養特性の内の1つであると考えております。健康調節特性は1970年代に栄養特性から新たに、ある意味で独立した形で3つ並列した特性として考えられるようになった経緯があります。3つの機能が揃って初めて食品としての価値が評価されると考えています。さらに、保存性安全性も付加され高評価食品、優れた食品といえるのでしょう。チーズは栄養素が豊富であり、熟成によって美味しさを増し、健康への寄与成分も顕在化し、さらに保存性も高まり安全な食品として日々いただいている優れた食品の代表です。

7. チーズの栄養特性

チーズの栄養特性は、下表を見て頂くとお分かりになると思います。

チーズの栄養特性

成分の比較として牛乳、卵(全卵)、大豆、豆乳から作られる豆腐を示しております。チーズはゴーダからブルーまでの各種です。この表からタンパク質、脂質、糖質をみるとチーズはおおよそ牛乳の10倍の数値を示しています。このことは、チーズは牛乳を凝乳させたものからホエイ部分、水分を取り除いて10倍程度に濃縮された製品であるということが分かります。
エネルギーを表で見てみると10倍より低い数値です。このことからチーズは栄養素密度が高いことを示しています。エネルギー当たりの栄養価が高いものほど食品としての栄養価値が高いと言われています。チーズは牛乳よりもエネルギー当たりの栄養価は高い食品だということがこの表からもお分かり頂けると思います。
炭水化物(糖質)は、この表で見ると牛乳の4分の1以下になっています。これはチーズ製造上の特徴で、この点がヨーグルトと違うところで、牛乳成分を凝乳させたものからホエイという水溶性の一部を取り除く工程があります。この工程によって糖質部分が排除されることで4分の1程度になるし、更に熟成過程で乳糖は乳酸菌の餌となり分解されることで糖質含量は減少します。
カルシウムは、チーズの種類によって様々です。例えばパルメザンチーズは牛乳の10倍以上、カマンベールはそこまで行きませんが4倍程度になります。このことは、水分含有量に関連します。パルメザンは超硬質タイプで水分含量が非常に少なく、他のチーズより乳成分が一段と濃縮されたものです。カマンベールは、この表のチーズ中では水分含量が多く、割合的にはカルシウム含量が少ないことになります。
ビタミンAは、微量ですが特徴的です。チェダーチーズは、他のチーズよりも多くのビタミンAが存在しています。これは、レッドチェダーといって赤っぽい色のチェダーチーズです。このチーズにはカロテンという色素が添加されており、カロテンはビタミンAの前駆体、体内でビタミンAに変換されるものであるため、ビタミンAの含量が多くなっています。
ビタミンB12も、チーズ中に多いことが特徴です。脂肪含量が多く水分含量が少ないパルメザンチーズ等は、濃縮されていることもあり多く含まれています。水分含量が多く脂肪含量が比較的少ないカマンベール等でも、この程度含まれます。ビタミンB12は、脂肪含量に由来するビタミンであることも1つの要因です。
栄養素はチーズの製造方法、熟成の仕方、使う原料乳によっても様々な含量になりますが、おおよそカルシウムは牛乳の10倍、糖質は牛乳の4分の1以下、ビタミンは多く存在する。これがチーズの栄養素含量の特徴であると言えると思います。この栄養特性をまとめると栄養成分組成は、チーズによって異なるものの主要な栄養成分はタンパク質と脂肪である。なぜかというと、凝乳を構成する凝乳物として得たカゼインおよび脂肪に由来するからである。そして、チーズを作る際に水分として排除される部分に存在する成分も、その一部が凝乳として得るカゼインタンパクとの相互作用によってチーズ中に移行してくるものもあるということです。
例えば、ラクトフェリンという機能性に富む成分がありますが、昔は水溶性、ホエイに存在するということでチーズには移行していないのではないか言われておりましたが、チーズにも移行して残っていることが最近の常識となっています。チーズのタンパク質や脂肪は、熟成過程によって低分子化、例えばタンパク質はアミノ酸1個1個がおよそ100個以上繋がったものです。100個以上繋がったものが熟成中に乳酸菌が持つ酵素あるいは凝乳させるために加えた酵素、さらには生乳中に存在する酵素によって分解されて小さい単位のペプチドに分解される。更に、そのペプチドは1個1個のアミノ酸に分解されます。その低分子化が新たな機能を生むことになります。
牛乳の脂肪は、不飽和脂肪酸より飽和脂肪酸含量が高いのが特徴です。次が、オレイン酸で代表される不飽和脂肪酸です。また、コレステロールは、最近話題になっているトランス脂肪酸と併せて心疾患との相関が言われております。しかし、反芻動物が産生するミルク中の脂肪に含まれるトランス脂肪酸は正の相関は無いと言われています。さらに、トランス型の共役リノール酸は、癌抑制とか免疫調節とか体脂肪低減に働く脂肪酸として注目されています。他方、飽和脂肪酸あるいはコレステロールについては、逆に負の相関があると言われています。
炭水化物は、乳糖として存在し熟成過程で、乳酸菌に資化され、減少してしまいす。ビタミンは、脂溶性ビタミン、特にAやBの供給源になります。またB12は、発酵途中で微生物によっても合成されますので、増化するチーズも存在します。チーズ中のミネラルは、製造上濃縮されて供給源となります。これらがチーズの栄養特性と言えます。

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