第76回 牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

4. 牛乳・乳製品の種類と製造工程

以下の図は、牛乳・乳製品の種類と製造工程を示したもので、図の一番上が搾ったままの「生乳、原料乳」、その下が「殺菌、滅菌」処理される部分である。この殺菌、滅菌工程に行くまでに既に4割くらいの乳がのまれている。残りの6割が殺菌、滅菌される。次いで、殺菌、滅菌されたものが3段目になるが、脂肪の部分と脱脂乳に分ける工程である「乳脂肪の均質化」、「濃縮」、「遠心分離」、もしくは「乳酸菌(を加えて)発酵」、「タンパク質凝固」等の加工処理を行うことで、最下項に示す製品となる。左から4番目までは飲む製品で、「成分無調整牛乳」、「成分調整牛乳」(「低脂肪乳」や「無脂肪乳」)、脂肪を添加し濃厚にしたような「加工乳」、「乳飲料」(コーヒー牛乳や乳成分以外を加えたもの)がある。「濃縮」という過程からは、そのまま濃縮したものは「濃縮乳」になり、それを乾燥すると、生乳から水分だけが除かれた「全粉乳」になる。
図中の黄色で示した製品は、輸出に向けられる可能性があるものである。「遠心分離」の過程から、「脱脂粉乳」、「バター」が製造され、各々の途中の工程からは、「脱脂濃縮乳」、「クリーム」が製造される。「クリーム」はフレッシュクリームであり、長距離の輸送には向かない製品である。「乳酸菌(を加えて)発酵」させると発酵乳、いわゆるヨーグルトになり、「タンパク質凝固」という過程からは、「チーズ」ができる。「チーズ」にも2種類あり、菌が生きている「ナチュラルチーズ」と、いくつかの「ナチュラルチーズ」を混ぜ合わせ加熱し菌を死滅させ長持ちさせた「プロセスチーズ」とがある。
チーズを製造する過程で、「チーズ」の固まりができ、黄緑色の液体の中に浮く状態になるが、この液体がホエ―で、この中に最近注目されている「ホエ―タンパク質」が含まれているており、これを乾燥させ「ホエ―パウダー」が製造されている。

牛乳乳製品の種類と製造工程

5. 乳牛のライフサイクル

乳牛のライフサイクルを示す。
一般の消費者の中には、乳牛はなにもしなくても1年中乳を搾れば出てくるものと勘違いされている方が結構おられるが、乳牛も哺乳類の動物であり、子供を産まないと乳は出ません。雌牛は誕生後2カ月で離乳し、14~16カ月で最初の人工授精をおこない、その後10カ月経ってようやく出産となる。出産した過程から乳が出始め、300~330日くらいの間、乳を搾って人間に提供することになる。1年に満たない2~3カ月の間は閑乳期と言って乳を搾らない期間がある。乳を搾って人間に提供している間に、人工授精により妊娠するようにし、出産、搾乳を繰り返す。常にお腹には子供が入っている状態にし、ある意味では人間の都合で、母親としては酷使されているといえる。通常では4産くらいで廃用になり、肉として人間に提供されるようになる。

乳牛のライフサイクル

6. 日本の牛乳・乳製品需給

日本の牛乳・乳製品の需給はどうなっているかを示す。乳製品は全て元の生乳に換算して示している。
1960年頃の日本の生乳生産は、200万トンに過ぎなかった。輸入も殆どなかった。それが、高度成長とともに需要が大きく伸びた。これは、皆さんが牛乳・乳製品を大きく消費するようになったのと、政府が北海道を中心に酪農という新しい産業を、農業の一つの基幹部門として育てようという政策を大きく導入したため、そうした政府の後ろ盾もあって、1990年代の半ばころには最高で820万トンを超える生乳を国内で生産するようになった。この35年位の間に約4倍以上に伸びたことになり、これは相当に急激な伸びだといえる。
一方、日本は国土の制約もあり、生産が伸びたといっても需要に追いつかなかった、ということもあり、赤い部分の輸入がどんどん伸びてきている。近年では全体供給量が頭打ちになってきているが、輸入と国産の割合はどんどん入れ替わってきており、直近では国産が65%、輸入が35%という割合になっている。残念ながら、国内の生産が段々落ちてきているため、その分を輸入が補うという形になってきている。

日本の牛乳乳製品需要

7. 乳製品の輸入量

次に、輸入というのはいったい何が輸入されているのかを示す。
チーズが圧倒的に多いのがわかる。この値は製品ベースで示されており、2012年度には、約25万トン入っている。毎年このレベルの量が入っており、他の乳製品の輸入量は少ない。なぜチーズが多いかは、はるか昔の昭和26年に既に自由化をしており、約30%の関税を払えば誰でも輸入できる状況になっていた。昔は、チーズに対して、「石鹸のようで、自由化しても日本人はこんなものは食べないだろう」ということで、早々と自由化をしてしまったと聞いている。当時はバターと脱脂粉乳の2品に対し、国産を守らなければならないとのことで、チーズは考慮されてなかったと推察する。

乳製品の輸入量

8. チーズ輸入の内訳

チーズの内訳としては、日本人が食べ易いようなプロセスチーズの原料が多かったが、近年では直接消費用のナチュラルチーズが増えている。最近では、スーパーに行くとチーズの売り場が多くあり、いろいろなヨーロッパのチーズがたくさん売られている。原料チーズとしてのナチュラルチーズ、例えばゴーダチーズやチェダ―チーズなど大きなバルクのチーズは、ブレンドされ、加熱溶解され、プロセスチーズにされている。原料チーズに関しては、各社が工夫を凝らして配合を変えることにより、消費者向けに色々な味のチーズを作っている。ナチュラルチーズはまだ菌が生きているため、食べ頃などを気にしながら食べなければならないが、プロセスチーズは菌が死滅しているため、安定した状態で冷蔵庫保管ができる。

チーズ輸入の内訳

9. 乳製品の輸入制度

日本の乳製品の輸入制度に関し整理した。
・ナチュラルチーズは昭和26年から輸入が自由化されており(関税約30%)、直接消費用及びプロセスチーズ原料用として、毎年、大量に輸入されている。
・バター、脱脂粉乳等(指定乳製品等と法定されている品目)については、国内生産を保護するため、輸入割当制度(不足時に必要数量のみを緊急輸入)が行われていたが、UR合意により関税化(平成7年)。
つまり誰でもある程度の関税を払えば輸入ができるようになった。それまでは輸入割当であったため、政府からの割り当てが必要で、1kgたりとも輸入できなかった。関税化になったことにより、かなり高いものの、関税を払えば輸入できるようになったことは、自由化へ1歩前進したことになる。
・現在は、カレントアクセス輸入(国際約束:生乳換算137千トン)、追加輸入(従前の緊急輸入に該当)、学校給食用や飼料用等の関税割当輸入(無税)のほか、一般輸入(下記の関税を納付すれば誰でも輸入可能)が行われているが、関税が高いため、価格の高い特殊な商品しか輸入されておらず(仏のエシレのバター、医療用高免疫タンパク質等)、輸入数量も少ない(バター・脱脂粉乳等の国内生産は実質的に保護されている)。
バター: 29.8% + 985円/Kg
脱脂粉乳: 21.3% + 396円/Kg

1 2 3 4 5 6 7 8