第76回 牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

10. 乳製品の国際需給の特徴

国際需給はどうなっているかを示す。
乳製品の国際需給の特徴として1点目は、生産量に対して、輸出される割合が少なく、備蓄にも適さないこともあり、国際需給のギャップを生じ易いということにある。生産量に対する輸出割合では、砂糖約28%、小麦約20%、トウモロコシ約12%、牛肉約10%に対し、牛乳・乳製品は約7%、それも統計が取れているところに対してである。砂糖やトウモロコシは地場での消費が殆ど無く、色々なところに出荷され国外でも国内でも数値を確定できるが、牛乳・乳製品は地場で飲まれているものがこの統計に入ってこないため、実際ここに示した数値よりも小さい数値となる。
2点目の特徴は、輸出可能な国、地域が限定されており、それらの国、地域で何らかの異常が発生すると、直ちに国際需給に影響が及ぶということがある。先にも述べたように、輸出国としてはEU、米国、NZ、豪州と一部アルゼンチン、これらの地域からしか乳製品という形では出てこない。輸入国は、アジア、中米、北アフリカ等の国に分散しており、中国を筆頭に経済発展に伴う需要の増加が見込まれている。輸出国が限定されているのに対し、輸入国は世界中に分かれており、なおかつ今後の需要が増える傾向にあることは、需給的には厳しい方向に向かうことが懸念される。

乳製品の国際需要の特徴

11. 乳製品の品目別輸出割合

乳製品の品目別輸出割合をに示す。チーズ、バター、脱脂粉乳、全粉乳であるが、チーズ生産量の全体を100とすると輸出は9.5%、バターも8.5%、脱脂粉乳と全粉乳はそもそも遠距離輸送用に粉にしたものであるため輸出割合は高く4割以上輸出されている。

乳製品の品目別輸入割合

12. 乳製品の国別輸出シェア

先程の、乳製品の輸出国の国別輸出シェアを示す。
このデータはUSDAの統計で、統計が取れるところだけのデータということで見る必要がある。バターは世界で76万トン輸出されている。ニュージーランドが世界の輸出量の6割を占めている。EUが17%、豪州8%、アメリカ6%で、その他の国は4%しかない。チーズに至っては、EU50%、ニュージーランド18%、アメリカ17%、豪州11%で、その他の国はやはり3%しかない。

乳製品の国別輸出シェア:バター、チーズ

続いて粉乳に関しては、脱脂粉乳と全粉乳がどの国から出てくるか、これも4カ国が主な国となっている。脱脂粉乳に関しては、EUが35%、アメリカが28%、ニュージーランドが23%、豪州9%、その他の国はわずか4%。全粉乳に至っては、ニュージーランドが61%も占めており、EU19%、アルゼンチン12%、豪州5%、その他の国が3%。いずれもその他というのが非常に少ないということがわかる。この4つの地域、それぞれ得意な分野と得意でない分野があるが、いずれの製品もこの4つの地域から出てきている。アルゼンチンは、全粉乳で一定の地位を占めている。

乳製品の国別輸出シェア:脱脂粉乳、全粉乳

13. 主要輸出国の乳製品需給

4つの地域の輸出が多いという中で、地域毎に輸出がどのくらいの割合を占めているのかを示す。
EUは28カ国で人口が約5億人、バター、チーズ、脱脂粉乳、全粉乳の内、バター、チーズは圧倒的な生産量に対し輸出量は少ない。域内に5億人のマーケットがあるため、域内での販売、消費が多いためである。アメリカも3.1億人の人口を抱えているため、バターもチーズも生産量は多いが、輸出に回るのは少ない。チーズに至っては一部輸入している。オセアニアは様相が違ってくる。豪州は、日本の25倍の国土面積があるが、人口は21百万人である。21百万人とはいえ、結構な国内マーケットがあるため、生産量に対する輸出量は少なくなっている。チーズ、バターに至っては輸入もおこなわれている。このほとんどがニュージーランドからの輸入である。ニュージーランドは特殊で、全国で国民人口が4百万人しかいない小さな国であるが、多くの生乳及び乳製品製造を行っているため、4百万人のマーケットは僅かであるため、約95%輸出している。
4つの地域の輸出国があるといっても、それぞれの国内事情はみんな違うということがわかる。

主要輸出国の乳製品需給

14. 主要輸出国の酪農生産の特徴

この4つの主要な輸出国の酪農生産の特徴を示す。
アメリカを北東部と西南部の2つに分けているのは、この2地域によって酪農の生産方法が大きく違っていることによる。北東部は五大湖の近くで、ウィスコンシン州が一番大きな酪農の州で、日本での北海道のようなところである。規模は北海道より遥かに大きいが、北海道のような経営を家族経営で行っている。南西部は、カリフォルニアに代表されるところで、非常に乾燥した気候の中で1500~2000頭という大きな牧場を構え、まさに企業経営で酪農を行っているというところである。
EUの生乳生産量は、1億4千万トン。1頭当たりの平均乳量は、アメリカが圧倒的に多く、次いでEU、豪州、ニュージーランドの順に少なくなっている。EUの場合は、加盟国がさまざまで、経営形態も多様である。東欧や南欧の国は非常に零細な経営が多いため、飼養頭数は全加盟国を平均すると1戸当り10頭しかいない。ただ、オランダやドイツは大きく、多様な経営形態となっている。
飼養形態は放牧と畜舎の2つあるが、EUとアメリカ北東部は畜舎と放牧の組み合わせで行っている。アメリカ南西部のドライロットと呼ばれるところは、巨大な工場のような酪農であるが、そこでは周年畜舎で生産している。ここでは、24時間3交代で搾乳されている。
豪州、ニュージーランドは全く違っており、基本的に放牧だけで行っている。季節生産という方法を採っており、春先の草が伸びる時に合わせて出産させ、一斉に乳を出し始めるようにしている。そのため、生乳生産量は、春先に大きく伸びて、草が枯れる頃にはほとんどなくなるといったカーブを描く変化を示す。
飼料に関しては、日本と大きく異なり、これら4カ国は、基本的に自分のところ、あるいは自国の地域の中で手当てしている。日本は約9割が輸入となっている。
政府の支援としては、EUもアメリカも支援をやめる方向にいっているが、今のところ乳製品の買い上げや輸出補助など一定の程度実施している。一方、豪州、ニュージーランドでは政府の支援は殆ど無い。

主要輸出国の酪農生産の特徴

15. 主要輸出国の生乳生産者販売価格

4つの主要輸出国の生乳生産者販売価格を示す。
日本の価格も示しているが、為替によって大きく変化するため、あくまでも参考としてのデータである。
おおよそ半分以下である。これらの国で作られた乳製品は、日本で作る乳製品よりも安いコストでできることになる。参考に示しているように、ニュージーランドの10/11年度の生乳生産コストは4.06NZドル/乳固形分1Kg(29円/Kg)、生産者に払われたのが46円ということは、まださらに下げることができることを示している。世界の国際相場の価格を見て決めているわけで、まだ余裕があると考えられる。日本の場合、余裕は全くないようである。

主要輸出国の生乳生産者販売価格

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