食料・農業・農村政策審議会平成29年度第1回畜産部会における意見表明について

平成29年12月4日(火)に三番町共用会議所で開催された「食料・農業・農村政策審議会平成29年度第1回畜産部会」に当協会宮原会長が臨時委員として出席し、以下の通り乳業者の立場から、酪農乳業政策に関する意見を述べましたのでご報告致します。

【酪農乳業政策に関する意見】

1:酪農生産基盤強化のための対応と「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」の検証

私共、乳業者にとって目下最大の課題は、生活者・消費市場に牛乳乳製品を安定的に供給するため、その原料となる生乳をいかにして安定的に確保するかであると考えています。具体的にみれば、平成8年度には866万トンもあった生産が28年度には735万トンと、この20年間で約130万トン(▲15%)も減少しています。平成27年3月に37年度を目標年度として策定された「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」(以下「基本方針」)にて目標とした750万トンを下回る状況で、継続的に生乳生産が減少しています。
このため、本年度から、乳業者が自主的に資金を拠出し、生産者による乳牛の導入などの生乳生産拡大の取組みを支援するための対策(酪農乳業産業基盤強化特別対策)を実施しているところです。
しかしながら、このような業界による自主的な取組みには自ずと限界があり、国としても、現在推進している施策の実行性の向上に加え、離農に歯止めがかかり、後継牛の確保を図るための前例にとらわれない抜本的な追加対策を検討していただくようお願いいたします。

また、「基本方針」では、生産の長期見通しについては、国産ナチュラルチーズ等の需要の増加を見込んで設定されています。
他方、本年7月に大枠合意された日EU・EPA及び11月に大筋合意されたTPP11(CPTPP)では、16年という長期間を要するとはいえ、その目玉としてチーズの関税が撤廃されることとなっています。
以上の相反するような施策の方向性を踏まえ、改めて基本方針に示された施策について検証し、その方向性と施策のあるべき姿を検討し、必要に応じて施策の充実強化や改善等を検討していただくようお願いいたします。

2:改正畜安法の円滑な実施

改正された「畜産経営の安定に関する法律」並びに「独立行政法人農畜産業振興機構法」については、平成30年4月1日から施行されますが、酪農乳業関係者が混乱することのないよう細部を含めた周知を十分に行い、円滑に実施されるようご配慮願います。
今回の法改正等については、乳業者としては、基本的には生産者側に係るものが中心であると認識しており、政省令等に則して柔軟に対処していかざるを得ないという立場だと考えています。
乳業者の使命は、消費者の皆様に安全で安心いただける牛乳乳製品を安定的に供給することであり、大切な原料である生乳に対しては、量・価格・品質の3つの安定が必要不可欠であると考えております。したがって、これらが確実に担保される運用となるようご配慮願います。また、実態に即して不断に改善を図り、指定団体の需給調整等の機能を実質的に維持するとともに、生産者間の公平性が確保され、生乳生産基盤の強化につながるような制度運用を期待しています。

他方、平成30年度における生産者補給金及び集送乳調整金の単価並びに交付対象数量については、安定的な生乳供給を確保するため、一定のルールに基づき適切に算定されるようお願いいたします。

併せて、最近の生乳の需給状況をみると、国産の生乳だけでは需要に応じた十分な乳製品の生産は困難と考えられるため、バターや脱脂粉乳の供給が不足することのないよう、昨年のように年の当初に年間の輸入計画を示すなど、需要者が安心できる適切な国家貿易の運用をお願いいたします。
なお、乳製品の輸入に当たっては、従来からの2.5ヶ月の在庫水準にこだわらず、市場環境の変化を踏まえて、価格水準や生産見通しなどを総合的に勘案の上、柔軟に判断されるようお願いいたします。

3:学校給食用牛乳の風味変化の問題に対する対応

酪農経営体数の減少に加え生乳生産量も減少する中で、乳業経営上の大きなリスクとして再浮上しているのが、学校給食用牛乳の風味変化の問題です。
牛乳は自然の産物であるがゆえに、清涼飲料水のように工業的に生産される商品とは異なり、飼料や気象条件などの変化に応じて風味は常に微妙に変化するものです。このため、乳業としては、官能検査など受け入れ生乳の品質確認を強化するとともに、風味の変化が大きくならないよう生産工程においても細心の注意を払って生産を行っているところです。
こうした中、学校給食用牛乳で風味の変化が指摘されると、原因特定が容易でない場合も多く、出荷再開までに長期間を要することから、乳業にとっては、経営の継続すら左右しかねない大きな問題となっています。また、マスコミで取り上げられると、食品安全上の問題はなくても、製品に事故があったかのような印象だけが残るばかりでなく、乳業界全体の品質管理体制を批判されるような風潮により、業界全体への影響も少なくない実態にあります。このため、当協会においても、食育授業や食育勉強会を通して、教育関係者や児童・生徒等に対して牛乳の風味変化に関する啓発活動を行っているところです。

学校給食用牛乳の安定的な供給を図るためにも、都道府県における衛生・教育関係者をはじめ学校給食関係者が一堂に会する情報交換会を定期的に開催するよう指導するなど、省庁を超えた風味変化に関する問題意識の共有を図っていただくようお願いいたします。