第70回 牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

3.ヨーグルトの世界的普及

1930年に「免疫食細胞説」でノーベル賞を受賞したイリア・メチニコフは、老化は腸内腐敗により加速されるという説を唱えた。ブルガリア地方に長寿者が多いのは、常食するヨーグルトに含まれる乳酸菌が腸内で増殖し、腸内腐敗を防止しているためと考えた。瞬く間に、ブルガリア菌を使ったヨーグルトは世界中に広まった。
ヨーグルトの作り方は非常に単純で、牛乳に乳酸菌を入れて培養すればできる。しかし、牛乳に市販のヨーグルト、例えばガセリ菌を用いたヨーグルトを牛乳に入れて、ホームヨーグルタ―でヨーグルトを家庭で作ってみても、同じものはできない。この中のガセリ菌は、牛乳中では殆ど生えない。元々人の腸管にいた菌やビフィズス菌も含め、牛乳の中では生えづらい菌が多い。ビフィズス菌は酸素も嫌う菌なので、やはり家庭でのヨーグルト製造では増菌せず、ヨーグルト菌による単純なヨーグルトになってしまう。

4.ヨーグルトの定義と優れた2菌の特徴

ヨーグルトにブルガリア菌とサーモフィルス菌を使用するのは、サーモフィルス菌が蟻酸を生成し、ブルガリア菌がペプチドを生成するという、お互いに必要な成分を作り出し利用して助け合う状態、つまり2菌は「共生関係」にあり、ヨーグルトはこの共生関係を上手く使った食品ということが言える。
また、生成されたヨーグルトには、
・生成する乳酸でpHが下がり、腐敗菌の増殖が抑えられ、保存性が向上
・タンパク質の消化性が向上
・乳糖(ラクトース)量が減少し、乳糖不耐症が起こりにくい
・カルシウムは乳酸と結合して、吸収率が向上
・牛乳にはない、特有の酸味とコクと風味が誕生
などの特徴が付加される。

  • ヨーグルトの定義と優れた2菌の特徴
  • ヨーグルトの定義と優れた2菌の特徴

5.ヨーグルトの市場

最近の日本におけるプロバイオティクスを用いた機能性ヨーグルトおよび関連商品市場は、3極化しつつある。

(1)乳酸菌自体の機能性を訴求する「機能性乳酸菌タイプ」
  • LGG菌ヨーグルト(タカナシ乳業)
  • LGG菌ヨーグルト(タカナシ乳業)
LGG菌ヨーグルト(タカナシ乳業)

特定保健用食品の認可を最も早く受けた製品。ヒトの腸管からのL.ラムノーサスGG菌を使用。フィンランドのバリオ社からのライセンス生産。全世界で販売されている。整腸作用やコレステロール低下能に優れている。

  • プロビオヨーグルト LG-21(株式会社 明治)
プロビオヨーグルト LG-21(株式会社 明治)

東海大学医学部の古賀教授が開発。ヒトの腸管からのL.ガセリLG-21菌を使用。胃潰瘍や胃ガンの原因とされるヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の胃からの排除効果が期待される。

  • ネスレ LC1(ネスレスノー)
ネスレ LC1(ネスレスノー)

スイスのネスレ中央研究所の約4000種類の乳酸菌から選抜された、 L.ジョンソニーLA1菌を使用。免疫能の活性化し、胃のピロリ菌の生育を抑える効果が高い。

  • BIOヨーグルト(カルピス味の素ダノン)
BIOヨーグルト(カルピス味の素ダノン)

ヒト腸管からのビフィズス菌BE80を使用。腸の蠕動運動を活発化し、食物の腸管通過時間を短縮するという便秘改善効果がとくに期待される。世界最大のヨーグルトメーカーのフランスのダノン社の製品。

  • ミルミル/ミルミル S(ヤクルト)
ミルミル/ミルミル S(ヤクルト)

生きて腸内にとどくビフィズス菌(B.ブレーベ・ヤクルト株)を1本に100億個以上含む。Sタイプは、ガラクトオリゴ糖、ビタミンB6,B12、食物繊維、鉄、葉酸、コラーゲンなどを含む、シンバイオティックヨーグルトである。特定保健用食品 整腸作用などに優れる。

  • ソフール(ヤクルト)
  • ソフール(ヤクルト)
ソフール(ヤクルト)

生きて腸内にとどくヤクルト菌(L.カゼイYIT9029・シロタ株)を1本に100億以上含む。特定保健用食品整腸作用などに優れる。

  • 植物性乳酸菌ラブレ(カゴメ)
植物性乳酸菌ラブレ(カゴメ)

京都の「すぐき漬け」より単離した植物起源の乳酸菌(L.ブレービス):ラブレ菌を使用。生きて腸内にとどく力が強いとされる。整腸作用などに優れる。

(2)ヨーグルトを担体(キャリアー)と考え、加える素材の機能性を訴求する「機能性素材添加タイプ」(ラクトフェリン等)

《特保商品が多い》
平成3年から特定保健用食品(トクホ)制度がスタート。
国が食品に健康表示(ヘルスクレーム:健康への効用をしめす表現)を許可する、世界で初めての画期的な制度。(世界共通ではない。)
(ただし、対象とする疾病の名前を出してはいけない。)
平成3年(1991年)に時の厚生省(現在は消費者庁)により発足し、世界各国からお手本として注目されている。
現在トクホは1003種類(平成24年7月現在)で7000億円以上の市場規模があり、その半分が「お腹の調子を整える食品」である。自分の栄養状態や健康状態を良く理解して、トクホを活用すると良い。

  • ラクトフェリンヨーグルト(森永乳業)
ラクトフェリンヨーグルト(森永乳業)

牛乳の微量タンパク質成分であるラクトフェリン(Lf)200mgを添加。鉄イオンを強吸着することで赤痢菌などの食中毒菌の生育を阻害。他にも免疫調節作用、細胞増殖作用、抗酸化作用などを示す多機能タンパク質。※1986年世界で初めてLf入りを新発売2012年3月6日より包装デザイン変更

  • 毎日骨太ヨーグルト(雪印メグミルク)
毎日骨太ヨーグルト(雪印メグミルク)

牛乳の機能性成分であるMBP(乳塩基性タンパク質)を添加。骨芽細胞を増やし、破骨細胞の働きを調節して、骨量を増やす効果が期待される。

  • グルコサミンパワーヨーグルト(雪印メグミルク)
グルコサミンパワーヨーグルト(雪印メグミルク)

エビ・カニの殻のキチン分解物から酵素分解で調製した天然型N−アセチルグルコサミン(NAG)1200mgを含む。欧米ではこの含量は医薬品レベル。高齢者の関節痛などに効果が期待。※宅配専用商品

  • 恵megumi 生きて届けるビフィズス菌カプセルヨーグルト(雪印メグミルク)
恵megumi 生きて届けるビフィズス菌カプセルヨーグルト(雪印メグミルク)

胃酸・胆汁酸で死滅しやすいビフィズスSP菌を、仁丹のカプセル化手法で腸溶性カプセルに封入して、ヨーグルトに添加。全く新しいスタイル。韓国でも類似品。ガラクトオリゴ糖シロップ添加。

(3)プロバイオティクスの機能性を本来の腸管以外の環境で訴求する「その他のタイプ」
  • おなか活力 タブレット(株式会社 明治)
おなか活力 タブレット(株式会社 明治)

宿主の腸管内に既に存在するビフィズス菌を特異的に増殖させる成長促進因子。B.G.SはBifidogenic Growth Stimulatorの略で、プロピオン酸菌の生産するDHNA: 1,4-dihydroxy-2-naphtoic acidが主成分。
→他人のプロバイオティクスを摂取して自己の腸内で増殖させる発想と全く異なる、新しいコンセプトを導入した商品

  • クリッシュ(フレンテ)
クリッシュ(フレンテ)

口中の虫歯菌や歯周病菌を乳酸菌で生育抑制するという新しい発想のプロバイオティック商品(オーラルケア商品)
一粒当たり2000万個のLb. サリバリウス菌(LS1)を含む。
→プロバイオティクスが腸で働くものという従来の固定概念を大きく変えた商品

  • プレティオ(ヤクルト)
プレティオ(ヤクルト)

ラクトコッカス・ラクチスの作用でγ-アミノ酪酸(GABA)を生産。摂取後消化管から体内に吸収され、臓器の末梢血管の交感神経系神経末端の神経伝達を抑制して、血管の収縮を緩和することにより、血圧を下げる。(神経による調節)すなわち、血管収縮作用伝達物質のノルアドレナリンの分泌を抑制する。(2004年11月発売)

  • アミールS(カルピス)
アミールS(カルピス)

ラクトバチルス・ヘルベティカスの強いカゼイン分解能によりラクトトリペプチド(IPP, VPP)を生産し、これがアンジオテンシン変換酵素(ACE)の活性を阻害して、アンジオテンシン2の生産を抑制することで血圧を下げる。欧州ではバリオ社からEvolusの名称で販売、好評。(1997年発売)

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